効果的なリスクコミュニケーション推進のための調査と手法の評価

文献情報

文献番号
201426037A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的なリスクコミュニケーション推進のための調査と手法の評価
課題番号
H26-食品-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 肇子(慶應義塾大学 商学部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹村 和久(早稲田大学 文学学術院)
  • 杉谷 陽子(上智大学 経済学部)
  • 小林 哲郎(国立情報学研究所 情報社会相関研究系)
  • 重松美加(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,580,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消費者のリスク認知調査やインターネット上での情報流通の調査を行った上で、食品に関するリスクコミュニケーションの効果の評価を行う。その際には、主に厚生労働省をはじめとする行政機関が行ったものを対象として、その効果や改善点について検討する。あわせて、これら調査手法そのものの妥当性と改善点を明らかにし、実施可能な調査および情報提供手法の提案を行う。
研究方法
以下の4つの課題を行った。
(1)調査手法の標準化のため、リスクの推定方法の比較を行った。大学生240人を対象とする調査を実施して、食品リスクに関して、100万人における年間死亡者数、総人口における年間死亡者数、総人口における年間死亡率を推定させた。
(2)テレビや新聞等のマスメディアを介してではなく、インターネットから入手した情報が、消費者の食品リスク認知にどのような影響を与えるかについて実験によって検討した。一般消費者543名を対象としたウェブアンケート調査を実施した。
(3)ネットワーク上の情報流通については、ネットワーク分析用のオープンソースのエクセル用テンプレートであるNodeXLを用いて複数の食品リスク関連トピックに関するツイッターデータを収集した。(4)リスクコミュニケーションの手法および効果については、行政機関や企業が公表しているパンフレットの内容分析を行った。
結果と考察
(1) 調査1では、「日本国内10万人における年間死者数」、「日本国内における年間死亡率」を推定させた場合、「日本の総人口における年間死者数」を推定させた場合より、非常に多くの死者数を推定していることがわかった。調査2においては、知識の程度に対する態度とリスク認知の関連性が示唆された。具体的には、リスク事象に関する自身の保有知識の程度を適切に把握している医師は、死亡者数の推定精度が高い傾向が示された。さらに、評価対象リスク事象に関する知識も全く持っていないということを強く自覚している、いわゆる「無知の知」のような態度を持つ人は、死亡者推定の精度が高い傾向が示唆された。
(2) ウェブアンケートの結果、食品添加物に関する知識の量とリスク認知レベルによって、消費者を以下の4つのクラスタに分類できる可能性が示唆された。「Aクラスタ 知識が多く、リスク認知が低い」「Bクラスタ 知識が多く、リスク認知が高い」「Cクラスタ 知識が少なく、リスク認知が低い」「Dクラスタ 知識が少なく、リスク認知が高い」。
(3)「遺伝子組み換え」「牛肉 & アメリカ」「食品 & 中国」「ネオニコチノイド」「トランス脂肪酸」「ダイオキシン」「マクロビオティック」「ポテト & 歯」をクエリとして試験的に分析を行ったところ、語によって異なるネットワークが得られた。食品リスクコミュニケーションのネットワーク構造は概して疎であったが、高い関心を持つ少数の人々によってマスメディアでは報道されないような情報(海外メディアの報道や学会情報など)が流通・共有されていることがわかった。(4) オンラインにアクセスできない消費者に対するリスクコミュニケーションのツールについて、本年度は、紙媒体での情報提供について検討した。公表されている食品のリスクコミュニケーションの資料(15テーマ94種類)を内容分析した。
結論
(1)標準的なリスク認知の調査の方法については、「総人口における年間死者数」というリスク認知評価方法が推奨されることがわかった。これは、推定死者数の標準偏差が安定し、質問内容の解釈がわかりやすいためである。(2)メディアごとに利用者層が異なっていたことから、リスク情報をどのメディアに流すかは、効果を考えて慎重に検討する必要がある。(3)ネットワーク上の情報流通については、特に突発的な事象が発生した場合に、人々の知識やリスク認知を把握する有効な手段だと考えられる。比較的簡易に利用できるものとしては、Googleトレンドと本年度試用したNodeXLがある。(4)食品リスクコミュニケーションの簡易マニュアルは、内容分析及び各分担研究の成果から、基礎的な情報を中心に構成した。本年度は、どのようにしてリスクコミュニケーションの対象者の認知や知識を測定するのかということについて、基本的な知識を中心に記載した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
2015-10-22

収支報告書

文献番号
201426037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,350,000円
(2)補助金確定額
3,350,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,149,645円
人件費・謝金 238,500円
旅費 0円
その他 1,192,196円
間接経費 770,000円
合計 3,350,341円

備考

備考
自己負担206円
預金利息135円

公開日・更新日

公開日
2015-10-19
更新日
-