がん診療科データベースとJapanese National Cancer Database(JNCDB)の運用と他がん登録との連携

文献情報

文献番号
201411014A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療科データベースとJapanese National Cancer Database(JNCDB)の運用と他がん登録との連携
課題番号
H26-がん政策-一般-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
手島 昭樹(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター 放射線治療科)
研究分担者(所属機関)
  • 三木 恒治(京都府立医科大学大学院)
  • 笠松 高弘(国立がん研究センター中央病院/都立墨東病院)
  • 麻賀 創太(国立がん研究センター中央病院)
  • 澤端 章好(星ヶ丘医療センター)
  • 松浦 成昭(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター)
  • 寺原 敦朗(東邦大学医療センター大森病院)
  • 山内 智香子(滋賀県立成人病センター)
  • 宇野 隆(千葉大学大学院)
  • 中村 和正(九州大学大学病院)
  • 角 美奈子(国立がん研究センター中央病院/がん研究会有明病院)
  • 戸板 孝文(琉球大学大学院医学系研究科)
  • 古平 毅(愛知県がんセンター中央病院)
  • 権丈 雅浩(広島大学大学院)
  • 小川 和彦(大阪大学大学院)
  • 鹿間 直人(埼玉医科大学)
  • 大西 洋(山梨大学医学部)
  • 小泉 雅彦(大阪大学大学院)
  • 安藤 裕(放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院)
  • 中川 恵一(東京大学医学部附属病院)
  • 小塚 拓洋(がん研究会有明病院)
  • 沼崎 穂高(大阪大学大学院)
  • 佐々木 茂(信州大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 笠松 高弘 国立がん研究センター中央病院(平成26年4月1日-5月31日→都立墨東病院(平成26年6月1日以降) 研究分担者 角 美奈子 国立がん研究センター中央病院(平成26年4月1日-9月30日)→がん研究会有明病院(平成26年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策推進基本計画で重点課題とされている「がん登録」と共に「放射線治療の推進」の基盤となる放射線治療部門データベース(DB)を発展させた全国的がん診療の質評価のためのデータベースJapanese National Cancer Database(JNCDB)を本格運用することを目的とする。さらに臓器別がん登録の母体である診療科DBの整備を支援して院内・地域・全国がん登録とJNCDBとのデータ連携を進め、がん登録全体の質向上に貢献する。
研究方法
日本放射線腫瘍学会DB委員会と連携し(研究代表者は同学会理事、DB委員長を務める)、今年度、1.学会事業として運用を開始した。2.学会員に調査項目についてパブコメを求め最終改訂した。3.調査項目を放射線治療情報システムRISに装填するよう学会より開発企業12社に正式依頼し装填を進めた。4.RIS非導入施設に対しては独自開発したソフトウエアを無償提供しデータ提出を容易にした。5.本格運用に備えてデータセンターを放射線医学総合研究所に移管した。学会と同研究所で覚書を締結し、運営委員会を設置した。6.DB項目は92項目(実績DB 22, 基本DB 70)とした。7.治療計画データの集積、検証、閲覧システムを独自開発して運用を始め、日本版ATCを構築している。8.放射線治療情報のデータ活用を目的としたコード化を行うためのワーキンググループを学会で組織し、本研究班と連携してコード化を進めている。
結果と考察
1.2014年12月より2013年の1年間の放射線治療症例のデータ提出を学会員に依頼し、2015年3月時点で45施設より22,012例のデータが集積された。集積は継続中である。中間解析結果では施設規模の大きな施設ほど乳癌、肺癌、前立腺癌に対する放射線治療回数が寡分割に向かっている実態が明らかとなった。高精度放射線治療:定位放射線治療、強度変調放射線治療(IMRT)普及により、短期間で大線量を投与する傾向を反映していると考察された。治療結果によるモニタリング継続の重要性が示唆された。2.他がん登録との連携では食道癌全国登録を支援し、2007, 2008年症例分の解析結果を公表した。現在2009年症例を収集、解析中である。他疾患では各論DB改訂作業で協力を得て情報共有している。大阪府がん登録との連携を進めた。3.全国放射治療施設定期構造調査を行い、2011年データ(回収率88.2%)を公開した。2012年データ(回収率88.9%)を解析中、2013年データを集積中である。全国で年間20数万人の患者(全がん患者の3割)が放射線治療を受けている。
がん診療施設において、国が推進している院内がん登録の整備と共に各診療科が情報共有用の標準フォーマットを組み込んだ情報を管理することにより、施設内での情報共有が容易になり、施設単位でのがん診療情報体系の信頼性と診療の質が向上する。本研究班では臓器横断的な放射線治療情報の標準化と全国的な症例登録を学会事業として運用することにより、院内の各診療科DBとの連携、院外での各がん登録との連携の橋渡しの役割を担うことが可能である。全国単位で施設から精度の高い情報が上がる仕組みは全国がん登録のデータ精度を向上させることになり、医療行政、社会や国民への貢献は大きい。さらに多施設間での情報共有や全国的データ収集・分析も容易となる。各施設の診療レベル(立ち位置)を正確に評価する。診療内容の施設層間較差を明らかにでき、背景にある構造問題を改善するための具体的データを得る。施設層間較差を是正できる。国民に対して、治療方法や医療機関の選択に資する正確な情報を開示できる。国内外の共同研究も促進される。この基盤を構築する本研究は学術上重要で社会的意義が大きい。わが国ではがん登録推進法が2016年に施行されるが、一般の国民にその存在性、必要性が十分認識されていない。米国では1972年にがん登録が法制化されているため、国民の理解も深く、また登録の基盤も整っており、データを還元することで社会への貢献、国民の保健・医療の向上に直結している。本研究は法制化されたがん登録では十分に分析できない臨床現場に近い詳細なデータを登録・公開する役割を果たす。米国NCDBと同様にがん医療の司令塔として国民の保健・医療の向上に寄与し、行政、社会への貢献は大きい。将来的に遺伝情報とも連携できれば病因や治療効果の解明等、情報の価値はさらに飛躍的に高まる可能性を秘めている。さらに放射線治療を中心とした医療被曝情報として東日本大震災の原発関連被曝の対照データとしても重要な役割を果たし得る。
結論
本研究を通じてがん放射線治療患者の全数登録と他がん登録との連携を進めている。同時に本研究過程で各施設の情報系整備を促進している。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201411014Z