医療機関における感染制御に関する研究

文献情報

文献番号
201420026A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における感染制御に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
八木 哲也(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 宜親(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 中澤 靖(東京慈恵会医科大学)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所)
  • 荒川 創一(神戸大学 大学院医学系研究科)
  • 中村 敦(名古屋市立大学 大学院医学系研究科)
  • 村上 啓雄(岐阜大学医学部附属病院 )
  • 飯沼 由嗣(金沢医科大学)
  • 藤本 修平(東海大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)国内での検出事例は少ないが、海外では大きな問題となっているカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)や多剤耐性アシネトバクタ―(MDRA)などの多剤耐性菌、クロストリジウム・ディフィシル(CDI)強毒株に対する感染対策や治療に関する情報の普及と現場での実践は喫緊の課題である。内外の知見を集約して医療機関で活用できる感染対策の資料集を作成する。2)多剤耐性菌対策において、加算1-1、1-2連携強化につながる支援システムの評価、保健所や地方衛生研究所などの行政機関も含めた連携の強化を行う。3)2007 年に発出した「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)」の改訂を行う。4)毎年流行し国内でもアウトブレイク事例の見られる、インフルエンザ(INF)、ノロウイルス感染症(NVI)に対する感染対策について、国内での問題点を踏まえた、医療機関の現場で活用できる資料を作成する。
研究方法
1)CRE対策については、名大病院における早期検出と対応事例のまとめ、海外の感染対策についての知見を集約すると共に、地域連携の中で検出された耐性菌の解析支援を行った。CDIについては、国公立大学附属病院感染対策協議会所属の29施設で行われた疫学研究の解析を行うと同時に、強毒株を想定した感染対策についての国内外の知見を調査した。2)これまでに薬剤耐性菌検査の経験のない地方衛生研究所担当者に対する薬剤耐性菌検査についての研修を行った。また、昨年度考案された地域連携支援システムについて手作業による試行評価と、村木班と連携のもと抗菌薬使用情報の取得法を検討した。3)新しい感染制御に関する学術論文等の情報を収集し、その整理と分析評価を行い、更新作業を継続する。4)INF研究では、昨年のアンケートで明らかになった我が国での対策の現状を踏まえ、指針案の作成に取り掛かった。NVI研究では、海外のガイドラインを参考に資料作成を開始、地域情報共有システムに基づく対策の実践、迅速診断検査法の評価を行った。
結果と考察
1)昨年度に作成したCREの疫学・検出等に関するFact sheetを更新した。CRE感染症死亡の因子の報告では、患者の重症度や基礎疾患に加え、適切な抗菌薬治療と併用療法が予後良好因子として挙げられた。コリスチン耐性機序はLPSの修飾によるもので、感染症死亡増加の1要因となっていた。名大病院での多剤耐性大腸菌3例検出事例では、厳重な感染対策を実施し早期終息を実現した。保菌調査では、CDC推奨の方法よりもESBL用選択培地を使用した方法が優れることが判明した。地域連携活動としての耐性菌解析支援で、MDRA、多剤耐性肺炎桿菌、VREの海外輸入事例、PVL産生MRSA2事例を解析した。CDI研究では、多施設疫学研究の結果我が国での感染率は0.21%であった。集められた菌株の分子疫学的解析を開始した。また、強毒型CDIの感染対策について、重症化予測因子や治療法についての知見をまとめた。2)本年度は地方衛生研究所職員に対し計4回の研修を実施し、20自治体より23名が参加した。研修は3日間で、β-ラクタム系抗菌薬、薬剤感受性試験及び阻害剤を用いたスクリーニング試験、分子疫学的解析法についての内容であった。感染症法全例届出対象としてCREとMDRAが加わった。昨年度作成した加算の地域連携用サーベイランスシートを14施設の協力の元、手入力で入力・解析し評価した。村木班の抗菌薬使用動向調査を介して支援システムへの情報収集が可能と考えられた。3)改訂作業に予想以上の時間がかかっており、改定案が完成次第ホームページで公開する。4)INF研究では、昨年CDCが発出したガイドラインの項目に沿って、我が国での現状を踏まえて、季節性INF対策の指針案の作成を行った。今後実際の病院アウトブレイク事例の要因分析結果を反映させる予定である。NVI研究では、欧米で発出されているNVIアウトブレイク時のマネジメントと予防対策のガイドラインを参考に、対策の資料集作成を開始した。LAMP法のNV遺伝子抽出法を改良し、簡便に高感度に検出できることを確認した。また、流行に即した段階的なNVI感染対策を地域連携の中で実践した。
結論
CREを含めた多剤耐性菌対策・強毒型CDI対策については、疫学研究や地域連携支援も進めながら、感染対策資料作成作業を開始、継続した。同時に研修を通じて地方衛生研究所多剤耐性菌検査の教育支援を行い、また感染対策の地域連携ネットワーク活動を支援するシステムの考案・評価を行った。また「手引き(案)」の改訂作業を継続した。INF・NVI対策では、我が国での対策の現状を踏まえ、海外のガイドラインを参考に医療機関の現場で活用可能な感染対策資料の作成作業を継続した。 感染対策資料は次年度完成予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201420026Z