革新的医薬品の開発環境整備を目指したレギュラトリーサイエンス研究

文献情報

文献番号
201427034A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的医薬品の開発環境整備を目指したレギュラトリーサイエンス研究
課題番号
H24-医薬-指定-031
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 くみ子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 石井 明子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 井上 貴雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 阿曽 幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 野村 由美子((独)医薬品医療機器総合機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交代  宇津忍(平成26年4月1日~8月10日)→野村由美子(平成26年8月11日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,我が国で開発が活発に行われている革新的医薬品の開発環境整備として以下の目標達成のために,これら医薬品の評価技術開発研究へ重点的に取り組んだ: (1)革新的医薬品のヒト初回臨床試験(FIH)の実施にあたっての条件(品質および安全性の確認)の明確化とその手法の開発; (2) 革新的医薬品候補について,医療における有用性・安全性を確認,確保するための評価法の開発,及びその標準化; (3)革新的医薬品を承認申請するにあたって考慮すべき要件の明確化,及び基準の作成.
 具体的にはナノテクノロジー応用DDS製剤(ナノDDS製剤),改変タンパク質製剤(特に改変抗体医薬品),核酸医薬品,遺伝子治療用医薬品等をとりあげ,我が国で開発が先行しているこれら製剤について,(1)医療応用を迅速に進める上で必要な規制ガイドラインや評価法についてリスト化するとともに,(2)キーとなると考えられる評価手法の開発・標準化のための研究を行う.(3)必要に応じて規制ガイドライン等の作成,評価法策定を行った.
研究方法
各対象医薬品について開発における課題についてまとめるとともに,重要課題を解決するための検討を課題に応じて行う.
結果と考察
最終年度は,以下に掲げたレギュラトリーサイエンス(RS)研究を実施し,成果を得た.
1) ナノDDS製剤の評価:核酸(siRNA)等を搭載したナノDDS製剤の細胞内動態評価手法の開発を行った.溶血性試験及び血液凝固試験を種々の物理的化学的特性を有するリポソームに適用し,物理的化学的特性と血液適合性との関連性について明らかとした.国際的な動向を踏まえナノ医薬品の分類等を考察した.
2) 改変タンパク質性製剤:改変抗体やFc融合タンパク質等の改変タンパク質製剤の開発環境整備を目的に,SPR法を用いた結合親和性評価法により,Fcγ受容体結合性の種差を明らかにして,抗体等改変タンパク質製剤のFIH安全性確保に必要なヒトへの外挿性に関する留意事項を考察した.
3) 核酸医薬品: 核酸医薬品開発の重要課題の1つとされるのが,RNAを標的とする核酸医薬品(アンチセンス,siRNA等)による「ハイブリダイゼーション依存的なオフターゲット効果」の発現であり,その評価法の確立や判断基準の設定が大きな課題となっている.本研究では,全身投与性の核酸医薬品として初めて上市されたKynamroに代表される「Gapmer型アンチセンス」を対象とし,オフターゲット効果の評価に関する包括的な解析を行った.
4) タンパク質性医薬品等の安定性:13C-NMR緩和時間は製剤中のタンパク質の保存安定性の評価に有用であることが示唆された.また,分解に伴う熱を等温ミクロ熱量計で観測でき,熱の大きさと分解速度が関連することが示された.
5) 遺伝子治療用医薬品の評価:次世代シークエンサーを用いたレトロウイルスベクターの品質評価について検討した.レンチウイルスベクターやアデノ随伴ウイルスベクターのようにトランスフェクション法により製造するベクターでは,品質評価としての塩基配列解析の重要性が示唆された.
6) 血糖降下薬の臨床評価:血糖降下薬について,既存の臨床評価ガイドラインでは言及されていない新規のインスリン製剤の臨床評価方法等について検討し,今後の臨床開発や承認審査に資するガイドライン改訂案を策定した.
結論
最終年度の成果は,いずれも今後の革新的医薬品開発を促進するためのガイドライン等の文書作成の基本的な資料と位置づけることが出来る.ここで得られた研究成果は,革新的医薬品開発において参照すべきガイドライン等が整備や,承認申請等の際に用いるべき標準的評価法の策定に活用される.その結果、
1.安全性が確保された早期臨床試験の実施
2.医薬品・医療機器の製造販売承認申請における要件の明確化による開発の促進
3.評価基準の明確化による承認審査の迅速化
4.承認販売後を見据えた適正使用方法の確立
が可能となり,従来治療が困難であったような疾患治療用の革新的医薬品の臨床応用が実現することが期待される.
特に,血糖降下薬の臨床評価に関するRS研究はすでに厚生労働省から「血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン(改訂案)」としてパブリックコメントに供されており,今後所定の手続きを経て公開されることとなり,血糖降下薬の臨床開発が加速されることが期待される.

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201427034B
報告書区分
総合
研究課題名
革新的医薬品の開発環境整備を目指したレギュラトリーサイエンス研究
課題番号
H24-医薬-指定-031
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 くみ子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 石井 明子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 井上 貴雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 阿曽 幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 宇津 忍((独)医薬品医療機器総合機構)
  • 野村 由美子((独)医薬品医療機器総合機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における医薬品開発環境の問題として,医薬品・医療機器に関する基礎研究レベルは高く,医薬品・医療機器のシーズは数多く発見されているにもかかわらず,それにみあった日本発の新薬・新医療機器の開発例は少なく,また医薬品・医療機器の実用化のスピードが欧米に比べ遅いこと,いわゆる開発におけるドラッグラグあるいはデバイスラグの存在がある.この状況を打破すべく,日本発の新薬・医療機器等の開発を効率的・効果的に行うためのレギュラトリーサイエンスを充実・強化し,医薬品・医療機器の評価,根拠に基づいた審査指針や基準策定等の作成の推進が我が国の科学技術政策の最重要課題にあげられている.本研究は,我が国で臨床応用が試みられているナノDDS 医薬品,改変タンパク質性医薬品(抗体医薬),核酸医薬品,遺伝子治療用医薬品および血糖降下薬に関して,革新的医薬品開発に向けた規制環境整備のためのレギュラトリ-サイエンス研究を実施することを目的とした.
研究方法
各対象医薬品について開発における課題についてまとめるとともに,重要課題を解決するための検討を課題に応じて行った.
結果と考察
3年間の研究を通じて以下の成果を得た.
(1)ナノテクノロジー応用DDS製剤(ナノDDS製剤)の評価に関するRS研究
従来の製剤とは異なるナノDDS製剤の特性,特に生体成分との相互作用に着目し,体内での挙動や安全性を予測しうるin vitro評価手法を構築してきた.また構築した手法を用い,ナノDDS製剤の品質特性とin vitro製剤特性(血液適合性,細胞内動態等)について知見を蓄積することができた.さらに,ナノDDS製剤の開発に同等性/同質性の概念を適応することの適切性について考察し,厚生労働省/欧州医薬品庁の共同リフレクションペーパー等の文書に反映させた.
(2)改変タンパク質性製剤の評価に関するRS研究
改変型抗体やFc融合タンパク質等の改変タンパク質製剤の開発環境整備を目的に,改変タンパク質製剤の開発初期からヒト初回投与試験(FIH)までの非臨床試験段階における留意事項の整理,及び,関連する評価法の開発とその有用性評価を行った.
(3)核酸医薬品の評価に関するRS研究
オフターゲット効果の評価法の確立を念頭に,これに必要な基盤研究を遂行した.具体的には,1)核酸医薬品のオフターゲット効果の評価法に関する調査および考察,2)オフターゲット候補遺伝子数の見積もりならびに抽出法に関する基盤研究,3)Gapmer型アンチセンスのオフターゲット効果の包括的解析,を行った.
(4)タンパク質性医薬品等の安定性に関するRS研究
タンパク質性医薬品の安定性に影響を及ぼすと考えられる有効成分分子の高次構造の揺らぎを評価する手法(タンパク質のβ緩和時間等を指標にした)として,13C-NMR緩和時間の可能性について検討し,タンパク質の安定性がカルボニル炭素の13C-NMR緩和時間によって評価できる可能性が示唆された.
(5)遺伝子治療用医薬品の評価に関するRS 研究
遺伝子治療用製品において整備が求められるガイダンスの検討や素案作成のための研究及び遺伝子治療用ベクターの品質・安全性評価手法に関する研究を行った.後者に関しては,デジタルPCRの活用に関する検討及びex vivo遺伝子導入細胞へのベクターの残存性評価,次世代シークエンサーによるウイルスベクターの品質評価について検討した.
(6)血糖降下薬の臨床評価に関するRS研究
血糖降下薬について,既存の臨床評価ガイドラインでは言及されていない新規のインスリン製剤の臨床評価方法等について検討し,今後の臨床開発や承認審査に資するガイドライン改訂案を策定した.
結論
本研究は,我が国で開発が活発に行われている革新的医薬品の開発環境整備として以下の目標達成のために,ナノDDS製剤,改変タンパク質製剤(特に改変抗体医薬品),核酸医薬品,遺伝子治療用医薬品等の評価技術開発研究を実施した: 即ち,(1)革新的医薬品のヒト初回臨床試験(FIH)の実施にあたっての条件(品質および安全性の確認)の明確化とその手法の開発; (2) 革新的医薬品候補について,医療における有用性・安全性を確認,確保するための評価法の開発,及びその標準化; (3)革新的医薬品を承認申請するにあたって考慮すべき要件の明確化,及び基準の作成.である.さらに血糖降下薬について,既存の臨床評価ガイドラインでは言及されていない新規のインスリン製剤の臨床評価法を検討した.ここで得られた成果のうちいくつかは,その成果は厚生労働省/欧州医薬品庁の共同リフレクションペーパーを含め,規制ガイドライン(案を含む)等に反映された.

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201427034C

収支報告書

文献番号
201427034Z