文献情報
文献番号
201423011A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代シーケンシング・ゲノムワイド関連解析を用いたC型肝炎治療に伴う肝病態進展軽快、肝発癌に関わる宿主因子の解析
課題番号
H25-肝炎-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 直哉(北海道大学 医学研究科内科学講座消化器内科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 今西 規(東海大学 医学部基礎医学系分子生命科学)
- 遠藤 俊徳(北海道大学 大学院情報科学研究科)
- 杉山 真也(国立国際医療センター、肝炎・免疫研究センター)
- 武冨 紹信(北海道大学 医学研究科 外科I)
- 夏井坂 光輝(北海道大学病院 消化器内科)
- 巽 智秀(大阪大学 大学院医学系研究科消化器内科学)
- 前川 伸哉 (山梨大学大学院医学工学総合研究部・肝疾患地域先端医療システム学講座)
- 朝比奈 靖浩(東京医科歯科大学・消化器内科学)
- 上野 義之(山形大学・消化器病学)
- 中牟田 誠(独立行政法人国立病院機構九州医療センター・消化器内科)
- 高後 裕(旭川医科大学・消化器内科)
- 宮西 浩嗣(札幌医科大学・消化器内科)
- 中馬 誠(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
32,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究で我々は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)の手法を用いてHCV感染の組織学的進展軽快、肝発癌に関わる宿主因子の解析を行うことにより、新規診断マーカーを探索し、肝病態の軽快を促進する新たな分子標的治療法の創出を目指す。従来のDNA chipを用いたGWASに留まらず、次世代シーケンサーを用いたオミックス解析(エキソームによる体細胞変異、DNAメチル化領域、ヒストンアセチル化領域、およびCNV(コピー数変異))を行う。その解析から疾患関連因子を抽出し、診断や治療に役立てる。
研究方法
(1) DNA検体、臨床情報の集積:
申請者らの施設はそれぞれ多施設共同研究を遂行しており、それらの症例の診療情報、DNA検体を集積する。抗ウイルス療法症例:坂本(NORTE Study)、朝比奈(OCLC)、前川(YPERS)、巽(OLF)、杉山(国立国際医療研究センター)。肝癌、肝移植症例:武冨、住民健診コホート:上野。
次世代シーケンサーは共同研究施設である国立国際医療研究センター、北海道大学消化器内科、および山梨大学第1内科に導入されている。
(2)バイオインフォマティクス解析:
GWAS解析に必要な大規模計算機解析とソフトウエア整備、さらに大量ゲノム配列データのデータベース構築を行う。特に、次世代シーケンサーによる大量ゲノム配列のマッピング解析、SNVやCNVの特定、各種モデルによるGWASの遺伝統計学的解析を実施する。また、今西らが開発した最も情報豊富なヒト遺伝子統合データベースH-InvDB(Imanishi, PLoS Biol 2004; Takeda, NAR 2012)とともに、Encodeや1000人ゲノムPJなどの国内外の研究成果を活用し、肝発癌に関わる疾患パスウェイ探索などのデータマイニング解析を実行する。さらに、独自の疾患候補遺伝子の選定解析法(Taniya, Genomics 2011)を改良し、多数の候補中から疾患原因SNVを選定するための新しい統計解析法を開発・導入する。
申請者らの施設はそれぞれ多施設共同研究を遂行しており、それらの症例の診療情報、DNA検体を集積する。抗ウイルス療法症例:坂本(NORTE Study)、朝比奈(OCLC)、前川(YPERS)、巽(OLF)、杉山(国立国際医療研究センター)。肝癌、肝移植症例:武冨、住民健診コホート:上野。
次世代シーケンサーは共同研究施設である国立国際医療研究センター、北海道大学消化器内科、および山梨大学第1内科に導入されている。
(2)バイオインフォマティクス解析:
GWAS解析に必要な大規模計算機解析とソフトウエア整備、さらに大量ゲノム配列データのデータベース構築を行う。特に、次世代シーケンサーによる大量ゲノム配列のマッピング解析、SNVやCNVの特定、各種モデルによるGWASの遺伝統計学的解析を実施する。また、今西らが開発した最も情報豊富なヒト遺伝子統合データベースH-InvDB(Imanishi, PLoS Biol 2004; Takeda, NAR 2012)とともに、Encodeや1000人ゲノムPJなどの国内外の研究成果を活用し、肝発癌に関わる疾患パスウェイ探索などのデータマイニング解析を実行する。さらに、独自の疾患候補遺伝子の選定解析法(Taniya, Genomics 2011)を改良し、多数の候補中から疾患原因SNVを選定するための新しい統計解析法を開発・導入する。
結果と考察
C.研究結果
(1) C型肝炎の肝病態進展軽快に関わる宿主遺伝要因の解析のため、申請者らの施設でそれぞれ遂行している肝炎診療に関する多施設共同研究で、検体・臨床情報を収集した。
(2) 2000年から2010年までに当院で施行されたC型肝炎を背景とする肝細胞癌切除例を選定し、臨床情報データベースの整備を行った。
(3) Telaprevir併用interferon治療の副作用予測に血清granulysinが有用であることを報告した。
(4) 先行研究の論文調査により、肝がん発症に関連する遺伝子多型の情報を収集し、整備を行った。
・研究分担者(今西 規)
(1) 大規模ヒトゲノム・エキソーム解析のための並列計算機(32CPU, 256コア)の整備と解析パイプラインの構築を行い、エキソーム配列を並列で解析できるように整備した。
(2) 公共データベースからゲノム配列情報、多型データを収集した。特に近年急速に研究が進む日本人特有の遺伝子多型情報を抽出し、本解析に使用できるように整備した。
・研究分担者(杉山 真也)
(1) 次世代シーケンサーによるエキソーム解析試薬の最適化を行った。Ampliseq、SureSelectに加え、カスタムプローブを合成することで遺伝子領域の広範をカバーするに至った。
・研究分担者(遠藤俊徳)
(1) 分子動力学シミュレーションにより、NS5A阻害剤Daclatasvirの結合部位および作用機構の解析を行い、薬剤結合の有無により大きな構造変化によってウイルス複製阻害が起こることが示唆された。
・研究分担者(前川伸哉)
(1) C型慢性肝炎において、MIC_Aは既存因子とは独立して、またDEPDC5は高齢者において肝発癌に関連し、PNPLA3は肝発癌には直接関連しないが、線維化を進展する因子であることを示した。
D.考察
本研究の遂行により、今後迎える経口抗ウイルス薬による全例治癒の時代に備え、ウイルス排除後の肝発癌、生命予後などの自然経過とそれに関連する遺伝要因を明らかとすることができる。さらに新規治療薬の治療適応検討にあたり、従来非適応であった高齢者、肝硬変例のウイルス排除療法の予後改善効果とその関連因子を明らかとすることにより、医療経済学的検討のための科学的根拠が得られる。
(1) C型肝炎の肝病態進展軽快に関わる宿主遺伝要因の解析のため、申請者らの施設でそれぞれ遂行している肝炎診療に関する多施設共同研究で、検体・臨床情報を収集した。
(2) 2000年から2010年までに当院で施行されたC型肝炎を背景とする肝細胞癌切除例を選定し、臨床情報データベースの整備を行った。
(3) Telaprevir併用interferon治療の副作用予測に血清granulysinが有用であることを報告した。
(4) 先行研究の論文調査により、肝がん発症に関連する遺伝子多型の情報を収集し、整備を行った。
・研究分担者(今西 規)
(1) 大規模ヒトゲノム・エキソーム解析のための並列計算機(32CPU, 256コア)の整備と解析パイプラインの構築を行い、エキソーム配列を並列で解析できるように整備した。
(2) 公共データベースからゲノム配列情報、多型データを収集した。特に近年急速に研究が進む日本人特有の遺伝子多型情報を抽出し、本解析に使用できるように整備した。
・研究分担者(杉山 真也)
(1) 次世代シーケンサーによるエキソーム解析試薬の最適化を行った。Ampliseq、SureSelectに加え、カスタムプローブを合成することで遺伝子領域の広範をカバーするに至った。
・研究分担者(遠藤俊徳)
(1) 分子動力学シミュレーションにより、NS5A阻害剤Daclatasvirの結合部位および作用機構の解析を行い、薬剤結合の有無により大きな構造変化によってウイルス複製阻害が起こることが示唆された。
・研究分担者(前川伸哉)
(1) C型慢性肝炎において、MIC_Aは既存因子とは独立して、またDEPDC5は高齢者において肝発癌に関連し、PNPLA3は肝発癌には直接関連しないが、線維化を進展する因子であることを示した。
D.考察
本研究の遂行により、今後迎える経口抗ウイルス薬による全例治癒の時代に備え、ウイルス排除後の肝発癌、生命予後などの自然経過とそれに関連する遺伝要因を明らかとすることができる。さらに新規治療薬の治療適応検討にあたり、従来非適応であった高齢者、肝硬変例のウイルス排除療法の予後改善効果とその関連因子を明らかとすることにより、医療経済学的検討のための科学的根拠が得られる。
結論
来年度以降も引き続き下記のごとく研究を遂行する。
(1) 申請者,分担者の施設で遂行しているそれぞれの多施設共同研究のデータ集積と、収集検体のヒト遺伝子解析を進める。
(2) エキソームの解析手法の確立を行い、データ取得から解析までのパイプラインを完成させる。
(1) 申請者,分担者の施設で遂行しているそれぞれの多施設共同研究のデータ集積と、収集検体のヒト遺伝子解析を進める。
(2) エキソームの解析手法の確立を行い、データ取得から解析までのパイプラインを完成させる。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
-