病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
201420014A
報告書区分
総括
研究課題名
病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
泉谷 秀昌(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 寺嶋 淳(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 八柳 潤(秋田県健康環境センター 細菌班)
  • 甲斐明美(東京健康安全研究センター 微生物部)
  • 松本昌門(愛知県衛生研究所 微生物部)
  • 勢戸和子(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部細菌課)
  • 中嶋 洋(岡山県環境保健センター細菌科)
  • 世良暢之(福岡県保健環境研究所 病理細菌課)
  • 伊豫田 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 片山和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 芳賀慧(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 藤井克樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 朴 英斌 (パク ヨンビン)(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 三瀬敬治(札幌医科大学医学部 医療人育成センター 入学者選抜企画研究部門)
  • 鈴木善幸(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)
  • 佐藤裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター (村山))
  • 朴三用(公立大学法人 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,887,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品由来感染症の原因ウイルスや細菌の遺伝学的解析方法について検討し、高度な解析能を有する手法を標準化して利用した病原体解析を行う。また、原因解明のために解析結果を関連機関において共有して当該感染症の予防や制御に資する情報が提供可能なネットワークを構築することを目的とする。原因病原体の解析データと疫学情報を含むデータベース(DB)をオンラインで利用することにより、食品由来感染症の発生に即応できる情報を提供できる体制を構築する。
研究方法
1) 細菌グループ(細菌G):BioNumerics(BN)とBNサーバーを活用し、腸管出血性大腸菌(EHEC)に関する菌株解析情報DBの検討・構築・整備を行う。菌株解析情報はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)、IS-printing system(IS-PS)、multilocus variable-number tandem-repeat analysis(MLVA)が含まれる。当該サーバーおよび研究班ネットワーク並びに食中毒支援システム(NESFD)を利用した情報共有ネットワーク化を進める。
2) ウイルスグループ(ウイルスG):ノロウイルスにおいて、病原性と関連する遺伝子産物のクローン化、大腸菌における発現および精製、精製タンパクの結晶化、並びに構造解析を行う。国際的なNoronetと共同作業を進め、新規タイピング法を整備する。ロタウイルスのサブタイピングを目的としたポリアクリルアミドゲル電気泳動(RNA-PAGE)によるタイピングを検討する。上記解析情報をCaliciWeb(CW)と統合したGatVirusWeb(GWV)の構築・整備し、流行予測プログラムの開発等を行い更なる充実を図る。
結果と考察
細菌Gでは、パルスネットを有効に機能させるため継続的な精度管理を実施するとともに、BNサーバーを利用したPFGE-DB構築を継続した。EHEC O157のISPS-DBを改良し、OSアップデート等の対応、項目追加ならびに検索機能を強化した。当該DBは6分担研究者によるオンライン利用を可能としている。EHEC O157, O26, O111についてMLVAによる解析の本格運用を開始し、解析結果の迅速な還元を可能とし、集団事例解析に貢献した。また、参照DNAの設定、配布など、当該法の普及支援を行った。ウイルスGでは、ノロウイルス新規遺伝子型別法を確立し、政界標準法としての運用を始めた。ロタウイルス遺伝子セグメントの解析法を構築し、その迅速簡易スクリーニング法としてRNA PAGE泳動パターンに基づく分類法のアルゴリズムを開発した。ノロウイルス病原性と関連するウRdRpタンパク質の結晶化に成功し、立体構造を明らかにした。こうした種々の下痢症関連ウイルスおよびその分子疫学的特徴を網羅するGWVの運用を開始した。
結論
効率的な食品由来感染症探知システムを構築するために、病原体解析情報DBとして細菌ではパルスネット、ウイルスではCWを継続的に稼働させている。後者はより網羅的なDB、GVWとして運用を開始した。これらのシステムでは、DBに正確な病原体解析情報が蓄積されることが必須であることから、解析手法の精度管理とともに、より解析能力が高く簡便迅速な手法を採用してゆくことが重要である。細菌ではIS-PSおよびMLVAの利用により、これまで以上に迅速な情報共有が可能となりつつある。今後も、効果的な情報共有を進めるためのインターフェースや情報共有ルートの開発・検討などが必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201420014B
報告書区分
総合
研究課題名
病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
泉谷 秀昌(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 寺嶋 淳(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 八柳 潤(秋田県健康環境センター 細菌班)
  • 甲斐明美(東京健康安全研究センター 微生物部)
  • 松本昌門(愛知県衛生研究所 微生物部)
  • 勢戸和子(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部細菌課)
  • 中嶋 洋(岡山県環境保健センター細菌科)
  • 世良暢之(福岡県保健環境研究所 病理細菌課)
  • 伊豫田 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 片山和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 芳賀慧(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 藤井克樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 朴 英斌 (パク ヨンビン)(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 三瀬敬治(札幌医科大学医学部 医療人育成センター 入学者選抜企画研究部門)
  • 鈴木善幸(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)
  • 佐藤裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター (村山))
  • 朴三用(公立大学法人 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科)
  • 堀川和美(福岡県保健環境研究所 病理細菌課)
  • 村上耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品由来感染症の原因ウイルスや細菌の遺伝学的解析方法について検討し、高度な解析能を有する手法を標準化して利用した病原体解析を行う。また、原因解明のために解析結果を関連機関において共有して当該感染症の予防や制御に資する情報が提供可能なネットワークを構築することを目的とする。原因病原体の解析データと疫学情報を含むデータベース(DB)をオンラインで利用することにより、食品由来感染症の発生に即応できる情報を提供できる体制を構築する。
研究方法
1) 細菌グループ(細菌G):BioNumerics(BN)とBNサーバーを活用し、腸管出血性大腸菌(EHEC)に関する菌株解析情報DBの検討・構築・整備を行う。菌株解析情報はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)、IS-printing system(IS-PS)、multilocus variable-number tandem-repeat analysis(MLVA)が含まれる。当該サーバーおよび研究班ネットワーク並びに食中毒支援システム(NESFD)を利用した情報共有ネットワーク化を進める。
2) ウイルスグループ(ウイルスG):ノロウイルスにおいて、病原性と関連する遺伝子産物のクローン化、大腸菌における発現および精製、精製タンパクの結晶化、並びに構造解析を行う。国際的なNoronetと共同作業を進め、新規タイピング法を整備する。ロタウイルスのサブタイピングを目的としたポリアクリルアミドゲル電気泳動(RNA-PAGE)によるタイピングを検討する。上記解析情報をCaliciWeb(CW)と統合したGatVirusWeb(GWV)の構築・整備し、流行予測プログラムの開発等を行い更なる充実を図る。
結果と考察
細菌Gでは、パルスネットを有効に機能させるため継続的な精度管理を実施するとともに、BNサーバーを利用したPFGE-DB構築を継続した。EHEC O157のISPS-DBを改良し、OSアップデート等の対応、項目追加ならびに検索機能を強化した。当該DBは6分担研究者によるオンライン利用を可能としている。EHEC O157, O26, O111についてMLVAによる解析の本格運用を開始し、解析結果の迅速な還元を可能とし、集団事例解析に貢献した。また、参照DNAの設定、配布など、当該法の普及支援を行った。ウイルスGでは、ノロウイルス新規遺伝子型別法を確立し、政界標準法としての運用を始めた。ロタウイルス遺伝子セグメントの解析法を構築し、その迅速簡易スクリーニング法としてRNA PAGE泳動パターンに基づく分類法のアルゴリズムを開発した。ノロウイルス病原性と関連するウRdRpタンパク質の結晶化に成功し、立体構造を明らかにした。こうした種々の下痢症関連ウイルスおよびその分子疫学的特徴を網羅するGWVの運用を開始した。
結論
効率的な食品由来感染症探知システムを構築するために、病原体解析情報DBとして細菌ではパルスネット、ウイルスではCWを継続的に稼働させている。後者はより網羅的なDB、GVWとして運用を開始した。これらのシステムでは、DBに正確な病原体解析情報が蓄積されることが必須であることから、解析手法の精度管理とともに、より解析能力が高く簡便迅速な手法を採用してゆくことが重要である。細菌ではIS-PSおよびMLVAの利用により、これまで以上に迅速な情報共有が可能となりつつある。今後も、効果的な情報共有を進めるためのインターフェースや情報共有ルートの開発・検討などが必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201420014C

収支報告書

文献番号
201420014Z