文献情報
文献番号
201423014A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎から発がんにいたる病態進展の解明とその制御に関する研究
課題番号
H25-肝炎-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
- 本多 政夫(金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
- 出沢 真理(東北大学大学院医学系研究科)
- 坂元 亨宇(慶應義塾大学 医学部)
- 増富 健吉(国立がん研究センター研究所)
- 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科学)
- 加藤 宣之(岡山大学大学院)
- 堀田 博(神戸大学大学院医学研究科)
- 齋藤 英胤(慶應義塾大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
32,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
今後、登場するC型肝炎ウイルス(HCV)治療薬は安全性と有効性に優れており、治療によって高率にHCVを排除すると考えられる。しかし、我が国におけるHCV感染患者数は多く、これからも多数のHCV関連肝がんの発生が予想される。そこで、本研究は慢性C型肝炎から肝細胞がんにいたる病態を明らかにし、その進展を阻止する新たな治療法を開発し、実用化を目指す研究を行う。
研究方法
我々がこれまで解析してきたHCVの炎症・脂肪化・線維化・発がんの過程がみられるトランスジェニックマウスに、病態の進展に重要と考えられる遺伝子改変マウスを交配し動物実験モデルを作製する。脂肪化・線維化・肝発がんに於けるサイトカイン・増殖因子の役割やインターフェロン応答と肝発がんの関わりなどを解析する。HCV感染培養系を用いて宿主因子との関連を解析するとともに、標的分子に対する薬剤のスクリーニングを行う。幹細胞の解析を行い、感染から発がんがみられるヒト臨床サンプルを用いて標的分子、および幹細胞の動態を解析し、実験モデルから得られた結果の検証を実施する。
結果と考察
・線維化関連miR-214のターゲット解析から、新たな線維化調節因子Sema6Aを同定した。 Sema6Aは抗線維化、抗腫瘍効果を有する新たな治療分子である可能性が示唆された。
・非がん部に於けるPKM2の発現上昇は線維化・星細胞の活性化と関連する可能性が示唆された。がん部に於けるPKM2の発現上昇はがん幹細胞性と関連し、肝がんの悪性度・予後と関連すると考えられた。
・Muse細胞は肝細胞などの肝構成細胞に自発的に分化することによって肝修復に寄与する一方、Muse細胞以外の間葉系幹細胞にこのような能力は無いことが急性肝障害モデル(劇症肝炎)、慢性肝障害モデル(肝線維化モデル)において示唆された。
・コラーゲン、エラスチン成分の定量的な評価が発がんリスク予測に有用である可能性が示唆された。OATP1B3の発現が、LGR5を含むWnt/β-catenin 標的遺伝子群の発現との間に強い関連がある事を示した。
・TERT-RdRPが肝細胞がん発がん過程にどのような関与をしているかあるいは、TERT-RdRP阻害が新たな肝がん治療戦略となり得るかの検討を引き続き進めることの重要性が示唆された。
・HCVコアタンパクはType 2 mitophagyの実行分子であり、E3 ubiquitin ligaseであるParkinのN端側領域と結合することでParkinのミトコンドリアへの局在を阻害し、これによりmitophagyを抑制した。
・CBP2遺伝子の発現低下はDNAのメチル化によることと、この遺伝子の発現はHNF1により完全に制御されていることを明らかにした。BASP1遺伝子の発現低下の大部分は、プロモーター領域のメチル化では説明できずメチル化以外の分子機序によるものであることが明らかとなった。
・HCV NS5AはSMYD3と相互作用することによって、SMYD3の核内移行を阻害し、SMYD3によるMAP3K2のメチル化を増強し、AP1を介した転写を促進した。
・Nrf2がHCVの持続感染及び細胞増殖に対して同時に抑制することができた。Nrf2及びその標的遺伝子はHCV及びHCV肝がんの治療標的となると考えられた。アミノ酸に加え、デスモステロールがHPI細胞の細胞内のみならず培養上清においても著明に増加していることを示した。
・非がん部に於けるPKM2の発現上昇は線維化・星細胞の活性化と関連する可能性が示唆された。がん部に於けるPKM2の発現上昇はがん幹細胞性と関連し、肝がんの悪性度・予後と関連すると考えられた。
・Muse細胞は肝細胞などの肝構成細胞に自発的に分化することによって肝修復に寄与する一方、Muse細胞以外の間葉系幹細胞にこのような能力は無いことが急性肝障害モデル(劇症肝炎)、慢性肝障害モデル(肝線維化モデル)において示唆された。
・コラーゲン、エラスチン成分の定量的な評価が発がんリスク予測に有用である可能性が示唆された。OATP1B3の発現が、LGR5を含むWnt/β-catenin 標的遺伝子群の発現との間に強い関連がある事を示した。
・TERT-RdRPが肝細胞がん発がん過程にどのような関与をしているかあるいは、TERT-RdRP阻害が新たな肝がん治療戦略となり得るかの検討を引き続き進めることの重要性が示唆された。
・HCVコアタンパクはType 2 mitophagyの実行分子であり、E3 ubiquitin ligaseであるParkinのN端側領域と結合することでParkinのミトコンドリアへの局在を阻害し、これによりmitophagyを抑制した。
・CBP2遺伝子の発現低下はDNAのメチル化によることと、この遺伝子の発現はHNF1により完全に制御されていることを明らかにした。BASP1遺伝子の発現低下の大部分は、プロモーター領域のメチル化では説明できずメチル化以外の分子機序によるものであることが明らかとなった。
・HCV NS5AはSMYD3と相互作用することによって、SMYD3の核内移行を阻害し、SMYD3によるMAP3K2のメチル化を増強し、AP1を介した転写を促進した。
・Nrf2がHCVの持続感染及び細胞増殖に対して同時に抑制することができた。Nrf2及びその標的遺伝子はHCV及びHCV肝がんの治療標的となると考えられた。アミノ酸に加え、デスモステロールがHPI細胞の細胞内のみならず培養上清においても著明に増加していることを示した。
結論
研究計画は順調に推移している。線維化をきたすトランスジェニックマウスの実験から、治療の標的分子としてセマフォリン6a、およびピルビン酸キナーゼPKM2が抽出された。Muse細胞が肝臓の修復に寄与していることが示された。エラスチンは発がんリスクの指標として有用であり、Wnt/β-catenin, LGR5に着目した典型的肝細胞がんが解析された。TERT-RdRP活性の阻害が抗がん戦略となるかについてRdRP阻害剤の探索が開始された。HCVがparkinを介してmitophagyに影響することが明らかとなった。HCVが長期に複製することによって生じる宿主遺伝子のうちCBP2遺伝子の発現低下とBASP1遺伝子の発現低下の機序が明らかとなった。SMYD3を新規のNS5A結合宿主因子として同定し、HCV NS5AはSMYD3と相互作用することによってMAP3K2のメチル化が増強され、AP1を介した転写を促進した。HCV持続感染培養細胞では代謝亢進状態を認め、Nrf2の標的遺伝子群が恒常的に活性化していた。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
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