文献情報
文献番号
201410011A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児の疾患疫学を踏まえたスクリーニング及び健康診査の効果的実施に関する研究
課題番号
H25-次世代-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡 明(東京大学 医学部小児科)
研究分担者(所属機関)
- 本田雅敬(東京都立小児総合医療センター 腎臓内科)
- 池田均(獨協医科大学 小児外科)
- 中村好一(自治医科大学 地域医療センタ- 公衆衛生学部門)
- 坂田英明(目白大学 保健医療学部 言語聴覚学科)
- 仁科幸子(国立成育医療センタ-感覚器・形態外科部・眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
乳幼児健診とスクリーニング事業について、神経芽腫早期診断スクリーニング、3歳児検尿の効果的方法と腎尿路奇形の早期発見、新生児期と乳幼児健診での効果的な聴覚スクリーニング、乳幼児健診での効果的な視覚スクリーニング、新生児の動脈血酸素飽和度測定による先天性心疾患のスクリーニング、乳児股関節脱臼健診の再構築と予防活動の推進の6つの領域おいて、全国的に標準化可能な効果的方法を提案することを目的として研究を行った。
研究方法
神経芽腫早期診断に向けたスクリーニングのあり方について乳児マススクリーニング休止後の神経芽腫の発生状況の特徴と死亡に関する検討を、小児がん関連の全国的登録事業および人口動態統計のデータに基づいて行った。3歳児検尿での腎尿路奇形の早期発見については、3歳児健診の検尿の標準化モデルを3地域で実施しており、その実施可能性と有用性を検証する前向き研究を実施している。また、腎尿路奇形患者に適した試験紙法を検討し、感度が良好であった方法について多数例での有効性の検証を行っている。4か月健診での腎エコーは地域で実施しその有用性を検証した。新生児濾紙血でのクレアチニン測定法を開発し、通常法との相関の確認作業を行った。聴覚については、10か月健診での条件詮索反応を用いた健診法を地域医師会の協力で実施、質問紙と併せて前向き研究として有効性の検証を行っている。健康診査における眼の疾病及び異常の有無の診察での眼異常の有効な検出法については、厚生労働省の協力を得て全国市区町村に対して実態調査を行い、総計1384市区町村から回答を得た。これにより現在の地域での視覚スクリーニングの状況を把握し、地域で要望されている情報について解析を行った。新生児重症先天性心疾患に関し、米国での動脈血酸素飽和度測定を用いたスクリーニングプログラムの提供を受け、我が国での実施可能性について検討した。乳児股関節脱臼の健診用資料として「乳児股関節健診の推奨項目と二次検診への紹介」を作成し、関連学会の承認を得て、全国で統一した方法が可能な様に小児科医と保健師を中心に周知を行なう。
結果と考察
神経芽腫マススクリーニングのあり方については、マススクリーニング休止後の発生状況からは、事業の再開を積極的に考慮すべき結果は得られなかったと考えられるが、単年度で発生の多い年度があるなど、引き続き慎重に検討を行う必要がある。3歳児検尿については3地域で共通マニュアルでのモデル事業として開始し、順調に運用された。二次検尿による要精検者は10-30%に減少するなど、このモデルの実施可能性と有用性が検証されつつあり、今後、結果をまとめる予定となっている。腎尿路奇形発見には、クレアチニンとの比を測定する試験紙が有効である可能性が示唆され、現在、多数の腎尿路奇形患者尿を用いた検討を進めている。また、4か月健診で腎エコー検査の有用性を前向き研究として試行中であり、有用性について検討を行っている。新生児濾紙血によるクレアチニン測定法は通常法と良い相関を示しており方法としては確立され、すでにタンデムマスが実施されていることから簡便に新生児で評価が可能であると考えられる。また腎尿路奇形への早期介入のエビデンスを文献的に検討した。健診での効果的な聴覚スクリーニングについては、10か月時に音源への詮索反応を含めた方法を地域で実施し有用性を検証中である。この方法は小児科医等非耳鼻科医師でも簡便に行うことができることから、有用性が証明できれば、言語発達の前に難聴児を診断するために広く使用可能な健診法となる可能性がある。眼の疾病及び異常の有無のスクリーニングについて全国実態調査を行い、全国での標準化の必要性と、健診の方法や体制についての情報を提供が不可欠であることが明らかとなった。今後、標準的な健診方法の提案を行うとともに、地域に必要な情報提供が不可欠と考えられた。新生児の動脈血酸素飽和度測定による先天性心疾患のスクリーニングの米国での状況と資料を調査し、我が国でも実施が可能であると考えられた。乳児股関節脱臼の普遍的スクリーニング体系の再構築のため、今年度より小児整形外科専門家が参加し、健診用資料として「乳児股関節健診の推奨項目と二次検診への紹介」の作成し、関連学会の承認を得た上で広く情報提供を行った。また有意な二次検診の増加に対して、整形外科向けの乳児股関節二次検診の手引き公表した。
結論
科学的なデータに基づいて標準的な健診が全国で実施されることが必要であるが、地域ごとに実際されているために基礎的なデータがなく実態についても不明な点が多い。モデル地域などを通じて、全国で実施可能な健診モデル事業を行い、その有用性を検証して、厚労省からマニュアル等を通じて標準的な健診法として提示していくことが重要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-11
更新日
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