ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究

文献情報

文献番号
201420005A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究
課題番号
H26-新興行政-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(医療法人相生会 臨床疫学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福島若葉(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 大藤さとこ(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 鈴木幹三(名古屋市立大学看護学部)
  • 原めぐみ(佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野)
  • 岡田賢司(福岡歯科大学総合医学講座)
  • 浦江明憲((株)メディサイエンスプラニング)
  • 入江 伸(医療法人相生会)
  • 森 満(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 星 淑玲(筑波大学医学医療系)
  • 砂川富正(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 加瀬哲男(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 出口昌昭(市立岸和田市民病院)
  • 中野貴司(川崎医科大学小児科学)
  • 都留智巳(医療法人相生会ピーエスクリニック)
  • 井手三郎(聖マリア学院大学)
  • 小笹晃太郎(公益財団法人放射線影響研究所 広島疫学部)
  • 吉田英樹(大阪市保健所 兼 西成区役所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
38,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
【厚労省指導による研究】
1.インフルワクの有効性モニタリングを確立し、有効性を要約提示。
2.妊婦におけるインフル健康影響を調査し、定期接種化要否の判断根拠を提示。
【プロジェクト研究】
3.インフルワクの有効性、免疫原性をリスク集団別に提示。
4.DPTワク(百日咳)、および肺炎球菌・インフルワク(高齢者肺炎)の有効性を提示。
5.新規ワクチンについて有効性や免疫原性などを提示。
6.医療経済の立場から、費用効果的選択肢(助成額など)を提示。
7.微生物学的基盤に立ち、病原体特性を考慮した堅固な結果を得る。
研究方法
疫学、小児科、臨床薬理学、微生物学等の専門家が「結果と考察」に示す9分科会で共同研究を実施。
結果と考察
主要な結果。
1.定点モニタリング分科会
6歳未満児では、PCR陽性インフルに対するワクチンの調整ORは0.49(95%CI:0.32-0.75)、1回・2回接種で差なし。年少ほど有効性大。
2.妊婦健康影響分科会
入院率(/10,000 woman-months)は非妊娠・流行期0.95、妊娠・流行期2.05。Rate ratioは2.72。
3.インフルエンザ分科会
①保育園児では、医師診断インフルに対するワクチンの調整HRは、2011/12~13/14シーズンで0.73(0.53-0.99)、0.40(0.22-0.71)、0.74(0.52-1.07)。
②小学児童では、迅速診断陽性インフルに対するワクチンの調整ORは、A型0.81(0.39-1.68)、B型0.76(0.51-1.13)。
③免疫調節薬使用中の炎症性腸疾患患者では、1回接種後の抗体保有割合(sP:HI価≧1:40)は、H1で85%、H3で82%、Bで100%。2回接種による改善なし(各々、64%、77%、100%)。
④化学療法中の肺がん患者では、1回接種後のsPは、H1で84%、H3で84%、Bで65%。COPD患者(各々、81%、96%、92%)と有意差なし。
4.百日咳分科会
DPTワク(4回接種)の百日咳に対する調整ORは0.22(0.04-1.05)。接種後経過年数毎では、<5.8年0.24、5.8-9.1年0.14、≧9.2年0.11。
5.高齢者肺炎分科会
肺炎に対する調整ORは、肺炎球菌ワク0.84(0.54-1.30)、インフルワク0.74(0.51-1.08)。接種パターン別では(vs. 両ワクとも非接種)、インフルワクのみ0.75(0.49-1.15)、肺炎球菌ワクのみ0.86(0.45-1.66)、両ワク接種0.62(0.35-1.08)。
6.新規ワクチン分科会
①Case population studyで、乳幼児の迅速診断陽性ロタウイルス胃腸炎に対するロタワクの有効率は73%。症例対照研究でロタワクの調整ORは、hospital/test-negative controlとの比較で0.12(0.02-0.91)と0.13(0.02-1.10)。
②保育園児では、急性中耳炎に対する肺炎球菌ワクの調整HRは0.32(0.23-0.44)。
③「ポリオワクの互換性試験」の対象児で1年後の抗体持続を検討。Sabin株に対するsP(中和抗体≧1:8)は100%。Salk株については、A群(OPV⇒DPT-IPV⇒DPT-IPV⇒DPT-IPV)のみ、TypeⅠに対するsPが86%に低下。
7.費用対効果分科会
高齢者に対する肺炎球菌ワク接種は、現行の「5歳刻み(65,70,75,…)助成」よりも「65~80歳に一括助成」あるいは「65歳以上に一括助成」の方が費用効果に優れる傾向。
8.微生物検索・病原診断分科会
①インフルワクによる流行株に対する抗体誘導を調査。A/Osaka/49/14(H3)株に対し、GMTは20(接種前)⇒27(接種後)、sPは30⇒50%と十分に上昇せず。
②ビクトリア系統含有インフルワクでは山形系統に対しても抗体誘導が示唆されたが、山形系統含有ワクではビクトリア系統に対する抗体誘導を認めず(2010/11~13/14)。
9.広報啓発分科会
米国ACIP勧告2014年版(MMWR 2014;63:691)を翻訳出版(「インフルエンザの予防と対策、2014年度版」(財)日本公衆衛生協会)
結論
主要な結論。
1.インフルワクの有効性モニタリング(<6歳)で、PCR陽性例に対する有効率は50%。
2.妊娠により流行期の入院率が約3倍増。入院率自体は欧米ほど高くない。
3.「DPT接種後経過年数が長いほど百日咳に対する有効性が低下」という関連を認めず。
4.高齢者肺炎の予防には、インフルワクと肺炎球菌ワクの両方接種が有効。
5.ロタウイルス胃腸炎に対するロタワクの有効率は70~90%。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201420005Z