文献情報
文献番号
201417014A
報告書区分
総括
研究課題名
膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための研究:大規模住民コホート(LOCOMOスタディ)の追跡
課題番号
H25-長寿-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 典子(東京大学医学部附属病院 関節疾患総合研究講座)
研究分担者(所属機関)
- 中村 耕三(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
- 阿久根 徹 (国立障害者リハビリテーションセンター研究所(病院))
- 藤原 佐枝子(広島原爆障害対策協議会 健康管理・増進センター )
- 鈴木 隆雄(国立長寿医療研究センター研究所 )
- 吉田 英世 (東京都健康長寿医療センター )
- 大森 豪(新潟医療福祉大学 )
- 須藤 啓広(三重大学医学部 整形外科学)
- 西脇 祐司(東邦大学医学部 衛生学 )
- 吉田 宗人(和歌山県立医科大学医学部 整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
15,139,000円
研究者交替、所属機関変更
分担者2 阿久根徹先生の所属が、東京大学医学部附属病院 臨床運動器医学講座から、国立障害者リハビリテーションセンター研究所(病院)に変更となりました。(2014.7.1)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、膝痛、腰痛、並びにその原因疾患である変形性関節症や骨粗鬆症、骨粗鬆症による大腿骨頚部骨折、脊椎椎体骨折等の発生率、有病率の推移、予後などの疫学指標を確立し、危険因子を同定すること、さらに日常生活活動度(ADL)、生活の質(QOL)や要介護度との関係を検証し、エビデンスを解明することである。この目的を達成するために、本研究班では、平成20-24年度の厚生労働省科学研究費補助金助成(H20-長寿-一般-009)において構築した12,019人が参加する世界最大規模の運動器統合コホートの追跡調査を実施している。追跡調査の継続により、地域在住高齢者の要介護移行率を推定し、それに影響する要因を同定し、それらを精度良く予測する簡易ツールを作成し、地域保健の現場に応用し、将来の運動器疾患へのリスク評価に活用することを目指している。
研究方法
骨関節疾患を予防目的とした地域コホート研究のうち、大規模統合コホート統合データベース構築に参加したコホートは、東京1、和歌山、広島、三重、新潟、東京2、秋田、群馬の8地域コホートである。大規模コホートでベースラインデータ共通項目として統合し、さらに今後の追跡調査の際に、要介護度に加えて、身長や体重変化、転倒、栄養、QOL項目など共通の測定項目として追跡を行った。本年度は統合コホートにおいては、腰痛、膝痛の合併率とそれらの相互関連を明らかにした。加えて分担研究者が担当する各地域コホートでは、統合コホートでは得られない独自のアウトカムの設定を行い、引き続き追跡調査を行った。
結果と考察
地域住民12,019人のうち、膝痛と腰痛についていずれも情報を得ることができた9,046人(男性3,165人、女性6,241人)の解析から、膝痛と腰痛いずれも合併しているものの割合は12.2 % (男性10.9 %;女性12.8 %)であり、女性に有意に多かった(p<0.01)。この有病率を平成22年度国勢調査による性・年齢別人口比率を用いて計算すると、膝痛および腰痛を持つものは680万人(男性280万人、女性400万人)と推定された。次に膝痛・腰痛の合併の頻度について影響を及ぼしている要因をロジスティック回帰分析を用いて解析したところ、膝痛と腰痛の合併は女性に多く(女性, オッズ比1.40, 95%信頼区間 1.21-1.61, p<0.001)、年齢が高いこと (+1歳, 1.046, 1.038-1.054, p<0.001)、肥満(BMI +1kg/m2, 1.10, 1.08-1.12, p<0.001)、地域特性(田舎地域居住, 5.94, 4.88-7.23, p<0.001)が関連していることがわかった。
分担研究者が担当する各地域コホートでは、歩行速度低下の適切な判定のための2歩値の判断値、サルコペニア(筋肉減弱症)の頻度と中年期の運動経験の有無がの影響、中年期からの身長低下2cm以上で、要支援・要介護状態への進行のリスクが高いこと、身長低下の程度は死亡に影響を与える因子と考えられること、ロコモとメタボリックシンドロームと軽度認知障害の相互関連、腰痛、膝痛を有することは、ロコモの促進因子であること、ロコチェック7項目とKOAグレード、大腿四頭筋力との関連性、立脚歩行期のスラスト運動はKOAグレードによって増加したが、回旋運動では多彩な運動パターンが認められること、KOAの進行と軟骨代謝マーカーとの関連、Kellgren-Lawrence分類のGradeが高いと膝痛の割合が増加すること、膝痛・腰痛は生命予後に影響を与えていないこと、膝痛を有すると要介護になる割合が高いこと、膝関節の痛み、機能低下ともに将来の抑うつと関連していること、下位腰椎での椎間板変性+終板変化や、椎間板変性+終板変化+Schmorl結節では、有意に腰痛のリスクをあげることを明らかにした。
分担研究者が担当する各地域コホートでは、歩行速度低下の適切な判定のための2歩値の判断値、サルコペニア(筋肉減弱症)の頻度と中年期の運動経験の有無がの影響、中年期からの身長低下2cm以上で、要支援・要介護状態への進行のリスクが高いこと、身長低下の程度は死亡に影響を与える因子と考えられること、ロコモとメタボリックシンドロームと軽度認知障害の相互関連、腰痛、膝痛を有することは、ロコモの促進因子であること、ロコチェック7項目とKOAグレード、大腿四頭筋力との関連性、立脚歩行期のスラスト運動はKOAグレードによって増加したが、回旋運動では多彩な運動パターンが認められること、KOAの進行と軟骨代謝マーカーとの関連、Kellgren-Lawrence分類のGradeが高いと膝痛の割合が増加すること、膝痛・腰痛は生命予後に影響を与えていないこと、膝痛を有すると要介護になる割合が高いこと、膝関節の痛み、機能低下ともに将来の抑うつと関連していること、下位腰椎での椎間板変性+終板変化や、椎間板変性+終板変化+Schmorl結節では、有意に腰痛のリスクをあげることを明らかにした。
結論
地域住民12,019人のうち、膝痛と腰痛についていずれも情報を得ることができた9,046人(男性3,165人、女性6,241人)の解析から、膝痛と腰痛いずれも合併しているものの割合は12.2 % (男性10.9 %;女性12.8 %)であり、女性に多く、年齢が高いこと、肥満、地域特性が関連していることがわかった。さらに、分担研究者の地域コホート研究も含め、高齢者要介護予防のための多くの有益なエビデンスを得ることができた。
公開日・更新日
公開日
2017-10-03
更新日
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