難治性がんに対するがん幹細胞標的ペプチドワクチン療法の開発

文献情報

文献番号
201411030A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性がんに対するがん幹細胞標的ペプチドワクチン療法の開発
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 昇志(札幌医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥越 俊彦(札幌医科大学 医学部)
  • 平田 公一(札幌医科大学 医学部)
  • 水口 徹(札幌医科大学 医学部)
  • 島 宏彰(札幌医科大学 医学部)
  • 釣田 義一郎(東京大学医科学研究所)
  • 安井 寛(東京大学医科学研究所)
  • 和田 聡(神奈川県立がんセンター)
  • 松本 美佐子(北海道大学)
  • 杉田 修(北海道大学)
  • 田村 保明(北海道大学)
  • 廣橋 良彦(札幌医科大学 医学部)
  • 塚原 智英(札幌医科大学 医学部)
  • 金関 貴幸(札幌医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
174,727,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 H25年10月より前期第2相試験を開始。対象疾患を進行膵臓がんに絞り、SVN-2B・インターフェロン併用投与の有効性を検証する目的で無作為化二重盲検3群間比較試験を実施している。本年度は、第2相試験をできるだけ早期に終了し、製薬企業へ導出することを目標とした。
 分担研究としては、(1) GMP治験薬製造、(2) 治験実施研究、(3) 免疫モニタリングおよび病理組織検査、(4) OR7C1ペプチド前臨床研究、(5) アジュバンド開発研究、をそれぞれ分担して実施した。
研究方法
 本研究では次に挙げるI~Vの課題に対し分担研究組織で取り組む。
I.SVN-2Bペプチドワクチンの医師主導治験実施研究
II.GMP治験薬製造
III.ワクチン被験者の腫瘍病理組織検査と免疫モニタリング解析
IV.OR7C1ペプチドワクチンの前臨床試験と非臨床POC取得
V.ペプチドワクチンの新規RNAアジュバント開発
結果と考察
結果
I.SVN-2Bペプチドワクチン医師主導治験実施研究
(1)神奈川県立がんセンターの追加
 治験早期終了を目指して、第3番目の治験実施機関として、H26.10月より、神奈川県立がんセンターが追加された。
(2)被験者登録数の推移
 H27.3月までの被験者登録数は54例、治験薬投与症例数は48例に達した。
(3)SAE発生状況
 治験薬との因果関係のあるSAEの発生はない。
(4)定期治験進捗会議の開催
(5)症例検討会議と合同進捗会議の開催
  2-3ヵ月毎に症例検討会議と合同進捗会議を開催。H26年度は5回開催した。
(6)製薬企業との連携会議
 (株)東レの医薬事業部門担当者と、治験の進捗について連携会議を3回開催した。H26.5.27、H26.11.14、H27.3.25
(7)外部監査の実施
 信頼性保証のため、GCPに関する外部監査を実施した。
(8)統計解析計画書の策定
 第2相試験結果分析のための統計解析に関して計画書を策定した。

II.GMP治験薬製造
(1) GMPに準拠した施設・体制・手順書のもとに、SVN-2Bペプチド原薬の溶解、滅菌、濃度調整を行い、治験薬として製造した。この他に、ペプチドプラセボ薬、インターフェロン製剤(STI-01)、インターフェロンプラセボ薬、の各薬剤を製造し、各治験実施機関に搬送、低温管理を実施した。H26年度には3回の製造を実施した。
(2) GMP治験薬製造に関する外部監査を3回実施

III. 腫瘍病理組織検査と免疫モニタリング解析
(1) 被験者選択基準であるHLA遺伝子検査(簡易検査)と、腫瘍組織のSurvivinおよびHLA class I免疫組織検査を実施した。
(2) 治験薬投与前後の被験者末梢血リンパ球を凍結保存し、免疫モニタリング解析を実施した。

IV. OR7C1ペプチドワクチンの前臨床試験と非臨床POC取得
(1) OR7C1-A24ペプチドの溶解試験、安定性試験、CTL誘導試験を実施。
(2) OR7C1-A02/24ペプチドのCTL誘導試験を実施。

V. ペプチドワクチンの新規RNAアジュバント開発
 新規TLR3リガンドRNAアジュバンドARNAXの大量化学合成技術を開発し、合成ARNAXを用いて非臨床POCを取得した。さらに、poly I:Cと比較して、毒性や炎症作用が低減されていることが確認された。

考察
 神奈川県立がんセンターの追加によって被験者登録数が加速し、当初の計画より若干遅れるものの、H27年度第3四半期には治験が終了できる見込みである。
 治験登録された進行膵臓がん症例に関して、第1相試験と比較すると、第2相試験ではStage 4b症例が大部分を占め、登録時点における被験者PSが第1相試験よりも低い傾向が顕著である。登録時点でPSが良好であったとしても、治験薬投与開始後早期に全身状態が悪化し、SAEのために治験を中止せざるを得ない症例の頻度が高い。
 これまでの研究から、がんワクチンの効果が発現するのは少なくとも3回投与以後であることから、6週間以内の脱落は、治験薬の効果を正確に反映していないことが危惧される。今後、効果判定時期と基準の見直しが必要になると思われる。また、化学療法の前に試験できることが望まれる。
 北海道大学分担研究グループ松本らは、新規RNAアジュバントの開発に成功した。今後、ヒト細胞を用いたin vitro薬効試験および前臨床安全性試験を経て、治験に移行することを目指す。製薬企業との連携も必要である。
結論
 H27年度内のできるだけ早期に治験を終了し、H28年度に製薬企業へ導出できるよう、治験を継続・遂行する。

公開日・更新日

公開日
2015-09-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201411030B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性がんに対するがん幹細胞標的ペプチドワクチン療法の開発
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 昇志(札幌医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥越 俊彦(札幌医科大学 医学部)
  • 平田 公一(札幌医科大学 医学部)
  • 水口 徹(札幌医科大学 医学部)
  • 島 宏彰(札幌医科大学 医学部)
  • 今井 浩三(東京大学医科学研究所)
  • 釣田 義一郎(東京大学医科学研究所)
  • 安井 寛(東京大学医科学研究所)
  • 和田 聡(神奈川県立がんセンター)
  • 瀬谷 司(北海道大学)
  • 松本 美佐子(北海道大学)
  • 杉田 修(北海道大学)
  • 田村 保明(北海道大学)
  • 廣橋 良彦(札幌医科大学 医学部)
  • 塚原 智英(札幌医科大学 医学部)
  • 金関 貴幸(札幌医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、難治性がん、特に進行消化器がんに対する副作用が少なく、かつ延命効果が期待できるがんワクチン療法の第1相および第2相医師主導治験によって安全性と有効性を検証し、製薬企業へ導出することを目的とする。
研究方法
以下の課題に対し分担研究組織で取り組む。
(1) SVN-2Bペプチドワクチン医師主導治験の準備と実施
1.治験実施体制の準備
2.GMP治験薬製造
3.第1相試験の実施と総括
SVN-2Bワクチン第1相試験の概要
①治験課題名:有効な治療法のない進行消化器がん患者に対するSVN-2B単独投与の第Ⅰ相臨床試験
②主要評価項目:安全性、副次評価項目:免疫学的効果、腫瘍縮小効果
③治験薬投与群:A.0.3mg群、B.1.0mg群、C.3.0mg群
④試験方法:単施設非盲検無作為化比較試験
⑤対象患者と目標症例数:HLA-A24陽性の進行消化器がん患者計15例
4.第2相試験の実施
SVN-2Bワクチン第2相試験の概要
①治験課題名:有効な治療法のない進行膵臓がん患者におけるプラセボ、SVN-2B単独投与を対照としたインターフェロン併用療法の無作為化二重盲検群間比較試験
②主要評価項目:無増悪生存期間、副次評価項目:免疫学的効果、腫瘍縮小効果、安全性
③被験者群:A. インターフェロン併用群、B. SVN-2B単独群、C. プラセボ群
④試験方法:多施設二重盲検無作為化群間比較試験
⑤対象患者と目標症例数:HLA-A24陽性の進行膵臓がん患者計71例
(2)OR7C1がん幹細胞ワクチンの前臨床研究
(3)がん組織の病理学的解析
(4)免疫モニタリング解析とバイオマーカー探索
(5)新規アジュバント開発
結果と考察
結果
(1) SVN-2Bペプチドワクチン医師主導治験の準備と実施
①治験実施体制の確立と準備(H23-H24)
1. GMP原薬の委託製造
2. PMDA薬事戦略相談
3. GLP前臨床安全性試験
4. 治験薬品質・安定性試験
5. 治験薬概要書、治験実施計画書の作成
6. PMDA治験前相談
7. IRB審査
②第1相試験の実施
1.治験届け提出と試験開始
2.効果安全性評価委員会
3.症例登録終了
4.症例検討会
5.治験終了届け提出
③第1相試験の総括(H25-H26)
1. 安全性評価 薬剤と因果関係を示す重篤な有害事象は1例も認めなかった。
2. 有効性評価 抗腫瘍効果は、SD 8/15症例(病勢コントロール率53%)。ゲムシタビン不応性進行膵臓がん10例の全生存期間中央値は8.8ヵ月。SD症例6例でワクチン特異的CTLの上昇が認められた。テトラマー陽性T細胞上昇値は1.0mg投与群で最も高く、第2相試験はこの投与量で実施することとなった。
④第2相試験の準備と実施
1.PMDA薬事戦略事前相談 (H24/12, H25/4)と対面助言(H25/7)
2.各実施機関におけるIRB審査 (H25/9)
3.治験届け提出(H25/10)と試験開始(H25/10)
4.治験実施機関の追加(H26/10)
5.被験者登録数 H27/3までの被験者登録数は54例。
6. SAE発生状況 治験薬と因果関係のあるSAEの発生はない。
7.治験進捗会議、症例検討会議
8.外部監査の実施
9.統計解析計画書の策定
⑤製薬企業との連携会議
⑥GMP治験薬製造と監査
(2)OR7C1ペプチドの前臨床研究
1. GMP原薬の委託製造
2. 薬理薬効試験
3. 抗原発現評価系の確立
(3)がん組織の病理学的解析
1. 腫瘍のHLAと抗原蛋白発現解析
2. がん組織浸潤免疫細胞の解析
(4)免疫モニタリング解析とバイオマーカー探索
1. サロゲートマーカーと抗腫瘍効果予測マーカーの探索
2. コンパニオン診断薬開発
3. 被験者のワクチン特異的T細胞応答解析
(5)新規アジュバント開発
1. 合成核酸のスクリーニング
2. CTL誘導活性試験と腫瘍抑制試験
3. 毒性試験
4. 化学合成法の開発研究

考察
第2相試験開始からH26/12までの間、被験者の1次スクリーニング数は771名に達したにもかかわらず、登録まで至った症例数は51名(6.6%)であった。進行膵臓がん症例に関して、第2相試験ではStage 4b症例が大部分を占め、登録時点における被験者PSが第1相試験よりも低い傾向が顕著である。治験薬投与開始後早期に全身状態が悪化し、SAEのために治験を中止せざるを得ない症例の頻度が高い。新規核酸アジュバントは、ヒト細胞を用いた薬効試験および安全性試験を経て、治験実施を目指す。製薬企業との連携を強化したい。
結論
H27年度内のできるだけ早期に治験を終了し、H28年度に製薬企業へ導出できるよう治験を継続する。

公開日・更新日

公開日
2015-09-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201411030C

収支報告書

文献番号
201411030Z