文献情報
文献番号
201415014A
報告書区分
総括
研究課題名
ミトコンドリア病に合併する高乳酸血症に対するピルビン酸ナトリウム治療法の開発研究-試薬からの希少疾病治療薬開発の試み-
課題番号
H24-難治等(難)-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
古賀 靖敏(久留米大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 田中 雅嗣(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 臨床検査科)
- 中田 和人(筑波大学 生物環境系)
- 村山 圭(千葉県こども病院 代謝科)
- 齋藤 伸治(名古屋市立大学院 医学研究科 新生児・小児医学分野)
- 大竹 明(埼玉医科大学 小児科)
- 藤井 克則(千葉大学大学院 医学研究院 小児病態学)
- 但馬 剛(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 小児科学)
- 佐伯 武頼(熊本大学 生命資源研究・支援センター 山村プロジェクト研究室)
- 山口 清次(島根大学 医学部小児科)
- 石井 亜紀子(筑波大学 医学医療系神経内科)
- 酒井 規夫(大阪大学大学院 医学系研究科小児科学)
- 藤井 達哉(滋賀県立小児保健医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
200,475,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高乳酸血症の病態を踏まえた治療薬は今だ世界に存在しない。本研究は、先天性高乳酸血症の病態を踏まえた新規治療薬の開発を日本から世界に発信する事が目的である。また、申請者はミトコンドリア病の新規バイオマーカー(GDF15)を発見し平成26年1月15日に特許申請した(特願2014-005391、 PCT/JP2015/50833)。この検査法を、診断ガイドラインのトップに据えるべく、体外診断薬の開発を同時に行い、PAの治療薬と合わせてグローバル展開を計画している。今年度は、健康成人男性にピルビン酸ナトリウムを投与し、1)単回投与時の安全性及び薬物動態、2)食事が薬物動態に及ぼす影響、3)反復投与時の忍容性、安全性及び薬物動態をそれぞれ評価した。
研究方法
平成26年3月より、Phase1試験(PLA001)を開始した。本治験は、日本人健康成人男性を対象としたランダム化二重盲検並行群間比較試験(単回 及び反復パート)とオープンラベルのクロスオーバー比較試験(食事の影響の評価パート)であり、目標被験者数を単回投与パート32名(1ステップあたり被験薬群6名、対照薬群2名)食事の影響の評価パート6名(空腹時投与先行群3名、食後投与先行群3名)反復投与パート21名(ステップ1 15名、ステップ2 6名)として実施した。薬物動態評価のために、治験薬投与後以下の方法でピルビン酸及び乳酸濃度を測定した。
(1) 単回投与、食事の影響の評価パート、(2) 反復投与パート
(1) 単回投与、食事の影響の評価パート、(2) 反復投与パート
結果と考察
Phase1試験(PLA001)の結果
(1) 薬物動態評価
単回投与では、用量0.08g/kg、0.17g/kg、0.33g/kg、0.66g/kg の公比2の4群で漸増、空腹時投与を実施した結果、AUC0-t とCmax は用量依存的に増加することを確認した。
食事の影響の評価では、0.17g/kg用量を空腹時及び食後に単回投与した結果、空腹時投与に比べ食後投与でAUC0-t 及びCmax は増大、tmax は短縮することが確認された。
反復投与では、0.5g/kg/day 及び1.0g/kg/day の分3、1日3回食後7日間投与した結果、両投与量群で、トラフ値の増加及び血漿中のピルビン酸の蓄積は認められなかった。
(2) 臨床薬理評価
単回投与パートで評価した、血漿中乳酸濃度の平均値推移及び血漿中乳酸濃度と血漿中ピルビン酸濃度L/P比推移に関しては、PYRNA投与群と対照薬投与群ともに同様の変化推移を示したことから、被験薬投与群の血漿中乳酸濃度推移が血漿中ピルビン酸濃度に与えた影響については明確にはならなかった。同様に、血漿中ケトン体濃度がPYRNA投与の影響によるものかどうかは明確にはならなかった。Na濃度、K濃度、C濃度に関しては、各ステップともに臨床上重要な変動は認められなかった。
反復投与パートで評価した、血漿中乳酸濃度の平均値推移ならびにL/P比は、7日間の連続投与期間をとおして重要な変動は認められなかった。以上より、健常被験者においては、PYRNA投与による解糖系賦活化の影響で血漿中乳酸濃度が異常変動することはなかった。ケトン体比、Na濃度、K濃度、C濃度に関しては、各ステップともに臨床上重要な変動は認められなかった。
(3) 安全性評価
胃腸障害(下痢)の発現が、PYRNAの用量に依存して増加する傾向が認められた。
単回投与では、副作用(下痢)発現の頻度を基に、最大耐用量はステップ2のPYRNA 0.17g/kg、無毒性量はステップ1の0.08g/kgより下と考えられた。
食事の影響の評価では、PYRNA 0.17g/kgの空腹時単回投与及び食後単回投与ともに3名(50.0%)の胃腸障害(下痢)が発現したが、両群間でその他副作用発現には臨床的に問題となる重要な差は認められなかった。
反復投与では、胃腸障害(下痢)が用量依存的に発現増加する傾向が認められた。従って、薬物動態評価で血漿中ピルビン酸の蓄積は認められない点を考慮して、反復投与における最大耐用量はPYRNA 0.5g/kg/dayと考えられた。
臨床検査値及びバイタルサインに関しては、臨床上重要な変動は認められなかった。
(1) 薬物動態評価
単回投与では、用量0.08g/kg、0.17g/kg、0.33g/kg、0.66g/kg の公比2の4群で漸増、空腹時投与を実施した結果、AUC0-t とCmax は用量依存的に増加することを確認した。
食事の影響の評価では、0.17g/kg用量を空腹時及び食後に単回投与した結果、空腹時投与に比べ食後投与でAUC0-t 及びCmax は増大、tmax は短縮することが確認された。
反復投与では、0.5g/kg/day 及び1.0g/kg/day の分3、1日3回食後7日間投与した結果、両投与量群で、トラフ値の増加及び血漿中のピルビン酸の蓄積は認められなかった。
(2) 臨床薬理評価
単回投与パートで評価した、血漿中乳酸濃度の平均値推移及び血漿中乳酸濃度と血漿中ピルビン酸濃度L/P比推移に関しては、PYRNA投与群と対照薬投与群ともに同様の変化推移を示したことから、被験薬投与群の血漿中乳酸濃度推移が血漿中ピルビン酸濃度に与えた影響については明確にはならなかった。同様に、血漿中ケトン体濃度がPYRNA投与の影響によるものかどうかは明確にはならなかった。Na濃度、K濃度、C濃度に関しては、各ステップともに臨床上重要な変動は認められなかった。
反復投与パートで評価した、血漿中乳酸濃度の平均値推移ならびにL/P比は、7日間の連続投与期間をとおして重要な変動は認められなかった。以上より、健常被験者においては、PYRNA投与による解糖系賦活化の影響で血漿中乳酸濃度が異常変動することはなかった。ケトン体比、Na濃度、K濃度、C濃度に関しては、各ステップともに臨床上重要な変動は認められなかった。
(3) 安全性評価
胃腸障害(下痢)の発現が、PYRNAの用量に依存して増加する傾向が認められた。
単回投与では、副作用(下痢)発現の頻度を基に、最大耐用量はステップ2のPYRNA 0.17g/kg、無毒性量はステップ1の0.08g/kgより下と考えられた。
食事の影響の評価では、PYRNA 0.17g/kgの空腹時単回投与及び食後単回投与ともに3名(50.0%)の胃腸障害(下痢)が発現したが、両群間でその他副作用発現には臨床的に問題となる重要な差は認められなかった。
反復投与では、胃腸障害(下痢)が用量依存的に発現増加する傾向が認められた。従って、薬物動態評価で血漿中ピルビン酸の蓄積は認められない点を考慮して、反復投与における最大耐用量はPYRNA 0.5g/kg/dayと考えられた。
臨床検査値及びバイタルサインに関しては、臨床上重要な変動は認められなかった。
結論
薬物動態評価で血漿中ピルビン酸の蓄積は認められない点を考慮して、反復投与における最大耐用量はPYRNA 0.5g/kg/dayと考えられた。
健康危険情報:ナトリウム負荷以外は、特に大きな問題は診られなかった。
健康危険情報:ナトリウム負荷以外は、特に大きな問題は診られなかった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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