大規模災害における循環器病診療の体制と手法の確立に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
201412021A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害における循環器病診療の体制と手法の確立に関する多施設共同研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 博昭(独立行政法人国立循環器病研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 下川 宏明(東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学分野)
  • 中村 元行(岩手医科大学内科学講座 心血管・腎・内分泌内科分野)
  • 森野 禎浩(岩手医科大学内科学講座 循環器内科分野)
  • 竹石 恭知(福島県立医科大学医学部 循環器・血液内科学講座)
  • 平田 健一(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防健診部、研究開発基盤センター)
  • 安田 聡(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 小川 久雄(熊本大学大学院生命科学研究部、国立循環器病研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1) 東日本大震災前後の循環器疾患の発症状況を明らかにすること、2) 震度や津波が循環器疾患の発症と関連があるかどうかを探索的に検討すること、3) 阪神淡路大震災との比較を行うこと によって 大規模災害における循環器病診療体制と手法を確立することにある。
研究方法
東日本大震災については2008年から2012年の岩手県、宮城県、福島県の131の市町村、阪神・淡路大震災については1992年から1996年の兵庫県、大阪府、京都府の220の市町村における人口動態調査死亡票のデータを用いた。震災日時を起点として、1ヶ月ごとの心筋梗塞、脳卒中による死亡率を算出し、震災年と同月の死亡率を比較した。心筋梗塞・脳卒中による死亡と震度との関連を検討するために、市町村レベルの解析を行った。震災以前の過去3年の各市町村の人口を基準人口とし、震災後2週間における標準化死亡比(SMR)を算出し、結果変数をSMRが2以上で分けた2群(市町村)、説明変数を震度としたMantel-Haenszel 検定を実施した。東日本大震災の分析には320,347例、阪神・淡路大震災の分析には592,670例の死亡票のデータを用いた。また慢性心不全及びその高リスク患者3620名を対象として郵送によるアンケート調査を実施した。精神的ストレスは、世界標準として使用されているIES-Rスコアを用いて評価した。
結果と考察
2008年~2012年における岩手県、宮城県、福島県の総死亡者数は320,348件であった。震災のあった2011年と他の年を比べると3県とも死亡者数は増加しており、特に宮城県では死亡者数の増加が大きかった。月ごとの心筋梗塞による死亡率は、震災後1ヶ月間において過去3年と比べて有意に増えていた(incident rate ratio [IRR]=1.39, 95% confidence interval [95%CI], 1.13 - 1.58)。脳卒中による死亡も同様に、震災後1ヶ月間の死亡は過去3年と比べて有意に増加していた(IRR=1.42, 95%CI, 1.29 - 1.57)。脳卒中による死亡増加は、震災後2ヶ月まで遷延していた。震度や津波、放射線量と心筋梗塞・脳卒中による死亡増加の探索的な検討には、それぞれの被害地域にて層別したポワソン回帰分析を行った。その結果、震度は心筋梗塞、脳卒中とも震度が6以上の地域で死亡増加が大きかった。一方、津波に関しては、浸水がある地域では特に脳卒中による死亡が増加していた。放射線量については、1.0mSv以上での心筋梗塞、脳卒中による死亡増加はみられなかった。
阪神・淡路大震災前後の心血管疾患による死亡について被災三県(兵庫県、大阪府、京都府)の人口動態調査死亡票より評価した。震災が起こった1995年1月の心筋梗塞による死亡者数は968人に対し、1992年の同月は347人であり、2.8倍多かった。脳卒中についても1992年1月が981人に対し、1995年1月は1974人と死亡者数は2.0倍増加していた。さらに震度との関係について検討したところ、心筋梗塞については標準化死亡比が2以上の割合は震災2週間後において震度が大きかった市町村で多い傾向を示し、さらに震災9ヵ月後でもその差は有意であった。比較的長期にわたり循環器疾患に震災による影響が残存していた理由として、震災によるストレスに加え震災後の診療体制に起因していた可能性が示唆された。
東日本大震災による心血管疾患患者の心的外傷後ストレス障害の有病率やその特徴についても評価した。IES-R日本版25点以上を「心的外傷後ストレス反応/障害(Posttraumatic stress disorder;PTSD)」と定義したところ、14.8%がPTSDと判定された。地震・津波の両方による被害を受けた症例および福島第一原発30km以内の病院に通う症例においてPTSDの頻度は特に高く、それ以外の症例では震度が大きい地域の症例ほどPTSDの頻度が高かった。またPTSD保有は独立した予後増悪因子であった。

結論
震災直後には心筋梗塞および脳卒中による死亡が増加しており、その対策を講じる必要がある。また東日本大震災後には高頻度に心的外傷後ストレス障害が認められ、循環器疾患の予後不良因子であったことから、今後症例背景を考慮したPTSD対策が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201412021B
報告書区分
総合
研究課題名
大規模災害における循環器病診療の体制と手法の確立に関する多施設共同研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 博昭(独立行政法人国立循環器病研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 下川 宏明(東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
  • 中村 元行(岩手医科大学内科学講座 心血管・腎・内分泌内科分野)
  • 森野 禎浩(岩手医科大学内科学講座 循環器内科分野)
  • 竹石 恭知(福島県立医科大学医学部 循環器・血液内科学講座)
  • 平田 健一(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防健診部、研究開発基盤センター)
  • 安田 聡(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 小川 久雄(熊本大学大学院生命科学研究部、国立循環器病研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1) 東日本大震災前後の循環器疾患の発症状況を明らかにすること、2) 震度や津波が循環器疾患の発症と関連があるかどうかを探索的に検討すること、3) 阪神淡路大震災との比較を行うこと によって 大規模災害における循環器病診療体制と手法を確立することにある。
研究方法
標的母集団は、宮城県、岩手県、福島県に在住の全住民である。疾患を把握するためのデータは、消防による搬送データベース、人口動態調査死亡票、拠点病院にて実施されている心筋梗塞発症登録を用いた。データは2008年(東日本大震災前3年間)から2014年(震災後3年)までのものを使用した。なお、消防による救急搬送データベースは全国のデータを用いる。また、阪神淡路大震災との比較のため、人口動態調査死亡票は1992年から1997年の兵庫、大阪、京都のデータを用いた。本研究は後向き観察研究であり、主たるアウトカムは、循環器疾患の発症・死亡である。
結果と考察
死亡票データ解析:心筋梗塞死亡は、東日本大震災後1ヶ月間において過去3年と比べて有意に増えていた(IRR=1.39, 95%CI, 1.13 - 1.58)。脳卒中による死亡も同様に、震災後1ヶ月間の死亡は過去3年と比べて有意に増加していた(IRR=1.42, 95%CI, 1.29 - 1.57)。脳卒中による死亡増加は、震災後2ヶ月まで遷延していた。標準化死亡比SMRを用いて心筋梗塞による死亡と震度との関連を検討した。震災後2週間では、2008年~2010年に比べて2011年心筋梗塞による死亡が増えている自治体の割合は、震度が高くなるにつれて増えていたが、震災後9ヶ月間の心筋梗塞による死亡は震度の強さとは関連が見られなかった。SMRが2倍の自治体の割合と震度の関連を検討した場合も、同様であった。一方、脳卒中による死亡については、震災後2週間、9ヶ月間とも震度の強さと関連が見られた。震度や津波、放射線量と心筋梗塞・脳卒中による死亡増加の探索的な検討には、それぞれの被害地域にて層別したポワソン回帰分析を行った。その結果、震度は心筋梗塞、脳卒中とも震度が6以上の地域で死亡増加が大きかった。一方、津波に関しては、浸水がある地域では特に脳卒中による死亡が増加していた。放射線量については、1.0mSv以上での心筋梗塞、脳卒中による死亡増加は認められなかった。
震災ストレス調査:東日本大震災による心血管疾患患者の心的外傷後ストレス障害の有病率やその特徴についてIES-R-J を用いて評価した。IES-R 25点以上を「心的外傷後ストPTSDと判定された。地震・津波の両方による被害を受けた症例および福島第一原発30km以内の病院に通う症例においてPTSDの頻度は特に高く、それ以外の症例では震度が大きい地域の症例ほどPTSDの頻度が高かった。またPTSD保有は独立した予後増悪因子であった。
阪神・淡路大震災との比較:阪神・淡路大震災被災三県(兵庫県、大阪府、京都府)の震災前後の心血管疾患による死亡を人口動態調査死亡票より評価した。1992年~1997年において、各年1月17日~12月16日の兵庫県、大阪府、京都府の総死亡者数を比較したところ、震災発症年である1995年が126,964名と最も多かった。心筋梗塞による死亡については1992年をリファレンスとすると、震災が発症した1995年以降で有意に増加していた。さらに1995年1月の心筋梗塞による死亡者数は968人に対し、1992年の同月は347人であり、2.8倍多かった。脳梗塞による死亡についても1992年をリファレンスとすると、震災が発症した1995年以降で有意に増加していた。また1992年1月が981人に対し、1995年1月は1974人と脳卒中による死亡者数は2.0倍増加していた。阪神・淡路大震災当時、震度計で震度を随時測定していた自治体が少なく、データの精度に問題はあるものの、心筋梗塞についてSMRが2以上の割合は震災2週間後では震度が大きかった市町村で多い傾向を示し、さらに震災9ヵ月後ではその差は有意となった。一方、脳卒中に関してはSMRによる検討では震災2週間および9ヵ月後のいずれにおいても震度との関連は認められなかった。
結論
震災直後には心筋梗塞および脳卒中による死亡が増加しており、その対策を講じる必要がある。また東日本大震災後には高頻度に心的外傷後ストレス障害が認められ、循環器疾患の予後不良因子であったことから、今後症例背景を考慮した対策が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201412021C

収支報告書

文献番号
201412021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,300,000円
(2)補助金確定額
12,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,353,557円
人件費・謝金 2,793,821円
旅費 2,175,210円
その他 1,151,970円
間接経費 2,830,000円
合計 12,304,558円

備考

備考
自己資金 4,394円 利息 164円

公開日・更新日

公開日
2015-10-16
更新日
-