文献情報
文献番号
201410014A
報告書区分
総括
研究課題名
病児・病後児保育の実態把握と質向上に関する研究
課題番号
H25-次世代-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
三沢 あき子(京都府立医科大学 男女共同参画推進センター、小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
- 遠藤 郁夫(一般社団法人 日本保育園保健協議会)
- 稲見 誠(一般社団法人 全国病児保育協議会)
- 上別府 圭子(東京大学大学院医学系研究科 健康科学)
- 宮崎 博子(一般社団法人 全国保育園保健師看護師連絡会)
- 山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
- 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症情報センター)
- 安井 良則(大阪府済生会中津病院 臨床教育部)
- 塩飽 仁(東北大学医学部 保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,334,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国においては核家族化が進み、頼れる身内が近隣にいない共働き家庭が増加している。このような社会状況下において、子育て世代が仕事を継続していくために、病児・病後児保育はニーズの高い保育サービスの一つとなっている。需要が高まり多様化している病児・病後児保育の質の確保は喫緊の課題である。また、保育所における看護師の配置は約30%にとどまっており、保育保健の充実が求められている。本研究は、全国の病児・病後児保育の実態把握を行ったうえで実践的標準化マニュアルを作成し、病児・病後児保育と保育保健の質向上および社会的理解の普及に寄与することを目的とする。
研究方法
平成25年度に実施した全国病児・病後児保育施設調査(以下、全国調査)をもとに、①病児・病後児保育施設に従事する保育士・看護師を対象とした地域研修のあり方と研修内容について検討し、②病児・病後児保育施設が地域の様々な機関と連携している先進地域を対象としてヒアリング調査を実施した。③保育所入所児童の発熱時等における保護者支援ツールについて検討を行った。④保育所における体調不良児に対する看護職の関わりを明らかにするために、看護職配置保育所を対象として調査研究を行った。⑤保育所利用者の病児・病後児保育の登録・利用状況及びその要因を明らかにするために、看護職配置保育所の利用者を対象として調査研究を行った。⑥看護職配置保育所における慢性疾患をもつ子どもへの対応を明らかにするために、看護職配置保育所を利用する慢性疾患をもつ子どもの母親を対象として調査研究を行った。
結果と考察
①病児・病後児保育で必要とされている研修内容は「子どもの健康管理と緊急対応」が最も多く79.6%におよんだ。全国病児保育協議会加盟率は病児対応型の55%に対し病後児対応型は18%のみ、また、病児対応型の45%、病後児対応型の51%が医療機関との連携が不十分と回答したことを踏まえ、地域研修については基本的な基礎研修とし、各地域の医療職を含む人材で実施できる内容とした。②ヒアリング調査の結果をもとにして、具体的実施方法、期待される効果及び実施例を含め「病児・病後児保育における地域連携のあり方」として取りまとめた。③保護者支援ツール「はたらくパパ・ママ 知ってる? 病児・病後児保育 ~子どもの病気 あわてないガイド~」を作成し、病児・病後児保育施設、保育所および診療所等を介して保護者への普及を図った。④保育士定数外で看護職が配置されている保育所では、その他の形態で看護職が配置されている保育所に比べて、体調不良となった子どもの療養場所を整えることや、保護者への対応が適切に行われていた。⑤利用者が資源として病児・病後児保育を活用できるよう情報提供を行うと共に、利用しやすい体制を整えていく必要性が示唆された。⑥看護職配置保育所において、多くの対応について、8割から9割の母親は満足と感じていた。看護職がその専門性を発揮し、慢性疾患をもつ子どもへの対応の充実が図られていることが考えられた。
結論
保育保健体制の充実のうえで、ニーズに応じた看護休暇と病児・病後児保育の双方の充実が必要とされている。全国調査の結果から、各地域で病児・病後児保育に従事する人材の育成としての研修、および病児・病後児保育施設と地域の医療機関や保育所等との連携の充実が必要とされていることが示された。各地域において、病児・病後児保育従事者の基礎研修が可能となる「病児・病後児保育における保育士・看護師等のためのハンドブック」を作成した。今後、全国で基礎研修が実施されることにより病児・病後児保育が充実し、地域の人材による研修実施の機会により顔の見える連携構築が期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-11
更新日
-