発達障害児とその家族に対する地域特性に応じた継続的な支援の実施と評価

文献情報

文献番号
201419012A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害児とその家族に対する地域特性に応じた継続的な支援の実施と評価
課題番号
H25-身体・知的-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 康夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)
  • 大澤 多美子(浅田病院)
  • 高橋 脩(豊田市こども発達センター)
  • 大庭 健一(宮崎市総合発達支援センター)
  • 高橋 和俊(おしま地域療育センター)
  • 原田 謙(長野県立こころの医療センター駒ヶ根)
  • 関 正樹(大湫病院)
  • 山下 洋(九州大学病院)
  • 米山 明(心身障害児総合医療療育センター)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
  • 内山 登紀夫(福島大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は,特性の異なるいくつかの地方自治体を選び,3年間でそれぞれの地域における発達障害の支援ニーズの実態の把握を行うとともに,地域の特性に応じた発達障害の支援システムの現状を調査し,具体的な地域支援のあり方についてのモデルを示すことを目的とする。また,地域特性による相違点と共通点の両者に配慮した標準モデルを呈示するための評価指標についても検討する。
 今年度は,地域の特性に応じた発達障害の支援システムの横断的比較検討を行い,地域特性による相違点と共通点について検討することを目的とした。また,早期支援で活用可能な評価指標については,米国で開発された自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期診断を行う際の診断用ツールBISCUITの日本語版の信頼性・妥当性を検証することを目的とした。
研究方法
 地域特性の異なる地方自治体における発達障害の支援の実態と支援ニーズの把握を行うため,一定の制度で発達障害の支援ニーズを集約的に把握できる体制と専門医がすでにいる地域を選び,そこに関わる医師が分担研究者(一部,研究協力者)として研究を行った。
 初年度に引き続いて参加したのは,政令指定都市である横浜市と広島市,中核市である豊田市,函館市,宮崎市,特例市である松本市,人口10万人前後の市である多治見市と糸島市,人口5万人弱の市である山梨市と瑞浪市であった。これらに加えて,政令指定都市の検討を深めるために福岡市,東京都の特別区から板橋区,小規模市でありかつ震災後の復興支援との関連も検討するために南相馬市が新たに加わった。
1.地域特性に関する調査
 全国の自治体を「政令指定都市」,「中核市・特例市・特別区」,「小規模市」,「小規模町村」の4群に分け,群ごとの実情に合わせて調査した。

2.発達障害の支援ニーズに関する調査
 実施可能な地域では昨年度と同じコホートにおける発達障害の発声及び有病率の継時的変化の調査と,昨年度の対象の1学年下である平成26年度の小学1年生の調査を,昨年度と同じ研究デザインで行った。

3.標準的な評価指標に関する研究
 BISCUITに関する信頼性・妥当性の研究を行った。
結果と考察
1.地域特性に関する調査
 政令指定都市では,横浜市,広島市,福岡市のいずれも人口20~50万人あたり1か所の診療所を付設した福祉型児童発達支援センターが稼働しており,基本的には福祉制度を活用しているものの,医療もかなり密に関わっていた。
 全国の中核市を対象としたアンケート調査では,全43市ある中核市のうち32市(74.4%)から回答を得た。この群が発達障害の支援体制に関しては最も異種性の高いグループであることが,今回のアンケート調査の結果で示された。この群の自治体に対してどのような指針を打ち出すのかが,本研究班の課題の中でも最も難しいテーマとなることが示唆された。
 小規模市では,診療所付設の福祉型児童発達支援センターを自前で建設することがきわめて難しい。しかし,地域の大学と連携したり,県の施策として圏域の発達障害児医療を担当する基幹病院を決めたり,あるいは県の中核となる発達障害者支援センターに診療機能を持たせたりすることによって,市単独では得にくい専門的な医療・福祉のサービスを確保することができれば,むしろきめ細かい支援が保障される可能性があるかもしれないことが示唆された。
 小規模町村へのアンケート調査では,そもそも子どもの出生自体がきわめて少ない自治体で,発達障害に関する知識のない支援者に対してどのように専門的な支援を提供するかが大きな課題となることが示された。

2. 発達障害の支援ニーズに関する調査
 医療機関と学校との両者が同じ対象で実態調査を行うことにより,診断の確定している子どもたちだけでなく,発達障害が疑われる子どもたちと診断確定例との関係についても求めることができた。また,発達障害全体の割合とICD-10による診断ごとの割合の両者が算出された。

3. 標準的な評価指標に関する研究
 今年度は,計46名のデータ収集を行った。今後,non ASD群のリクルートも含め,研究参加者を増やし,収束的妥当性の検証および弁別的妥当性の検証を行っていく予定である。
結論
 発達障害の支援ニーズは,地域特性によらずほとんどの地域で学校では生徒の1割前後に見られる。医療体制が整備されれば,その多くは就学前に診断可能であるが,診断時期が小学校入学後となるケースも存在するため,幼児期から学齢期にかけて幅広く対応できる支援体制が必要である。
 最終年度である平成27年度には,地域特性に応じた発達障害の支援に関するガイドラインを作成する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419012Z