文献情報
文献番号
201405020A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症高齢者の徘徊に関する実態調査
課題番号
H26-特別-指定-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 隆雄(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 所長室)
研究分担者(所属機関)
- 櫻井 孝(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)
- 粟田 主一(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)
- 曽根 智史(国立保健医療科学院)
- 菊地 和則(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)
- 牧 陽子(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
認知症高齢者における徘徊およびそれに続く行方不明とその転帰に関する包括的な調査研究の実施を目的とした。
研究方法
1)文献調査に関しては「認知症」「徘徊」をキーワードとして検索し内容分析を実施
2)捜査機関調査に関しては、平成25年度に警察に行方不明届が出され、死亡発見例(388例)と生 存発見例(388例)の家族を対象とした症例対照研究を実施
3)自治体調査に関しては、平成26年度に厚生労働省が行った「徘徊などで行方不明となった認知症の人等に関する実態調査」の結果から、1594市区町村データを分析し、さらに効果的・総合的取り組みが行われていると判断された9自治体への調査を実施
4)認知症専門医療機関の「もの忘れセンター」を受診した認知症高齢者及びその家族において徘徊経験の有無による症例対照研究やカルテからの質的分析等の実施
2)捜査機関調査に関しては、平成25年度に警察に行方不明届が出され、死亡発見例(388例)と生 存発見例(388例)の家族を対象とした症例対照研究を実施
3)自治体調査に関しては、平成26年度に厚生労働省が行った「徘徊などで行方不明となった認知症の人等に関する実態調査」の結果から、1594市区町村データを分析し、さらに効果的・総合的取り組みが行われていると判断された9自治体への調査を実施
4)認知症専門医療機関の「もの忘れセンター」を受診した認知症高齢者及びその家族において徘徊経験の有無による症例対照研究やカルテからの質的分析等の実施
結果と考察
1)高齢者の徘徊に関する比較的良質な国内外の先行研究 28文献についてレビューを実施し、特に徘徊の定義に関しては、徘徊は多様な行動を包摂する可能性があるため、現段階では広義とし、1. 認知症に関連すること、2. 移動を伴うこと、3.屋外であること、の3要件で、操作的定義とした。
2)警視庁生活安全局の公表した死亡発見例388例についての分析がなされ、生死に関連する要因として、1.生存例は男性に多く、死亡例は女性に多かった。2.生存例は老老介護である場合が多く、死亡例は老老介護でない場合が多かった。3.生存例では、行方不明になる危機感を介護者が感じている場合が多かったが、死亡例では、逆に危機感を感じていない場合が多かった。4.また、行方不明から発見までの期間が5日以上の場合、生存者はいなかった。死亡して発見された場合、死因は溺死、低体温症・凍死が多かったことなどが明らかとなった。
3)厚生労働省の実施した徘徊に関する実態調査から1594市区町村分のデータの解析により、以下の結果が得られた。1.認知症高齢者の徘徊による行方不明者の1割程度が死亡または未発見であった。2.行方不明者のおよそ4人に1人が要介護認定を受けていない者であった。3.行方不明者に占める要介護1、2、3の割合には、それぞれそれほど大きな差はなかった。要介護度1~3については、ほぼ同程度の行方不明のリスクがあるものと考えられた。4.人口30万人以上の市において、行方不明者、発見者、死亡者、未発見者のいずれも要介護認定なしの割合がそれ以下の人口規模の自治体よりも低く、逆に要介護認定ありの者の割合が相対的に高かった。
4)認知症専門外来である国立長寿医用研究センターである「もの忘れセンター(外来)」を受診した認知症高齢者御本人と家族より得られた徘徊経験の有無の情報を基にした分析的研究においては、以下のような結果を得ている。 1.患者のカルテ調査から徘徊行動の確認出来た者196例について、年齢、性別、基礎疾患、MMSE得点、等のデータを分析した。その結果、MMSEは11~15点が最も多かった。 2.徘徊経験患者196名と非徘徊患者との症例対照研究から、「時間の見当識の低下」や「夜間の断眠/サーカディアンシズムの乱調」、「意欲の低下」などが関連する因子として抽出されている。 3.徘徊経験患者196名のカルテ情報による質的分析から、徘徊の予兆因子として、「薬剤変更」や「居所変更」、「家族関係」等が認められたが、なかでも「薬剤変更」は「徘徊頻度の変化」の改善や消失と高い相関を示していた。
2)警視庁生活安全局の公表した死亡発見例388例についての分析がなされ、生死に関連する要因として、1.生存例は男性に多く、死亡例は女性に多かった。2.生存例は老老介護である場合が多く、死亡例は老老介護でない場合が多かった。3.生存例では、行方不明になる危機感を介護者が感じている場合が多かったが、死亡例では、逆に危機感を感じていない場合が多かった。4.また、行方不明から発見までの期間が5日以上の場合、生存者はいなかった。死亡して発見された場合、死因は溺死、低体温症・凍死が多かったことなどが明らかとなった。
3)厚生労働省の実施した徘徊に関する実態調査から1594市区町村分のデータの解析により、以下の結果が得られた。1.認知症高齢者の徘徊による行方不明者の1割程度が死亡または未発見であった。2.行方不明者のおよそ4人に1人が要介護認定を受けていない者であった。3.行方不明者に占める要介護1、2、3の割合には、それぞれそれほど大きな差はなかった。要介護度1~3については、ほぼ同程度の行方不明のリスクがあるものと考えられた。4.人口30万人以上の市において、行方不明者、発見者、死亡者、未発見者のいずれも要介護認定なしの割合がそれ以下の人口規模の自治体よりも低く、逆に要介護認定ありの者の割合が相対的に高かった。
4)認知症専門外来である国立長寿医用研究センターである「もの忘れセンター(外来)」を受診した認知症高齢者御本人と家族より得られた徘徊経験の有無の情報を基にした分析的研究においては、以下のような結果を得ている。 1.患者のカルテ調査から徘徊行動の確認出来た者196例について、年齢、性別、基礎疾患、MMSE得点、等のデータを分析した。その結果、MMSEは11~15点が最も多かった。 2.徘徊経験患者196名と非徘徊患者との症例対照研究から、「時間の見当識の低下」や「夜間の断眠/サーカディアンシズムの乱調」、「意欲の低下」などが関連する因子として抽出されている。 3.徘徊経験患者196名のカルテ情報による質的分析から、徘徊の予兆因子として、「薬剤変更」や「居所変更」、「家族関係」等が認められたが、なかでも「薬剤変更」は「徘徊頻度の変化」の改善や消失と高い相関を示していた。
結論
わが国における認知症によると考えられる徘徊高齢者の特徴とその予防対策について後方視的・横断研究からある程度、明らかにすることが可能となった。今後は認知症高齢者の前方視的・コホート研究が必須課題であることが明らかにされた。
公開日・更新日
公開日
2015-11-09
更新日
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