病原体及び毒素の管理システムおよび評価に関する総括的な研究

文献情報

文献番号
201420022A
報告書区分
総括
研究課題名
病原体及び毒素の管理システムおよび評価に関する総括的な研究
課題番号
H24-新興-一般-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 棚林 清(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 田辺 公一(国立感染症研究所 真菌部)
  • 向井 徹(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター感染制御部)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所 ウイルス第一部第三室)
  • 福士 秀悦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 前田 秋彦(京都産業大学 総合生命科学部動物生命医科学科)
  • 西村 秀一(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウイルス第一部 第五室)
  • 加藤 康幸((独)国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
  • 奥谷 晶子(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 篠原 克明(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 高田 礼人(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 綿引 正則(富山県衛生研究所)
  • 安田 二朗(長崎大学熱帯医学研究所 新興感染症学分野)
  • 駒野 淳(大阪府立公衆衛生研究所感染症部 ウイルス課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
73,547,000円
研究者交替、所属機関変更
研究代表者,分担者の交代はない.

研究報告書(概要版)

研究目的
日本における科学的エビデンスに基づき,効率的な病原体管理システムを構築するための基盤を整備し,また種々の病原体の性質を評価して,バイオセーフティ・セキュリティの向上に貢献することを目的とする.その向上に向けて,ヒトに病原性を有する病原体でリスク分類されていないもの,あるいは既知の病原体のリスク分類の再検討を行い,病原体の管理を安全面から評価するためのシステムを整備する必要がある.また,大量且つ迅速に病原体サンプルを処理するシステムや病原体の登録,保管,輸送,廃棄の一括管理システム及びそれらの情報を統括する総合システムの実用配備も求められている.
研究方法
病原体管理ハードの整備および病原体管理ソフトの整備を目的として,以下の項目に則って実施した.
(1) 病原体管理ハードの整備に関する研究(病原体の安全な管理法の開発に関する研究)
 (ア) 昨年度までの配布先研究機関からのモニタリング結果の収集・分析・改良・再配布.
 (イ) 実用配布を効率的かつ効果的に行うための研究会・研修会の計画・実施.
 (ウ) 「他システムとの連携機能」の検討.
 (エ) 実用配備を目的とした機能特化型管理システムの調査・分析・改良.

(2) 病原体管理ソフトの整備に関する研究
 (ア) 国立感染症研究所病原体安全管理規程に分類されていない病原体や新規に発見されたヒトに病原性を示す病原体について,H25年度に引き続き,文献検索,病原体の性質の解析等を通じて,それらのリスク分類した.ヒトに病原性のある寄生虫,真菌,抗酸菌,ヒトに病原性のある神経ウイルス,出血熱ウイルスを含む新興ウイルス感染症,アルボウイルス,呼吸器ウイルス,人獣共通感染症等,それぞれの病原体について,分類(科,属),ヒトへの感染性,宿主,ヒトへの感染経路,分布,臨床像,致死率,ワクチンの有無,有効な薬剤(抗菌薬等)の有無,実験室感染事例の有無(リスク),培養の可否,培養方法,感染実験を実施する場合に用いられる動物種等の感染動物実験に関する事項,感受性動物間における感染リスク,引用文献,の項目について評価した.
 (イ) 2014年に東京で流行したデング熱の原因ウイルスの塩基配列の決定,登録,分子疫学研究を実施した.
 (ウ) 病原体取扱い研究機関や教育機関におけるバイオセーフティを向上させるために各機関に評価することが求められるバイオセーフティ関連事項を整理した(ガイドライン試案の作成).
 (エ) ウイルス性出血熱に関する講演会,特に2014年に西アフリカで発生したエボラ出血熱とEU等の対応に関する講演会を開催した.
結果と考察
物理的セキュリティ強化のみならず病原体の取扱い者に関する厳格化など,物理的セキュリティと人的要因を融合した病原体管理方法の確立が必要となっていることが確認された.本研究において開発,実用配備を行っている病原体管理のためのICBSシステムは,個々の病原体サンプルの保管管理,出納記録や取扱い者のアクセスの制限とその履歴を記録,管理することができ,バイオセキュリティ強化に寄与できる.実用化が概ね達成された.
 継続して新規病原体のバイオセーフティ・バイオセキュリティ上のリスク評価した.致死率の極めて高い病原体を網羅した.2014年に東京都代々木公園を中心に発生したデング熱国内流行株はアジアで流行するウイルスと近縁で,異なる2株のウイルスが本流行に関与していたことが明らかとなった.
 英国保健省-微生物学サービス・英国保健省-微生物学サービスのウイルス性出血熱・新興感染症のリーダーであるRoger Hewson博士を招いて,国立感染症研究所,国立国際医療協力センター,長崎大学熱帯医学研究所,および,北海道大学医学部にてバイオセーフティに関連する講演会を開催した.このような啓蒙活動を通じて,バイオセーフティに対する認識を,病原体を取り扱う研究者等において高まることが重要である.
本年度は本研究班最終年度であり,病原体や毒素が研究や教育のために用いられる研究機関・教育機関がバイオセーフティ・バイオセキュリティの向上のためのシステム整備する際に,どのような項目に注目して,過不足なくシステムを整備するのかといった質問事項に参考となる情報を提言することを目的として「各研究・教育機関で実施される微生物研究における病原体および毒素の安全な取扱い及び管理のための指針(案・概要)」と題するガイドライン試案を作成した.
結論
本研究で開発している病原体管理システム(ICBSシステム)の実用化がなされ,いくつかの研究機関に配備された.ヒトに病原性を示す新規病原体および日本等で分離同定された新規病原体のバイオセーフティリスクを評価した.このような活動は今後も継続的になされる必要がある.

公開日・更新日

公開日
2015-05-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201420022B
報告書区分
総合
研究課題名
病原体及び毒素の管理システムおよび評価に関する総括的な研究
課題番号
H24-新興-一般-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 和良(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 向井 徹(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター感染制御部)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所 ウイルス第一部第三室)
  • 福士 秀悦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 前田 秋彦(京都産業大学 総合生命科学部動物生命医科学科)
  • 西村 秀一(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 臨床研究部ウイルスセンター)
  • 加藤 康幸((独)国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
  • 奥谷 晶子(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 篠原 克明(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 高田 礼人(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
  • 安田 二朗(長崎大学熱帯医学研究所 新興感染症学分野()
  • 駒野 淳(大阪府立公衆衛生研究所感染症部ウイルス課)
  • 棚林 清(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 大野 秀明(国立感染症研究所 真菌部)
  • 田辺 公一(国立感染症研究所 真菌部)
  • 綿引 正則(富山県衛生研究所 細菌部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
研究代表者は3年間変更はなかった.H24年度に研究分担者であった宮﨑善継氏に代わって,H25年4月(H25年4月1日)から大野秀明氏が,そして,H26年度からは田辺公一氏が研究分担者を担当した.また,H24年度の研究開始時から研究分担者を担当した佐多徹太郎氏が2年間研究分担者を担当した後,H26年4月から綿引正則氏が佐多氏に代わって研究分担者を努めた.H24年度においてバイオセーフティ管理専門家として研究分担者を担当した杉山和良氏に代わって,H25年4月から2年間研究分担者を担当した.

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では,日本における科学的エビデンスに基づき,効率的な病原体管理システムを構築するための基盤を整備し,また種々の病原体の性質を評価して,バイオセーフティ及びセキュリティの向上に貢献することを目的とする.先行研究において開発された病原体管理(ICBSシステム)の実用化を目的とした.
研究方法
1.病原体管理ハードの整備を目的として,先行研究で開発されたICBSシステムを改良して病原体管理システムとしての機能は実用レベルに達したことが確認された.様々な病原体取扱い現場で行われる検査業務・研究業務に対して,より効果的なシステムの提供と実用化としての幅広い普及を目的とし,本システムの課題点と問題点を収集・分析し,実用化を目指した.

2.病原体管理ソフトの整備としてウイルス,細菌,真菌,寄生虫,昆虫媒介感染症,人獣共通感染症,新興感染症,感染症患者の治療等について,世界的な新興感染症,未だにリスク分類されていない病原体あるいは既知の病原体のリスク分類を評価した.これらの病原体について,病原体の性質の解析等を通じて,それらのリスク分類を試みた.分類(科,属),ヒトへの感染性,宿主,ヒトへの感染経路,分布,臨床像,致死率,ワクチンの有無,有効な薬剤(抗菌薬等)の有無,実験室感染事例の有無(リスク),培養の可否,培養方法,感染実験を実施する場合に用いられる動物種等の感染動物実験に関する事項,感受性動物間における感染リスク,引用文献,の項目について評価した.
 バイオセーフティ・バイオセキュリティに関する国際情勢を評価した.また,デュアルユースリサーチに関する調査も実施した.さらに,病原体取扱い研究機関や教育機関におけるバイオセーフティのシステム整備に資するガイドラインを作成した.
 広報活動として,H25年度にはバイオセーフティに関する講演会(シンポジウムを含む)を日本バイオセーフティ学会を,また,H26年度にはウイルス性出血熱に関する講演会を開催して,バイオセーフティに関する広報活動を実施した.
結果と考察
1. 病原体管理ハードシステムの整備に関する研究(病原体の安全な管理法の開発に関する研究)
改良されたICBSシステムは,個々の病原体サンプルの保管管理,出納記録,取扱者のアクセスの制限とその履歴を記録,管理することができ,バイオセキュリティ強化に寄与する.施設内外でのサンプル情報の共有も可能である.これまで約30箇所以上の研究機関に配布し,各研究機関におけるモニタリング結果および個々の要望に応じた改良によって,汎用型ICBS病原体管理システムは,機能面としては現場使用に耐えるレベルに到達していることが確認できた.継続使用のためヒューマンエラーなどを含めた人的要因に対する管理方法の確立が重要となっている.
2. 病原体管理ソフトシステムの整備に関する研究
① 病原体リスク分類およびリスク解析:リケッチア,寄生虫,真菌,抗酸菌,ダニ媒介性の病原ウイルス,神経ウイルス,呼吸器ウイルス,ズーノーシス起因病原体,の中からリスク分類がなされていないものを探索して,バイオセーフティにおけるリスク評価を行った.多くの新興感染症等病原体のリスク評価がなされた.
② 病原体取扱い研究機関や教育機関におけるバイオセーフティ委員会の設置に関する研究:日本国内の病原体が取り扱われる研究・教育機関の多くにおいては,バイオセーフティに関する認識は低いと思われる.法律や通知によりバイオセーフティ・バイオセキュリティに関連する規制が存在する.最近,日本学術会議からこの問題に対する提言がなされた.
③ その他:バイオセーフティ・バイオセキュリティに関する講演会の開催,等がなされた.H25年度には公開シンポジウム「バイオセーフティ・バイオセキュリティの現状について:病原体の適切な取扱いと安全管理」を札幌市で開催した.H26年度には英国保健省のR Hewson博士を招いての講演会開催が実施された.
結論
ICBSシステムの実用化がなされ,いくつかの研究機関に配備された.ヒトに病原性を示す新規病原体および日本等で分離同定された新規病原体のバイオセーフティリスクを評価した.このような活動は今後も継続的になされる必要がある.これまであまり注目されてこなかったデュアルユースリサーチに関する事項も,バイオセーフティ・バイオセキュリティ教育項目に含まれる必要がある.求められるバイオセーフティ・バイオセキュリティ向上に必要な対応も,世界情勢によって変化することが予想され,それに合わせた柔軟な教育システムを,日本国内の各機関においてなされる必要がある.そのためのガイドラインを提言した.今後もアップデートする必要がある.

公開日・更新日

公開日
2015-05-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201420022C

収支報告書

文献番号
201420022Z