被災地における精神障害等の情報把握と介入効果の検証及び介入手法の向上に資する研究

文献情報

文献番号
201419098A
報告書区分
総括
研究課題名
被災地における精神障害等の情報把握と介入効果の検証及び介入手法の向上に資する研究
課題番号
H24-精神-指定(復興)-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山 剛(NTT東日本関東病院)
  • 鈴木 満(岩手医科大学神経精神科学講座・外務省メンタルヘルス・コンサルタント)
  • 荒木 剛(東京大学医学部附属病院・東京大学大学院医学系研究科 ユースメンタルヘルス講座)
  • 川上憲人(東京大学大学院医学系研究科)
  • 加藤 寛(公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 兵庫県こころのケアセンター)
  • 荒井秀典(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 酒井明夫(岩手医科大学)
  • 松本和紀(東北大学大学院・医学系研究科予防精神医学寄附講座 みやぎ心のケアセンター)
  • 前田 正治(福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座 ふくしま心のケアセンター)
  • 山田 幸恵(東海大学 文学部心理・社会学科)
  • 富田 博秋(東北大学災害科学国際研究所)
  • 三島和夫(国立精神・神経医療センター 精神保健研究所 精神生理研究部)
  • 渡 路子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター)
  • 堀越 勝(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター 研修指導部)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部)
  • 加茂登志子(東京女子医科大学付属女性生涯健康センター)
  • 飯島 祥彦(名古屋大学大学院医学系研究科生命倫理統括支援室)
  • 千葉 潜(医療法人財団 青仁会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 岩手県立大学社会福祉学部 山田 幸恵(平成26年4月1日~平成26年8月31日)→東海大学 文学部心理・社会学科(平成26年9月1日~平成27年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災後の被災者と支援者の調査、解析、活動実態の実証的検証を行い、子ども、被災地に関連する調査を行うとともにその成果を心のケアセンターに直ちに提供することによって現地の支援を向上させる。心のケアチーム活動を解析し、それらの成果を総合して心のケアセンターの中長期的活動方針の科学的基盤を整備する。多文化、海外被害も念頭に置いて災害時の初期対応効果を検証する。中期的に健在化すると懸念されるPTSD治療対応の臨床家育成のシステムの効率的構築を図る。今後のために、災害時の調査倫理指針ならびに精神科病院被害の対応指針を整備する。
研究方法
被災地の心のケアセンター等の被災地モデル地区での支援調査を継続し、実態を解析した。被災県での行政支援者の実態、心のケアセンターの業務の解析を行った。心のケアチーム活動の全体像を評価した。被災地の一般住民に対する尺度の検討を行う。過覚醒尺度の一般人口中の標準化を行った。岩手県で集団グリーフケアを実践し、効果を検証した。災害後の心理的応急処置(PFA)の指導者研修の効果検討を行い効果的なコミュニケーションスキルを検討した。被災地での多文化対応、また被災地外(海外含む)での被災者対応の課題を整理した。自治体職員、地域住民を対象として防災意識に影響を及ぼす要因分析を行った。被災地での母子ケアについて効果検討を行った。災害報道映像による子どもへの影響を解析し、ユニセフと開発したChild Friendly Spaceの研修効果を検証した。持続エクスポージャー療法効果を検証した。災害時の調査倫理指針を作成した。精神科病院被災の実態を調査し、指針を作成した。
結果と考察
災害時の精神保健医療対応ガイドライン改訂の作業を推進し、WHO版サイコロジカルファーストエイド(PFA)の研修の有効性、慢性PTSDに対する持続エクスポージャー療法の指導体制の効果を検証した。災害時の「外国人精神保健支援ネットワークづくり」を提言し、「海外および国内の大規模緊急事態に共通する遠隔メンタルヘルス支援の現況と課題を分析した。被災地での医療初動から中長期的な保健予防活動までの円滑な支援活動のコーディネートによる市民への保健医療サービス、救急医療の初動からこころのケアの保健・予防活動までの長期的視野にもとづく多職種協働チームでの支援モデルを作成した。トラウマ被害尺度の妥当性検討、有効性と被災者による回答バイアスの比較検討を行った。中長期の災害精神保健活動においてNPOなどの活動と果たす役割を総括した。全国自治体職員と地域住民の防災に対する認識について調査を行い、ソーシャル・キャピタル(SC)との関連を明確にした。岩手県こころのケアセンター、みやぎ心のケアセンター、ふくしま心のケアセンターの相談活動内容の集計、分析オを故なった。被災地域におけるグリーフ・ケアを実践し、グループ療法の有効性を確認した。広域自然災害が精神医療保健体制に及ぼす影響を検討し、災害の復興・防災に関する有益な情報を抽出した。過覚醒尺度日本語版を作成し、災害後に生じる不眠症、気分障害、PTSD 等に共通した病態として、生理的過覚醒の存在を明確にした。東日本大震災における心のケアチームの処方実態調査及び災害拠点病院における精神科医療機能調査を行った。サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)を実施する際に必要な基本的コミュニケーションスキル訓練の方法を開発した。東日本大震災のメディア報道による子どもたちのメディアへの暴露とプレ要因としての子ども側の要因(自閉傾向や気質など)との関連が明らかにされた。災害時の避難所・仮設住宅における環境改善のためのガイドラインとチェックリストが作成された。母親のうつ状態と子どもの問題行動について研究を行った。災害時における調査研究の倫理指針の検討を行った。大災害時における精神科病院に対する支援体制についての研究を行い、全国の民間精神科病院1141ヶ所に対して調査が行われ、それらの問題点が明らかにされた。
結論
東日本大震災の被災地心のケアセンターと連携し、本研究を通じての科学的研究基盤、研究支援体制を整備し、センターによる情報収集、活動の検証を可能とすることによって、科学的根拠に基づいたセンター業務の円滑な遂行に寄与するとともに、補完的な専門的主題について分担研究者が研究調査を行い、その成果を心のケアセンターに提供することで、被災者への包括的な精神保健医療対応が促進され、効率的な中長期計画の立案、実行に寄与することが可能となり、精神保健医療支援の切れ目のない展開を円滑に行うことに寄与した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201419098B
報告書区分
総合
研究課題名
被災地における精神障害等の情報把握と介入効果の検証及び介入手法の向上に資する研究
課題番号
H24-精神-指定(復興)-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山 剛(東日本関東病院)
  • 鈴木 満(精神科学講座・外務省メンタルヘルス・コンサルタント)
  • 荒木 剛(東京大学医学部附属病院・東京大学大学院医学系研究科 ユースメンタルヘルス講座)
  • 川上憲人(東京大学大学院医学系研究科)
  • 加藤 寛(公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 兵庫県こころのケアセンター)
  • 荒井秀典(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 酒井明夫(岩手医科大学)
  • 松本和紀(東北大学大学院・医学系研究科予防精神医学寄附講座 みやぎ心のケアセンター)
  • 昼田源四郎(ふくしま心のケアセンター)
  • 前田 正治(福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座 ふくしま心のケアセンター)
  • 山田 幸恵(東海大学 文学部心理・社会学科)
  • 富田 博秋(東北大学災害科学国際研究所)
  • 三島和夫(国立精神・神経医療センター 精神保健研究所 精神生理研究部)
  • 渡 路子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター)
  • 堀越 勝(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター 研修指導部)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部)
  • 加茂登志子(東京女子医科大学付属女性生涯健康センター)
  • 飯島 祥彦(名古屋大学大学院医学系研究科生命倫理統括支援室)
  • 千葉 潜(医療法人財団 青仁会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
1.研究分担者交替  分担研究課題 福島県心のケアセンターの活動の分析 昼田源四郎(平成24年6月19日~平成26年3月31日)→前田正治(平成26年4月1日~平成27年3月31日) 2.所属機関異動 研究分担者 岩手県立大学社会福祉学部 山田 幸恵(平成26年4月1日~平成26年8月31日)→東海大学 文学部心理・社会学科(平成26年9月1日~平成27年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災に際しては各県からいわゆる「心のケアチーム」が現地に派遣されたがその活動実態、効果、効率性は十分に解明されていない。また被災各県に心のケアセンターが設置されているが、今後の住民の精神健康の回復を見据え、様々な事情は異なるものの、できるだけ情報を共有し、以前の震災の体験からも学びつつ、有効なケアを構築していくことが望ましい。これらの活動と連携しながら実態を調査し、今後の震災に備えて災害時の初期対応と中期的に健在化すると懸念されるPTSD治療対応のあり方、災害時の調査倫理指針ならびに精神科病院被害の対応指針を整備する。
研究方法
被災地の心のケアセンター等の被災地モデル地区での支援調査を継続し、実態を解析した。被災県での行政支援者の実態、心のケアセンターの業務の解析を行った。心のケアチーム活動の全体像を評価した。被災地の一般住民に対する尺度の検討を行う。過覚醒尺度の一般人口中の標準化を行った。岩手県で集団グリーフケアを実践し、効果を検証した。災害後の心理的応急処置(PFA)の指導者研修の効果検討を行い効果的なコミュニケーションスキルを検討した。被災地での多文化対応、また被災地外(海外含む)での被災者対応の課題を整理した。自治体職員、地域住民を対象として防災意識に影響を及ぼす要因分析を行った。被災地での母子ケアについて効果検討を行った。災害報道映像による子どもへの影響を解析し、ユニセフと開発したChild Friendly Spaceの研修効果を検証した。持続エクスポージャー療法の効果を検証した。災害時の調査倫理指針を作成した。精神科病院被災の実態を調査し、指針を作成した。
結果と考察
慢性PTSDに対する持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure Therapy: PE)、災害時心理的応急処置PFA(WHO版)の普及と研修成果に関する検証、および「感情の表出に関する尺度の標準化研究」を行った。災害弱者である在日外国人を対象として、「自然災害時の精神保健医療対応と多文化対応」について研究を行い、また海外で災害に巻き込まれた法人を対象とした実態把握と対応ガイドラインの作成の調査研究を行った。被災地での医療初動から中長期的な保健予防活動までの円滑な支援活動のコーディネートによる市民への保健医療サービス、救急医療の初動からこころのケアの保健・予防活動までの長期的視野にもとづく多職種協働チームでの支援モデルを作成した。トラウマ被害尺度の妥当性検討、有効性と被災者による回答バイアスの比較検討を行った。中長期の災害精神保健活動においてNPOなどの活動と果たす役割を総括した。全国自治体職員と地域住民の防災に対する認識について調査を行い、ソーシャル・キャピタル(SC)との関連を明確にした。岩手県こころのケアセンター、みやぎ心のケアセンター、ふくしま心のケアセンターの相談活動内容の集計、分析オを故なった。被災地域におけるグリーフ・ケアを実践し、グループ療法の有効性を確認した。広域自然災害が精神医療保健体制に及ぼす影響を検討し、災害の復興・防災に関する有益な情報を抽出した。過覚醒尺度日本語版を作成し、災害後に生じる不眠症、気分障害、PTSD 等に共通した病態として、生理的過覚醒の存在を明確にした。東日本大震災における心のケアチームの処方実態調査及び災害拠点病院における精神科医療機能調査を行った。サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)を実施する際に必要な基本的コミュニケーションスキル訓練の方法を開発した。東日本大震災のメディア報道による子どもたちのメディアへの暴露とプレ要因としての子ども側の要因(自閉傾向や気質など)との関連を明らかにした。災害時の避難所・仮設住宅における環境改善のためのガイドラインとチェックリストが作成された。母親と子どもの精神状態の相関を見出した。災害時における調査研究の倫理指針の検討を行った。大災害時における精神科病院に対する支援体制についての研究を行い、問題点が明らかにされた。
結論
東日本大震災の被災地心のケアセンターと連携し、本研究を通じての科学的研究基盤、研究支援体制を整備し、センターによる情報収集、活動の検証を可能とすることによって、科学的根拠に基づいたセンター業務の円滑な遂行に寄与するとともに、補完的な専門的主題について分担研究者が研究調査を行い、その成果を心のケアセンターに提供することで、被災者への包括的な精神保健医療対応が促進され、効率的な中長期計画の立案、実行に寄与することが可能となり、精神保健医療支援の切れ目のない展開を円滑に行うことに寄与した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201419098C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一般住民におけるトラウマ被害の精神影響の調査手法について検討を行い、被災地における精神健康調査尺度の特性を既存調査から明らかにし、K6のカットオフ点が上昇することが確認された。災害時の初期対応としてのWHO版サイコロジカルファーストエイド(PFA)を導入し、様々な対象者に対してその研修効果を検討した。さらに指導者育成の研修のあり方について検討を行った。また、災害時こころの情報支援センターの業務内容や、PTSD研修のプログラム内容に寄与した。
臨床的観点からの成果
PTSDに対する持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure Therapy: PE)の効果を過去の研究データを解析知ることによって詳細に検討した。医療初動から中長期的な保健予防活動までのマネジメント手法の確立について研究を行った。被災地域におけるグリーフ・ケアについて、岩手県における実践をもとに研究を行った。死別による悲嘆反応とあいまいな喪失に関する心理教育の効果が検討された。
ガイドライン等の開発
災害時ガイドライン改訂の作業を推進し、災害時の精神医療チーム(DPAT)についての専門家の意見を集約した。災害時の外国人支援ガイドライン案の作成を行った。海外および国内の大規模緊急事態に共通する遠隔メンタルヘルス支援の現況と課題について研究を行った。一般住民におけるトラウマ被害の精神影響の調査手法マニュアルを作成した。
その他行政的観点からの成果
広域自然災害の精神医療保健体制に及ぼす影響の情報把握と対応のあり方の検討を行った。全国自治体の防災体制に関する実態調査では人口規模が小さい、高齢化率が高い、社会増加率が低い、第一次産業従事者割合が高いという地域特性など、さらに財政力指数が低い、防災職員の配分割合が少ないという自治体組織特性を併せ持つことが、全体計画の策定、要援護者名簿の整備、個別計画の作成の遅れにつながっていた。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
24件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
高橋秀俊, 神尾陽子
離島・過疎地域における児童・思春期精神保健と災害: 東京都大島町での学校精神保健の取組.
精神保健研究 , 63 , 31-36  (2017)
原著論文2
Maeda M, Ueda Y, Nagai M,Fujii S, Oe M
Diagnostic interview study of the prevalence of depression among public employees working for long- term disaster relief in Fukushima.
Psychiatry and Clinical Neurosciences. , 70 (9) , 413-420  (2016)
DOI:10.1177/1010539516689695

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
2019-08-09

収支報告書

文献番号
201419098Z