文献情報
文献番号
201409029A
報告書区分
総括
研究課題名
新規血漿因子HRG による好中球制御を介した敗血症と多臓器不全の治療法開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-医療技術-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西堀 正洋(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 阪口 政清(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 森松 博史(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 森 秀治(就実大学 薬学部)
- 高橋 英夫(近畿大学 医学部)
- 鵜殿 平一郎(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 田中 智之(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 西村 多美子(鈴木 多美子) (就実大学 薬学部)
- 樋之津 史郎(国立大学法人岡山大学 病院新医療研究開発センター)
- 平田 泰三(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター)
- 吉田 研一(国立大学法人岡山大学 知的財産本部)
- 桐田 泰三(国立大学法人岡山大学 新医療創造支援本部)
- 劉 克約(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 勅使川原 匡(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 和氣 秀徳(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 平田泰三
国立大学法人岡山大学病院新医療研究開発センター(平成26年4月1日~12月31日)→独立行政法人国立病院機構呉医療センター(平成27年1月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
マウスCLP敗血症モデルにおけるHRGの補充的治療効果発現の作用機序を詳細に解析し、動物実験におけるHRG治療のPOCを確立する。新規ベクターの構築により、ヒト組換えHRGを発現するCHO安定発現細胞株を確立する。得られた組換えタンパクの生物活性をNativeタンパクと比較して確認し、GMP規格品製造を推進する。ICU内患者の血中HRG測定を実施し、その予後マーカーとしての臨床的意義を確立する。HRGの作用プロファイル解明を図る。
研究方法
以下の方法を用いた。
1.HRGのマウスCLP敗血症Immunothrombosis に対する効果の検証
肺血管床内の好中球NETosisとImmunothrombosisの分析
2.CHO細胞を用いた高収量ヒト組換えHRG産生系の確立
新規ベクター構築とCHO安定発現細胞株の確立と収量の評価
3.ヒト好中球の正球化と活性酸素分子種産生抑制を指標にした組換えHRGの生物活性の評価
組換えHRGとNativeタンパクの用量作用曲線作成によるPotency比較
4.敗血症患者の血中HRG の測定と予後評価マーカーとしての意義の解析
ICU内患者の血中HRGの測定と、各種臨床検査値との相関性解析
5.マウスの培養肥満細胞分泌と実験的アレルギー性脳炎に対するHRGの効果解析
1.HRGのマウスCLP敗血症Immunothrombosis に対する効果の検証
肺血管床内の好中球NETosisとImmunothrombosisの分析
2.CHO細胞を用いた高収量ヒト組換えHRG産生系の確立
新規ベクター構築とCHO安定発現細胞株の確立と収量の評価
3.ヒト好中球の正球化と活性酸素分子種産生抑制を指標にした組換えHRGの生物活性の評価
組換えHRGとNativeタンパクの用量作用曲線作成によるPotency比較
4.敗血症患者の血中HRG の測定と予後評価マーカーとしての意義の解析
ICU内患者の血中HRGの測定と、各種臨床検査値との相関性解析
5.マウスの培養肥満細胞分泌と実験的アレルギー性脳炎に対するHRGの効果解析
結果と考察
マウスの盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルを用いて、敗血症性ARDS の原因がNETosisを生じた好中球の血管壁接着を契機とする典型的な免疫血栓Immunothrombus形成にあることを証明し、HRGのARDS、肺内炎症抑制、DICの抑制、血中サイトカインストームの抑制ならびに致死性軽減作用を解明した。ヒト好中球を用いたin vitro 実験で示されたHRGの消失による好中球の表面微絨毛の増加、血管内皮細胞接着性の亢進、活性酸素産生の亢進、微小流路通過性の障害は、そのいずれもが血中HRGレベルの低下した敗血症マウスの循環血中、特に肺微小血管内で生じている可能性が高いと結論した。ヒト組換えHRG発現CHO安定発現細胞株の樹立に成功し、単離ヒト好中球を用いた試験管内実験でヒトnative HRGと同等の活性を証明した。さらに新規のベクター構築を検討し、EGFPモデルタンパクの発現では数十倍の量産が期待できるベクター条件を見出すことに成功した。ICU内患者70名の血中HRG測定を実施した。その結果は、敗血症患者ではマウスCLP敗血症モデルと同レベルのHRG低下があることを明らかに示しており、敗血症時のヒトにおけるHRGの動態がマウスにおけるそれと近似していることを強く示唆している。血漿HRGレベルは、ICU内患者の重症度が高いほど低下しており、また後方視的に解析したとき、患者のmortality を予測する因子としてきわめて優れていることが明らかになった。一つの因子の測定値の意義としては群を抜いており、APACHE II スコアとSOFAスコアに匹敵すると判断できたことは、今後の臨床診断・治療における有用性を強く物語っている。
HRGの作用細胞プロファイルを知るために実施されたモデル細胞(マウス培養肥満細胞)・疾患モデル動物(EAEマウス)を使った実験で、HRGの一定の効果が検出されたことは、これらの応答細胞種に対するHRGの直接・間接作用があることを強く示唆しており、今後さらに追求していく必要がある。
HRGの作用細胞プロファイルを知るために実施されたモデル細胞(マウス培養肥満細胞)・疾患モデル動物(EAEマウス)を使った実験で、HRGの一定の効果が検出されたことは、これらの応答細胞種に対するHRGの直接・間接作用があることを強く示唆しており、今後さらに追求していく必要がある。
結論
CLP敗血症マウスに対するHRGの救命効果には、肺微小循環系における好中球NETosisの抑制、Immunothrombus 形成の抑制、DIC の抑制、サイトカインストームの抑制の4つの機序が相乗的に貢献していることを明らかにした。ヒト治療薬としてのヒト組換えHRGタンパクの製造は、CHO細胞での安定発現株の作製に成功し、原薬選定の条件を決定する直前まで来た。作製されたヒト組換えHRGは、Native HRGと同等の効果を持つことを明らかにした。ICU内の敗血症患者の血漿中HRGの測定結果は、マウスモデルにおいて得られた結果と完全に一致するものであり、患者の予後予測因子として血漿中HRGの測定が極めて有用であることを示した。HRGの血中半減期のデータと合わせて薬物動態シュミレーションを実施することで、各患者に必要な投与プロトコールを作ることができると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
-