文献情報
文献番号
201418008A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模疫学調査による、認知症の発症促進因子および抑制因子の検索に関する研究
課題番号
H25-認知症-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(名古屋学芸大学 大学院栄養科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 大塚 礼(独立行政法人 国立長寿医療研究センター)
- 安藤 富士子(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
- 島田 裕之(独立行政法人 国立長寿医療研究センター)
- 吉田 英世(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)
- 森本 茂人(金沢医科大学 高齢医学)
- 中川 正法(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
26,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では大規模な疫学調査データを用い認知症及び認知機能障害の発症促進因子・抑制因子を明らかにし、中高年期における認知症予防、認知機能の維持のための新たなストラテジーの開発を目指す。
研究方法
無作為抽出された地域住民を対象とした大規模な疫学調査データを用い認知症及び認知機能障害の発症促進因子・抑制因子を明らかにしていく基幹コホート研究、その結果との比較検証を行う検証コホート研究及び予防的介入研究の対象者総計2万人を超える3つの研究を実施した。
結果と考察
1.基幹コホート研究(NILS-LSA)
1)NILS-LSAデータ整備:NILS-LSAは平成24年度、第7次調査で学際的調査は終了した。今年度は前年度に引き続いて第7次調査のデータ整備を行った。調査内容及び性年齢別の平均値などはホームページに掲載し、その内容を修正・整備した。
2)認知機能追跡調査:H25年度には認知症及び認知機能に関する調査を中心としたNILS-LSAの追跡調査の準備を半年間かけて進め、H25年10月より週3日ないし4日、1日6名で、年間1,000名の検査を開始した。H27年度には追跡調査対象者の検査を終了する予定である。検査項目は頭部MRI、既往歴、生活習慣、認知機能検査、握力、歩行速度などである。H27年2月末現在で1,269人の調査を終了した。
3)認知機能障害の発症促進因子・抑制因子:第7次調査までのデータを用いた縦断的な検討を行った。健診項目の検討では、60歳代群では血液検査のAST・ALT・空腹時インスリン・遊離T3の高値、頭部MRI検査でのPVH所見、脳室拡大所見、自覚的健康度が悪いことが危険因子であった。70歳以上群では血清アルブミン・マグネシウムの低値、空腹時インスリン・シアル酸の高値、PVH所見が危険因子として確認された。また認知機能の加齢変化には、教育歴の影響が大きく、認知機能のリザーブが認知症の予防に有用なことなどを明らかにした。遺伝的素因として、APOE遺伝子多型が知能の加齢変化に及ぼす影響を検討した。成人知能検査WAIS-R-SF知識、符号得点はAPOEε4保有者では60歳前後から非保有者より強く低下することが示された。食事・栄養では乳類摂取量はリスクを抑制しうる可能性が示された。また短鎖および中鎖脂肪酸摂取は認知機能得点低下リスクを抑制しうる可能性が示された。動物性食品由来のプロリン摂取量が多い群では少ない群に比して10年間での知識獲得が多かった。難聴があった高齢者では難聴がない者よりも12年間での知能の低下は有意に大きかった。同様の結果がMMSEを用いた認知機能障害での解析でも得られた。
2.検証コホート研究・予防介入研究
都市近郊住民コホート研究では、55歳以上の高齢者9,696名で基本チェックリストを実施し、軽度認知機能低下(MCI)との関連をみたところ、判定個数が多いほどMCIとの関係は強くなる傾向が認められ、基本チェックリストの判定結果をMCI判定のための補助として用いる可能性が示された。離島および過疎地域住民コホートでは神経心理調査でMMSEでは検出できない早期の注意・遂行機能の低下を検出することができた。H27年度はクラスターランダム化比較試験(cRCT)にて行動変容の教育による予防介入効果をみる予定である。農山村地域住民コホートの10年間の追跡データで知的能動性が非自立であることがその後の認知機能低下の要因であることが示された。さらに認知機能低下の抑制因子は、牛乳の摂取頻度が高いこと、趣味をよく行うことであり、一方、認知機能低下の促進因子としては、総コレステロールが低いこと、喫煙をすること、睡眠時間が長いことが挙げられた。 地域行政コホートでは、認知症介護予防対象者には生活機能基本チェックシートの「認知機能低下(>1/3)」例がふさわしいこと、認知症による要支援要介護認定のうち相当数が糖尿病治療例のうちHbA1c<6.0%に至る過治療に起因する可能性があることがわかった。
1)NILS-LSAデータ整備:NILS-LSAは平成24年度、第7次調査で学際的調査は終了した。今年度は前年度に引き続いて第7次調査のデータ整備を行った。調査内容及び性年齢別の平均値などはホームページに掲載し、その内容を修正・整備した。
2)認知機能追跡調査:H25年度には認知症及び認知機能に関する調査を中心としたNILS-LSAの追跡調査の準備を半年間かけて進め、H25年10月より週3日ないし4日、1日6名で、年間1,000名の検査を開始した。H27年度には追跡調査対象者の検査を終了する予定である。検査項目は頭部MRI、既往歴、生活習慣、認知機能検査、握力、歩行速度などである。H27年2月末現在で1,269人の調査を終了した。
3)認知機能障害の発症促進因子・抑制因子:第7次調査までのデータを用いた縦断的な検討を行った。健診項目の検討では、60歳代群では血液検査のAST・ALT・空腹時インスリン・遊離T3の高値、頭部MRI検査でのPVH所見、脳室拡大所見、自覚的健康度が悪いことが危険因子であった。70歳以上群では血清アルブミン・マグネシウムの低値、空腹時インスリン・シアル酸の高値、PVH所見が危険因子として確認された。また認知機能の加齢変化には、教育歴の影響が大きく、認知機能のリザーブが認知症の予防に有用なことなどを明らかにした。遺伝的素因として、APOE遺伝子多型が知能の加齢変化に及ぼす影響を検討した。成人知能検査WAIS-R-SF知識、符号得点はAPOEε4保有者では60歳前後から非保有者より強く低下することが示された。食事・栄養では乳類摂取量はリスクを抑制しうる可能性が示された。また短鎖および中鎖脂肪酸摂取は認知機能得点低下リスクを抑制しうる可能性が示された。動物性食品由来のプロリン摂取量が多い群では少ない群に比して10年間での知識獲得が多かった。難聴があった高齢者では難聴がない者よりも12年間での知能の低下は有意に大きかった。同様の結果がMMSEを用いた認知機能障害での解析でも得られた。
2.検証コホート研究・予防介入研究
都市近郊住民コホート研究では、55歳以上の高齢者9,696名で基本チェックリストを実施し、軽度認知機能低下(MCI)との関連をみたところ、判定個数が多いほどMCIとの関係は強くなる傾向が認められ、基本チェックリストの判定結果をMCI判定のための補助として用いる可能性が示された。離島および過疎地域住民コホートでは神経心理調査でMMSEでは検出できない早期の注意・遂行機能の低下を検出することができた。H27年度はクラスターランダム化比較試験(cRCT)にて行動変容の教育による予防介入効果をみる予定である。農山村地域住民コホートの10年間の追跡データで知的能動性が非自立であることがその後の認知機能低下の要因であることが示された。さらに認知機能低下の抑制因子は、牛乳の摂取頻度が高いこと、趣味をよく行うことであり、一方、認知機能低下の促進因子としては、総コレステロールが低いこと、喫煙をすること、睡眠時間が長いことが挙げられた。 地域行政コホートでは、認知症介護予防対象者には生活機能基本チェックシートの「認知機能低下(>1/3)」例がふさわしいこと、認知症による要支援要介護認定のうち相当数が糖尿病治療例のうちHbA1c<6.0%に至る過治療に起因する可能性があることがわかった。
結論
認知症発症を予測しうる医学的要因の網羅的解析では、前期高齢者と後期高齢者とでは危険因子が異なり、後期高齢者では血清アルブミン・マグネシウム低値、空腹時インスリン・シアル酸高値、脳白質病変が認知症発症の発症促進因子であることが明らかになった。認知症との関係が報告されているAPOE遺伝子多型と知能の加齢変化との間にも関係があることや動物性食品由来のプロリンが中年期の知識獲得に有用であること、高齢女性では血清亜鉛が高いことが認知機能障害の予防となること、高齢者の知能の低さがその後の死亡にも影響を与えること等も明らかになった。また、各地域でのコホート研究・予防的介入研究、地域行政データを用いた解析で認知症介護予防に直結した因子の解析を実施した。
公開日・更新日
公開日
2016-03-22
更新日
-