文献情報
文献番号
201419061A
報告書区分
総括
研究課題名
緑内障統合的分子診断法の確立と実証
課題番号
H24-感覚-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
- 田代 啓(京都府立医科大学大学院 医学研究科 ゲノム医科学)
- 森 和彦(京都府立医科大学大学院 医学研究科 視覚機能再生外科学)
- 中野正和(京都府立医科大学大学院 医学研究科 ゲノム医科学)
- 田中光一(東京医科歯科大学大学院 疾患生命科学研究部 分子神経科学)
- 長崎生光(京都府立医科大学大学院 医学研究科 基礎統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,849,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々は5,800例を超す血液検体(細胞株樹立済み)と過去20年に渡って蓄積してきた臨床情報(分担・森)を基に、今年度は1塩基の違いのバリアント(SNP)に引き続き、コピー数の違いのバリアント(copy number variant,CNV)に着目し、落屑緑内障(PEG)についてCNV情報に基づくゲノムワイド関連解析を実施する(分担・中野、田代)。さらにPOAGの発症に関与することが示唆されているグルタミン酸トランスポーターSLC1A3に着目し、グルタミン酸トランスポーターSLC1A3の2種類のrare variantsを再現したマウスの網膜の解析と、その活性化化合物を同定し神経保護効果の検討を行う。(分担・田中)これらの結果を基に昨年度検討した診断アルゴリズムを用いて、検診チップに搭載するバリアントの組み合わせを含めたアルゴリズムの確立と検診チップの判別精度を検証する(分担・長崎)。
研究方法
緑内障専門外来に受診する患者の臨床データは専用にカスタマイズされたソフトを構築しており、日々臨床情報が入力されている。引き続き、DNA取得とデータ蓄積は緑内障専門外来にて継続していく。2005年以来、我々が独自に収集している検体は5,800例を超えている。その検体の中から詳細な緑内障診断を行っている。さらには正常者もボランティアで募り、緑内障専門外来と同じだけの緑内障精密検査を施行して、厳密な正常者を選別し、統計解析に用いている。それらの臨床情報管理環境を強化・整備している。さらにこれまで構築した大規模計算用の解析サーバー環境を活用して、新たにコピー数の違いのバリアント(CNV)情報をPEG201例、正常対照697例について取得し、取得した大量のCNVデータについては、独自に構築した専用サーバー(分担・長崎)上にデータベース化した。抽出された高精度なコピー数データに基づくゲノムワイド関連解析を実施した。CNV解析ではGWAS解析とともにグルタミン酸トランスポーターSLC1A3に着目した。グルタミン酸トランスポーターSLC1A3の2種類のrare variantsを再現したマウスの網膜の解析と、その活性化化合物を同定し神経保護効果の検討を行った。これらの情報を活用して診断アルゴリズムの判別精度を検証した。
結果と考察
落屑緑内障群に関連することが強く示唆されるボンフェローニ補正を越える有意なCNVが250個以上のプローブから検出された。更に、これらのプローブの染色体における位置情報を解析した結果、検出されたCNVはゲノム上の約30領域から同定され、数十個の遺伝子にまたがっていることが明らかになった。
これらの結果を用いてサポートベクターマシーン(SVM)応用し、検診チップに搭載する一塩基の違いのバリアント(SNP)とコピー数の違いのバリアント(CNV)の組み合わせを含めた緑内障統合的診断アルゴリズムを応用した判別率の結果から、PEGでは30SNPと5CNVを検診チップに搭載するバリアントの組合せを決定した。落屑緑内障で判別率81.5%(感度92.5%、特異度69.7%)が認められた。
また緑内障患者群において高頻度で見つかったグルタミン酸取り込み活性を低下させるSLC1A3の2種類のrare variants (A169G, A329T)を再現したノックインモデルで作成したマウスの網膜を解析し、A169Gノックインマウスの網膜神経節細胞の数が、野生型より約20%減少していた。網膜におけるSLC1A3(A169G)の発現は、エクソン4のスキップによるnonsense-mediated mRNA decayにより半分に減少した。また、arundic acidが網膜におけるSLC1A3の転写を亢進させ、発現量を増加させることおよびarundci acidを投与することにより、GLASTへテロマウスの網膜神経節細胞の変性が抑制された。
これらの結果を用いてサポートベクターマシーン(SVM)応用し、検診チップに搭載する一塩基の違いのバリアント(SNP)とコピー数の違いのバリアント(CNV)の組み合わせを含めた緑内障統合的診断アルゴリズムを応用した判別率の結果から、PEGでは30SNPと5CNVを検診チップに搭載するバリアントの組合せを決定した。落屑緑内障で判別率81.5%(感度92.5%、特異度69.7%)が認められた。
また緑内障患者群において高頻度で見つかったグルタミン酸取り込み活性を低下させるSLC1A3の2種類のrare variants (A169G, A329T)を再現したノックインモデルで作成したマウスの網膜を解析し、A169Gノックインマウスの網膜神経節細胞の数が、野生型より約20%減少していた。網膜におけるSLC1A3(A169G)の発現は、エクソン4のスキップによるnonsense-mediated mRNA decayにより半分に減少した。また、arundic acidが網膜におけるSLC1A3の転写を亢進させ、発現量を増加させることおよびarundci acidを投与することにより、GLASTへテロマウスの網膜神経節細胞の変性が抑制された。
結論
緑内障発症リスクを判定する検診チップの実用化に向けて、PEGに関連する多数のSNPとCNVの候補バリアントの中から適切に選択することで、高い判別率を得ることが明らかになった。
またグルタミン酸取り込み活性を低下させるSLC1A3の2種類のrare variants (A169G, A329T)の解析からSLC1A3の発現を増加させるarundic acidが新規緑内障治療薬の候補として考えられた。
またグルタミン酸取り込み活性を低下させるSLC1A3の2種類のrare variants (A169G, A329T)の解析からSLC1A3の発現を増加させるarundic acidが新規緑内障治療薬の候補として考えられた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-