脊柱靭帯骨化症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201415073A
報告書区分
総括
研究課題名
脊柱靭帯骨化症に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-038
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大川 淳(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 幹季(大阪労災病院 整形外科)
  • 内田 研造(福井大学 整形外科)
  • 川口 善治(富山大学 整形外科)
  • 山崎 正志(筑波大学 整形外科)
  • 中村 雅也(慶應義塾大学 整形外科)
  • 松本 守雄(慶應義塾大学 整形外科)
  • 竹下 克志(自治医科大学 整形外科)
  • 星地 亜都司(自治医科大学 整形外科)
  • 今釜 史郎(名古屋f大学 整形外科)
  • 松山 幸弘(浜松医科大学 整形外科)
  • 芳賀 信彦(東京大学 リハビリテーション科)
  • 森 幹士(滋賀医科大学 整形外科)
  • 吉田 宗人(和歌山県立医科大学 整形外科)
  • 藤原 奈佳子(愛知県立大学 看護学部)
  • 遠藤 直人(新潟大学 整形外科)
  • 小宮 節郎(鹿児島大学 整形外科)
  • 高畑 雅彦(北海道大学 整形外科)
  • 小澤 浩司(東北大学 整形外科)
  • 土屋 弘行(金沢大学 整形外科)
  • 種市 洋(独協医科大学 整形外科)
  • 山本 謙吾(東京医科大学 整形外科)
  • 渡辺 雅彦(東海大学 整形外科)
  • 藤林 俊介(京都大学 整形外科)
  • 田中 雅人(岡山大学 整形外科)
  • 田口 敏彦(山口大学 整形外科)
  • 中島 康晴(九州大学 整形外科)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 整形外科)
  • 吉井 俊貴(東京医科歯科大学 整形外科)
  • 波呂 浩孝(山梨大学 整形外科)
  • 国府田正雄(千葉大学 整形外科)
  • 石橋 恭之(弘前大学 整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊柱に靭帯骨化をおこす、後縦靱帯骨化症(OPLL)、黄色靭帯骨化症(OYL)、びまん性特発性骨増殖症(DISH)、進行性骨化性線維異形成症(FOP)の診断基準、重症度分類の作成、診療ガイドライン(GL)の作成、改訂を目標として、各疾患に対する多施設研究を中心に臨床研究を行う。疫学、診断、画像、治療、予後に関して、研究の結果得られる質の高い科学的根拠を蓄積し、次回の診療GL改訂に反映させることを目的としている。
研究方法
1)術中脊髄モニタリングの適切なアラームポイント設定、2)CTを用いた頸椎後縦靭帯骨化症における骨化巣の分類、3)びまん性特発性骨増殖症における脊椎損傷、4)頚椎後縦靱帯骨化症に対する新しい画像評価Diffusion Tensor Tractgraphy 、5)頚椎OPLL患者における転倒による症状悪化に対する手術の影響、6)胸椎OPLLの手術成績、7)FOP症状経過と身体機能など、多数の多施設研究projectを立ち上げ、科学的根拠を蓄積していく。
結果と考察
1)対象疾患は1636例で、True positiveは72例、false positiveは126例、False negativeは5例にあった。モニタリングの精度は感度94%、特異度92%、陽性的中率 36%、陰性的中率 99.6%、偽陽性率 8%、偽陰性率 6%であった。モニタリングで警告され、術後麻痺が出現したTrue positive症例は胸椎OPLLは 13例(18%)、頚椎OPLLは 4例( 6%)であった。
2)頸椎OPLLの骨化巣に対するCTを用いた新分類を、骨化巣の矢状面の厚みを2mm以上有するものとして作成した。新分類は汎用性を重視したA分類とすべての骨化巣の明示を試みたB分類から構成される。頚椎OPLL患者144例(男性90例、女性54例、平均年齢は67.5歳)を対象とし、分類案に基づいてそれぞれに7人の研究協力者がblindで評価を行い、検者間および検者内の一致率を分析した。検者間の一致率は0.43 ± 0.26であり、検者内は72.4 ± 8.8% (95%信頼区間 67.5-76.8)であった。A分類では54人(37.5%)が架橋型であった。またaxial分類では、102人が中央型であった。今後さらに全身の脊椎を撮影したCTにより、骨化巣の頻度、形態、臨床像を解析する方向性で研究を進めていく予定である。
3)先行研究の結果、本損傷は高齢者に多く、遅発性麻痺を発症する傾向があった。全例で脊椎前方要素の骨折を認め、後方要素損傷があるものは神経症状の悪化をきたす可能性が高かった。4)術後2年経過したOPLL患者21名の術前後の画像を比較すると、DTTでのTract Fiber Ratio (最狭窄部でのFiber数/C2高位のFiber数)が、JOA scoreと正の相関をなし、狭窄率とも密接に関わっていることが分かった。今後、3施設を加えて同様の研究を前向きに行い、DTTの有用性を検証する。5)データ集積中である。6)平均54歳の59例に対し、胸椎後方除圧固定術40例、後方固定術4例、後方除圧術6例で、後方侵入脊髄前方除圧術2例、前方除圧固定術1例が行われていた。術後麻痺悪化なし32例であったが、麻痺悪化(一過性含む)に23例(42%)に認め、このうち9例(16%)は追加手術を要した。この運動麻痺の回復に要した期間は平均2.7ヶ月であった。手術成績判定基準であるJOAスコアは術前平均4.4点が退院時5.4への改善にとどまっていたが、術後1年では8.0点まで更に改善していた。一過性にせよ、術後麻痺悪化例が少なからず存在し、今後も症例集積を継続して、悪化可能性の高い症例の特徴を明らかにする。7)患者12名(男5名、女7名、10~45歳)を対象とし、病状の内容と今までの変化、Health Assessment Questionnaire日本語版(JHAQ)を調査した。FOPの診断時年齢は平均5歳11ヶ月(6ヶ月~11歳5ヶ月)であり、年齢が上がるにつれて点数が高くなり、身体機能障害の関係が増悪していた。今後症例を集積し、異所性骨化出現前の診断を主たるターゲットとした診断基準の策定を目指す。
結論
難治性疾患政策研究事業として、靭帯庫化症調査研究班が新体制のもと発足した。多施設共同で、前向きの臨床データを集積することで質の高いエビデンスを得ることを目標としている。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415073Z