文献情報
文献番号
201415006A
報告書区分
総括
研究課題名
臓器移植・造血細胞移植後日和見感染症に対する有効かつ安全な多ウイルス特異的T細胞療法の開発と導入に関する研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-105
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 聡(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター分子療法分野)
- 高橋義行(名古屋大学 医学部小児科 )
- 立川 愛(国立感染症研究所 エイズ研究センター第二室)
- 服部元史(東京女子医科大学 腎臓小児科)
- 水田耕一(自治医科大学 移植外科)
- 長村文孝(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター 先端医療開発推進分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,003,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の最終目的は多ウイルス特異的T細胞療法の臨床展開である。本年度は特に、3ウイルス特異的T細胞の製品標準規格策定、3ウイルス特異的T細胞療法のプロトコル作成と臨床応用に向けての培養条件改変、臓器移植後のウイルス感染症の把握、7ウイルス(EBV,CMV,HHV6,ADV,BKV, JCV, VZV)15抗原特異的T細胞調製、第一世代特異的T細胞の臨床研究を目標に検討を進める
研究方法
1.T細胞の特性解析:異なるHLAを有するEBV-LCLを用意した。ペプチドをパルスして、用意したT細胞と培養し、IFNγ産生を検討した。アロ反応性ではPHAブラストを用いて、特異的T細胞と培養して、CFSEによる細胞増殖、Cr51遊離試験における細胞傷害活性を検討した。
2.微生物検査:開発した高感度体系的微生物検査法(PCR)を用いて検討した。本法は調製した細胞、及び臓器移植前後の患者において、血液・尿を用いて検討した。
3.7ウイルス(EBV,CMV,HHV6,ADV,BKV, JCV, VZV)15抗原特異的T細胞調製では、抗原の種類を増やして、3ウイルス、5ウイルス特異的T細胞調製と同様のペプチド濃度、IL-4, IL-7濃度を用いて培養し、培養産物の特性を検討した。
4.第一世代特異的T細胞の臨床研究は名古屋大学医学部の倫理審査委員会を経て、標準治療抵抗性EBV感染症、CMV感染症に用い、経過を観察した。
2.微生物検査:開発した高感度体系的微生物検査法(PCR)を用いて検討した。本法は調製した細胞、及び臓器移植前後の患者において、血液・尿を用いて検討した。
3.7ウイルス(EBV,CMV,HHV6,ADV,BKV, JCV, VZV)15抗原特異的T細胞調製では、抗原の種類を増やして、3ウイルス、5ウイルス特異的T細胞調製と同様のペプチド濃度、IL-4, IL-7濃度を用いて培養し、培養産物の特性を検討した。
4.第一世代特異的T細胞の臨床研究は名古屋大学医学部の倫理審査委員会を経て、標準治療抵抗性EBV感染症、CMV感染症に用い、経過を観察した。
結果と考察
1.3ウイルス特異的T細胞の製品標準規格策定
51Cr遊離試験で、細胞傷害活性を評価する場合には、HLA完全不一致でも細胞傷害は認めない。一方、CFSEアッセイでは、フルマッチでは増殖を認めないが、2座不一致でも全不一致では、不一致数にかかわらずほぼ同程度に15-60%程度の細胞が増殖することが明らかになった。従って解析系としては細胞傷害アッセイが適切と考えられる。また発展的にMatrix-ELISPotを行い、CMV-pp65/IE1, EBV-EBNA1/LMP2/BZLF1, AdV-Pentonから198種類の候補OLPを決定し、さらに各OLPを抗原としてELISPot解析を行い、反応の見られたOLPを決定した。最終的にHLAに対応するペプチドが同定されれば、さらに簡便な特異的T細胞検証につながると考えられる。
2.3ウイルス特異的T細胞療法のプロトコル作成と臨床応用に向けての培養条件改変
まず、NS-A2を用いて作成したT細胞はTexMACSを用いて作成したT細胞と比較して遜色ないことが確認できた。容器については一貫してG-Rexを用いた。さらに、具体的な調製試薬や培地などを入れ込む形で、標準作業手順書兼記録書を作成した。
3. 臓器移植後のウイルス感染症の把握
小児腎移植患者9名では、血液検体で5名でHHV7を、4名でCMVを、3名でHHV6を、2名でBKVを検出した。6名では同時期に複数のウイルスが検出された。尿では、7名でBKVを、6名でJCVを、3名でCMVを検出した。5名では複数のウイルスが検出された。
4.7ウイルス15抗原特異的T細胞調製
通常量のペプチド濃度、IL-4, IL-7濃度を用いて培養し、培養産物の特性を検討した。7ウイルス15抗原での作成では、3ウイルス・5ウイルス特異的T細胞に比して、より安定してT細胞を培養可能であることが明らかになった。各抗原に対するIFNγ産生能もほぼ同等であり、結果として総特異度は上昇することとなった。
5. 第一世代特異的T細胞の臨床研究
難治性CMV感染に対してCMV特異的CTLを3例に投与し、1例に有効で、1例が末梢血中CMV-DNAは消失したものの、その後CMV脳炎を発症し、亡くなった。リツキシマブ抵抗性CD20陰性EBV-PTLD1例に対してEBV特異的CTLを投与し有効であった。
51Cr遊離試験で、細胞傷害活性を評価する場合には、HLA完全不一致でも細胞傷害は認めない。一方、CFSEアッセイでは、フルマッチでは増殖を認めないが、2座不一致でも全不一致では、不一致数にかかわらずほぼ同程度に15-60%程度の細胞が増殖することが明らかになった。従って解析系としては細胞傷害アッセイが適切と考えられる。また発展的にMatrix-ELISPotを行い、CMV-pp65/IE1, EBV-EBNA1/LMP2/BZLF1, AdV-Pentonから198種類の候補OLPを決定し、さらに各OLPを抗原としてELISPot解析を行い、反応の見られたOLPを決定した。最終的にHLAに対応するペプチドが同定されれば、さらに簡便な特異的T細胞検証につながると考えられる。
2.3ウイルス特異的T細胞療法のプロトコル作成と臨床応用に向けての培養条件改変
まず、NS-A2を用いて作成したT細胞はTexMACSを用いて作成したT細胞と比較して遜色ないことが確認できた。容器については一貫してG-Rexを用いた。さらに、具体的な調製試薬や培地などを入れ込む形で、標準作業手順書兼記録書を作成した。
3. 臓器移植後のウイルス感染症の把握
小児腎移植患者9名では、血液検体で5名でHHV7を、4名でCMVを、3名でHHV6を、2名でBKVを検出した。6名では同時期に複数のウイルスが検出された。尿では、7名でBKVを、6名でJCVを、3名でCMVを検出した。5名では複数のウイルスが検出された。
4.7ウイルス15抗原特異的T細胞調製
通常量のペプチド濃度、IL-4, IL-7濃度を用いて培養し、培養産物の特性を検討した。7ウイルス15抗原での作成では、3ウイルス・5ウイルス特異的T細胞に比して、より安定してT細胞を培養可能であることが明らかになった。各抗原に対するIFNγ産生能もほぼ同等であり、結果として総特異度は上昇することとなった。
5. 第一世代特異的T細胞の臨床研究
難治性CMV感染に対してCMV特異的CTLを3例に投与し、1例に有効で、1例が末梢血中CMV-DNAは消失したものの、その後CMV脳炎を発症し、亡くなった。リツキシマブ抵抗性CD20陰性EBV-PTLD1例に対してEBV特異的CTLを投与し有効であった。
結論
3ウイルス特異的、7ウイルス特異的T細胞の調製の検証が進み、無血清培地、ガス透過性フラスコを用いて、7名以上の健常人ドナーにて、その特性、細胞傷害活性を明らかにした。細胞規格として、特定のHLAに拘束された特異的T細胞の存在を明らかにできる系を作成し、アロ反応性を鋭敏に評価できる系を確立した。それぞれのHLAに対する各ウイルス抗原のエピトープについても検討を行った。将来的により確実で安全な治療法に結びつける方策として期待される。来年度の臨床試験に向け、再生医療新法のもとで細胞培養や患者への投与が行えるよう製品標準書を策定し、標準作業手順書案を作成した。来年度の細胞治療センター改修工事後の臨床研究開始に向けて道筋がついた。臓器移植後のウイルス動態についてもデータが蓄積しつつあり、先行する単ウイルス特異的T細胞治療はその有効性が明らかになりつつある。
公開日・更新日
公開日
2015-06-11
更新日
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