読書が可能な人工視覚システム(脈絡膜上-経網膜電気刺激(STS)法)の実用化

文献情報

文献番号
201408004A
報告書区分
総括
研究課題名
読書が可能な人工視覚システム(脈絡膜上-経網膜電気刺激(STS)法)の実用化
課題番号
H24-医療機器-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
不二門 尚(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 幸二(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 瓶井 資弘(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 西信 良嗣(国立大学法人滋賀医科大学 眼科学)
  • 林 篤志(国立大学法人富山大学 医学部 眼科学)
  • 平形 明人(杏林大学 医学部 眼科学)
  • 貴島 晴彦(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 梅垣 昌士(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 北澤 茂(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 太田 淳(国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究所)
  • 小澤 素生(株式会社 ニデック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
28,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、これまで10年間にわたって開発して来た本邦独自の脈絡膜上-経網膜刺激(STS)法による人工網膜を実用化するための最終段階である。49Ch電極による第2世代のSTS人工視覚装置の安全性、有効性試験(平成24-25年度)、は終了し、平成26年度は1年の臨床試験の実施、評価、視覚リハビリテーション法の実施、刺激パラメータの最適化などを行った。平成26年度は2名の進行した網膜色素変性症の患者さんに第2世代のSTS人工視覚装置の埋植手術を行った。H25年度に行った1例の患者さんと併せて3例の患者さんについて1年間の経過観察中(1例は終了)であるが、術中には合併症なく、経過観察中には、2例の患者さんで虹彩炎が発症した他は合併症は生じなかった。虹彩炎も、点眼治療により寛解を得た。機能試験においては、症例1でベースラインの視機能向上が得られ、症例3では、人工視覚による視機能改善が得られた。今後1年間の経過観察を行い、臨床研究の結果をまとめる予定である。
研究方法
Ⅰ. 49Ch人工網膜システムの電極の有効性試験:家兎を用いて帰還電極をi) 刺激電極付近の強膜内、ii)赤道をはさんで対極の部位の強膜内、iii)硝子体内に置いて視覚誘発電位を比較した。
II. 49Ch-STS人工視覚システムによる中期臨床試験:平成26年度は2名の進行した網膜色素変性症の患者さんに第2世代のSTS人工視覚装置の埋植手術を行い、安全性有効性を検討した。
Ⅲ. 49Ch-STS体内システムの術式確立:デコーダーを側頭骨の一部を削って固定する方式について検討した。
Ⅳ. 人工視覚を用いた視覚リハビリテーション法の確立:家庭訓練法を、白い棒、タッチパネル、アルファベットの模型などを用いて行った。
結果と考察
49Ch人工網膜システムの誘発電位の大きさは、帰還電極の位置 ii), iii)でi)より大きな振幅が得られる傾向が見られ、今後帰還電極位置を決める上での参考となった。中期臨床試験では、H25年度に行った1例の患者さんと併せて3例の患者さんについて1年間の経過観察中(1例は終了)であるが、術中には合併症なく、経過観察中には、2例の患者さんで虹彩炎が発症した他は合併症は生じなかった。虹彩炎も、点眼治療により寛解を得た。機能試験においては、症例1でベースラインの視機能向上が得られ、症例3では、人工視覚による視機能改善が得られた。体内システムの頭蓋骨部への固定は、経過観察中3症例とも安定しており問題はなかった。視覚リハビリテーション法は、人工視覚を日常視に役立てる方法に関して現在検討中である。
結論
第二世代49ChのSTS人工網膜は、術中、術後に大きな障害はなく、中心窩に近い部位に電極が挿入された症例3では、人工網膜を使って行動の改善が見られた。これらの事実はSTS型人工網膜の有用性を示唆する。今後1年間の経過観察を行い、結果をまとめて治験のプロトコールを作成する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
その他
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201408004B
報告書区分
総合
研究課題名
読書が可能な人工視覚システム(脈絡膜上-経網膜電気刺激(STS)法)の実用化
課題番号
H24-医療機器-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
不二門 尚(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 幸二(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 瓶井 資弘(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 西信 良嗣(国立大学法人滋賀医科大学 眼科学)
  • 林 篤志(国立大学法人富山大学 医学部 眼科学)
  • 平形 明人(杏林大学 医学部 眼科学)
  • 貴島 晴彦(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 梅垣 昌士(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 北澤 茂(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 太田 淳(国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究所)
  • 小澤 素生(株式会社 ニデック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、これまで10年間にわたって開発して来た本邦独自の脈絡膜上-経網膜刺激(STS)法による人工網膜を実用化するための最終段階である。平成24-25年度は、動物実験で49Ch電極による第2世代のSTS人工視覚装置の安全性、有効性試験を行い、平成26年度は1年の臨床試験の実施、評価、視覚リハビリテーション法の実施、刺激パラメータの最適化などを行った。合計3名の進行した網膜色素変性症の患者さんに第2世代のSTS人工視覚装置の埋植手術を行った。H25年度に行った1例の患者さんと併せて3例の患者さんについて1年間の経過観察中(1例は終了)であるが、術中には合併症なく、経過観察中には、1例の患者さんで虹彩炎が発症した他は合併症は生じなかった。虹彩炎も、点眼治療により寛解を得た。機能試験においては、症例1でベースラインの視機能向上が得られ、症例3では、人工視覚による視機能改善が得られた。今後1年間の経過観察を行い、臨床研究の結果をまとめる予定である。
研究方法
Ⅰ. 49Ch-STS人工視覚システム長期埋植の安全性試験:ビーグル犬3匹を用いた49Ch電極を強膜ポケットに埋植し、体内装置を側頭部皮下に埋植して3か月経過観察した。
II. 連続通電の安全性試験:有色家兎10羽に対して、48時間の連続通電を行い、網膜創傷に有無を検討した。
III. 49Ch-STS人工視覚システムによる中期臨床試験:3名の進行した網膜色素変性症の患者さんにSTS人工視覚装置の埋植手術を行い、安全性有効性を検討した。
Ⅳ. 人工視覚を用いた視覚リハビリテーション法の確立:音声フィードバックシステムを搭載した、到達運動検出装置(Localization Test)を開発し、到達運動の精度が音声フィードバックにより向上するか否かを検討した。
結果と考察
イヌへの長期埋植試験では、3か月間デバイスは安定して稼働し、眼底に変化は生じなかった。家兎に対する連続通電試験では、1.5mAまでの通電では網膜損傷は生じなかった。     中期臨床試験では、3例の患者さんについて1年間の経過観察中(1例は終了)であるが、術中には合併症なく、経過観察中には、1例の患者さんで虹彩炎が発症した他は合併症は生じなかった。虹彩炎も、点眼治療により寛解を得た。機能試験においては、症例1でベースラインの視機能向上が得られ、症例3では、人工視覚による視到達運動の改善が得られた。音声フィードバックによる視覚リハビリテーションは、到達運動の正確性を向上させた。
結論
第二世代49ChのSTS人工網膜は、術中、術後に大きな障害はなく、中心窩に近い部位に電極が挿入された症例3では、人工視覚を使用することにより到達運動の改善が見られた。これらの事実はSTS型人工網膜の有用性を示唆する。また、視覚リハビリテーションは、視覚に基づく行動を改善する可能性が示された。今後の経過観察を行い、結果をまとめて治験のプロトコールを作成する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201408004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
人工網膜に関し、我々のグループが独自に開発した49極の脈絡膜上ー経網膜刺激(STS)法を用い、失明した患者さんが視覚を取り戻し、到達運動ができるようになることを示した。STS法は、刺激電極を網膜に接触させず、安全に人工視覚を誘発できるという点で画期的であり、先行する欧米の方式による人工網膜に対して、安全性において優位性を示すことができた。
臨床的観点からの成果
治療法のない、網膜色素変性で視力を失った患者さんに対して、侵襲の少ないわが国独自に開発したSTS法による人工網膜で、視覚回復が得られることを示した。本方式による人工網膜が普及すれば、失明した患者さんのQOL改善のみならず、社会復帰が可能になる可能性がある。さらに、介護に要する費用の軽減にもつながる。
ガイドライン等の開発
人工網膜長期埋植の臨床研究に際して、PMDAの助言を受けて、人工視覚の評価方法のプロトコールを作成した。
その他行政的観点からの成果
現在海外のメーカーが主導している、電子機器を用いた治療機器開発において、日本から発信する機器として、将来への基盤をつくることになる。
その他のインパクト
・STS人工視覚システムのしくみと国内海外での研究状況について、NHKテレビNEWS WEB(2015/2/26)で放送された。
・STS人工視覚システムのしくみと臨床研究の実施状況について、日経産業新聞(2014年11月4日 1面)に掲載された。
・STS人工視覚システムのしくみと臨床試験1例目患者の事例について、読売新聞(2014年6月23日 科学0面)に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
86件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
105件
学会発表(国際学会等)
68件
その他成果(特許の出願)
3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
視機能評価プログラム及び視機能評価装置
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2012-260735
発明者名: 不二門尚、神田寛行、杉浦基弘、伊藤邦彦
出願年月日: 20121129
国内外の別: 国内
特許の名称
視覚再生補助装置
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2012-225996
発明者名: 不二門尚、神田寛行、大澤孝治、斉藤徹
出願年月日: 20121011
国内外の別: 国内
特許の名称
生体用高機能電極
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2013-028006
発明者名: 野田俊彦,笹川清隆,徳田崇,太田淳
出願年月日: 20130215
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kanda H, Mihashi T, Miyoshi T, et al.
Evaluation of electrochemically treated bulk electrodes for a retinal prosthesis by examination of retinal intrinsic signals in cats. 
Jpn J Ophthalmol , 58 (4) , 309-319  (2014)
10.1007/s10384-014-0319-3
原著論文2
Miyagawa S, Mihashi T, Kanda H, et al.
Asymmetric Wavefront Aberrations and Pupillary Shapes Induced by Electrical Stimulation of Ciliary Nerve in Cats Measured with Compact Wavefront Aberrometer.
PLoS One , 9 (8) , e105615-  (2014)
10.1371/journal.pone.0105615
原著論文3
Fujikado T, Kamei M, Sakaguchi H, et al.
Feasibility of 2nd Generation STS Retinal Prosthesis in dogs.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc , 2013 , 3119-3121  (2013)
10.1109/EMBC.2013.6610201
原著論文4
Hirohara Y, Mihashi T, Kanda H,et al.
Optical imaging of retina in response to grating stimuli in cats.
Exp Eye Res , 2013Apr (109) , 1-7  (2013)
10.1016/j.exer.2013.01.007

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201408004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
37,050,000円
(2)補助金確定額
37,050,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 13,069,492円
人件費・謝金 4,153,597円
旅費 1,817,150円
その他 9,459,761円
間接経費 8,550,000円
合計 37,050,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-