新開発バイオテクノロジー応用食品の安全性確保並びに国民受容に関する研究

文献情報

文献番号
201426005A
報告書区分
総括
研究課題名
新開発バイオテクノロジー応用食品の安全性確保並びに国民受容に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
手島 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学健康政策医学講座)
  • 小関 良宏(東京農工大学大学院工学研究院生命機能科学部門)
  • 太田 大策(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)
  • 五十君 静信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 名古屋 博之(水産総合研究センター増養殖研究所養殖技術部育種グループ)
  • 近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
  • 野口 秋雄(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,214,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、多様化、複雑化する新機能遺伝子組換え食品の安全性確保のための科学的知見の蓄積、当該食品並びに未承認組換え食品の検知に関する試験法の確立、安全性審査基準への反映並びに社会的受容の促進を図るためのリスクコミュニケーション方策の検討を行い、遺伝子組換え食品のより一層の安全確保、消費者の不安解消に努めることを目的とする。
研究方法
(1)新機能性組換え体として成長期別にサンプリングした成長ホルモン導入アマゴおよびフラジェリン表層発現乳酸菌を用いてDNAマイクロアレイ及び次世代シーケンサーを用いたを用いたトランスクリプトーム解析および食品成分分析、極性及び非極性画分のGC-MS分析と多変量解析を用いたメタボローム解析、2D-DIGEによるプロテオーム解析を行った。また、2 品種の耐塩性遺伝子組換えシロイヌナズナの後代交配品種スタックのトランスクリプトーム解析を実施した。
(2) 組換え食品の検知法に関する研究では、今年度は、未承認組換え食品の検知法の開発に資するための中国産遺伝子組換えコメ由来の遺伝子コピー数の測定、東南アジア産ヒヨコマメ内在性遺伝子検査法の開発を行った。さらに、スタック品種数の多い組換えトウモロコシ試料に適応可能なダルマピンを用いてDNA抽出操作を簡便化した改良型粒検査法の開発を行った。
(3)遺伝子組換え食品の社会的受容の調査研究として、安全から安心に至る意思決定モデルの構築、新植物育種技術(NBT)に関するリスクコミュニケーションの検討、組換え動物に係るリスクコミュニケーションの先進的取り組みの調査、厚労省遺伝子組換え食品Q&Aの改訂版の検討を行い、あわせて、組換え微生物、遺伝子組換え魚、遺伝子組換え薬用植物に関して、国内外の現状の把握を行った。
結果と考察
非意図的並びに意図的影響を知るためのポストゲノム手法導入のための調査研究では、アマゴ(サケ科魚)及び乳酸菌の網羅的プロファイルの比較解析が可能となった。フラジェリン表層発現乳酸菌のプロテオーム解析で、フラジェリン以外に細胞壁の分解酵素の発現の上昇を確認することができた。
遺伝子組換え食品の検知に関する試験法の確立では、安全性未審査の2種(中国産組換えコメ、東南アジア産ヒヨコマメ)の検査法開発に資するための内在性遺伝子検査法等の開発を行った。社会的受容に関する調査研究では、安全から安心に至る意思決定モデルの構築を通じて、組換え食品では通常の食品と異なる意思決定プロセスがあり、リスクコミュニケーションへの特別の配慮が必要なことが明らかとなった。また、新植物育種技術(NBT)に関するリスクコミュニケーションの検討を行い、遺伝子組換え食品の説明書の改訂に携わるとともにNBT説明書案の作成を行った。
結論
多様化、複雑化する新開発バイオテクノロジー応用食品の安全性に関する研究、当該食品の検知に関する試験法の確立は、安全性審査への反映、監視体制に直接つながる社会的に要請の高い研究である。これら研究をさらに進めると共に、社会的受容に関する研究等も持続することにより、透明性を確保しつつ、より一層の安全確保、消費者の不安解消に努める必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201426005B
報告書区分
総合
研究課題名
新開発バイオテクノロジー応用食品の安全性確保並びに国民受容に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
手島 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学健康政策医学講座)
  • 小関 良宏(東京農工大学大学院工学研究院生命機能科学部門)
  • 太田 大策(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)
  • 五十君 静信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 名古屋 博之(水産総合研究センター増養殖研究所養殖技術部育種グループ)
  • 近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
  • 野口 秋雄(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、多様化、複雑化する新機能遺伝子組換え食品の安全性確保のための科学的知見の蓄積、当該食品並びに未承認組換え食品の検知に関する試験法の確立、安全性審査基準への反映並びに社会的受容の促進を図るためのリスクコミュニケーション方策の検討を行い、遺伝子組換え食品のより一層の安全確保、消費者の不安解消に努めることを目的とする。
研究方法
(1)3年間で、4種の新機能性組換え体(アスタキサンチン・レタス、アレルゲン低減化コメ、成長期別にサンプリングした成長ホルモン導入アマゴおよびフラジェリン表層発現乳酸菌)に関して、DNAチップまたは次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析および食品成分分析、フーリエ変換型質量分析(FT-ICR/MS)にLC-TOF/MSとGC-MSを補完したメタボロミクスプラットフォームによるメタボローム解析、2D-DIGEによるプロテオーム解析及びアレルゲノーム解析を行った。また、平成26年度に、2 品種の耐塩性遺伝子組換えシロイヌナズナの後代交配品種スタックのトランスクリプトーム解析を実施した。
(2) 組換え食品の検知法に関する研究では、未承認組換え食品として、中国産コメの複数の品種に対応できる検査法及び陽性コントロールを用いるサケの検知法の開発、タイ産パパイアに対応する検査法の開発、東南アジア産ヒヨコマメ内在性遺伝子検査法の開発を行った。また、承認済の品種数の多いGMトウモロコシの検査法として、(i)粉末試料に適応可能な新規定量試験法の標準プラスミドの構築や内標比の決定、(ii)GM品種に広く用いられている導入遺伝子を対象とした粒検査にも適用できる簡便な定量検査法の開発、(iii)ダルマピンを用いたDNA抽出操作の簡便化による改良型粒検査法の開発を検討した。
(3)遺伝子組換え食品の社会的受容の調査研究として、平成24年度は、社会的受容の推移の調査、社会的受容の水準の調査、社会的受容の海外との比較調査、消費者と専門家の認識のギャップの調査を行い、平成25年度は、消費者意識の国内外比較調査、食品に対する安心感の調査、遺伝子組換え動物に関する海外動向の調査、平成26年度は、安全から安心に至る意思決定モデルの構築、新植物育種技術(NBT)に関するリスクコミュニケーションの検討、厚労省遺伝子組換え食品Q&Aの改訂版の検討を行った。さらには、遺伝子組換え動物、組換え微生物、遺伝子組換え魚、遺伝子組換え薬用植物に関して、国内外の現状の把握を行った。
結果と考察
非意図的並びに意図的影響を知るためのポストゲノム手法導入のための調査研究では、レタス、コメ、アマゴ(サケ科魚)及び乳酸菌の網羅的(オミクス)プロファイルの比較解析が可能となり、機能解析を含めて安全性審査へのオミクス解析手法の導入の可能性が示唆された。具体的には、アスタキサンチン産生レタスのメタボローム解析で、アスタキサンチン産生に関わる代謝変動として、解糖系中間体を経由したイソプレノイド生合成とカロテノイド生合成の促進を実証する広範な代謝変動を認めた。アレルゲン低減化コメを用いたオミクス解析では、アレルゲンタンパク質の発現の低下、及びそれらタンパク質をコードする遺伝子の発現の減少を確認することができた。組換えアマゴの筋肉組織の解析から、脂肪酸関連遺伝子、Parvalbumin遺伝子の発現低下が認められた。また、フラジェリン表層発現乳酸菌のプロテオーム解析で、フラジェリン以外に細胞壁の分解酵素の発現の上昇を確認することができた。
遺伝子組換え食品の検知に関する試験法の確立では、安全性未審査の4種(東南アジア産ヒヨコマメ、中国産Bt組換えコメ、東南アジア産バスマチィコメ、タイ産パパイア)の検査法開発に資するための内在性遺伝子検査法等の開発が順調に行われた。
社会的受容に関する調査研究では、組換え食品の消費者意識調査の分析を進め、消費者と専門家の認識のギャップ等が明らかとなり、消費者意識調査の国内外比較分析から、日本人の抵抗感の強いこと、また、安全から安心に至る意思決定モデルの構築を通じて、組換え食品では通常の食品と異なる意思決定プロセスがあることも明らかとなった。さらに、新植物育種技術(NBT)に関するリスクコミュニケーションの結果、GM説明書の改訂に加えてNBT説明書案の作成を行うことができた。
結論
多様化、複雑化する新開発バイオテクノロジー応用食品の安全性に関する研究、当該食品の検知に関する試験法の確立は、安全性審査への反映、監視体制に直接つながる社会的に要請の高い研究である。これら研究をさらに進めると共に、社会的受容に関する研究等も持続することにより、透明性を確保しつつ、より一層の安全確保、消費者の不安解消に努める必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201426005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
生産性の向上や栄養付加を目的として開発されている新開発バイオテクノロジー応用植物由来食品の安全性評価のためのポストゲノム(網羅的オミクス)手法を用いる意図的並びに非意図的生成物の解析のためのデータの蓄積を行うことができた。
臨床的観点からの成果
新開発バイオテクノロジー応用植物由来食品の安全性評価において、ターゲットを絞ったポストゲノム解析法が有用であることが示された。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究班で作成したアレルゲンデータベース(ADFS)は、毎年更新を行っており、遺伝子組換え食品の新規品目の申請時の新規産生タンパク質のアレルゲン性の評価法の一つであるバイオインフォマティクス手法による評価に用いられている。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
Jap.J.Food Chem. Safety (2016), Regul Toxicol Pharmacol.(2016), Food Chemistry (2017)
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ogawa T., Sasaki T., Okazawa A et al.
Metabolite profiling and proteome analysis of genetically modified lettuce plants (Lactuca sativa L.) that produce astaxanthin and its esterified derivatives
Jap.J.Food Chem. Safety , 23 , 9-19  (2016)
原著論文2
Yuki Y, Kurokawa S, Kozuka-Hata H. et al.
Differential analyses of major allergen proteins in wild-type rice and rice producing a fragment of anti-rotavirus antibody
Regul Toxicol Pharmacol. , 76 , 128-136  (2016)
10.1016/j.yrtph.2016.01.023
原著論文3
Mano J., Nishitsuji Y., Kikuchi Y. et al.
Quantification of DNA fragmentation in processed foods using real-time PCR
Food Chemistry , 226 , 149-155  (2017)
10.1016/j.foodchem.2017.01.064

公開日・更新日

公開日
2018-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201426005Z