医療機器規格の国際標準化を支援する体制構築に関する研究

文献情報

文献番号
201403023A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器規格の国際標準化を支援する体制構築に関する研究
課題番号
H25-地球規模-指定-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
新見 伸吾(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
研究分担者(所属機関)
  • 配島 由二(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
  • 中岡 竜介(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
  • 大熊 一夫(日本歯科大学 補綴学 理工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、「国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器の各種国際規格の策定に関する研究(H23-地球規模-指定-003)」において策定した「医療機器規格・基準の国際標準化戦略に係る政策的提言」を具体的に実行する体制の構築に資する施策として、幾つかのISO/TCの活動をサポートする窓口を試験的に開設し、その実用可能性を検証すると共に、国際標準に関する世界情勢を周知する啓蒙活動を行った。また、新規規格の提案や国際規格の改定作業を通じて国際標準化に必要な戦略等に関する情報を収集することを目的として、試験法分野、材料開発分野及び歯科分野においてケーススタディを実施した。
研究方法
国際標準化戦略窓口を設立については、再生医療等製品及び医療機器ソフトウェアに係る規格情報を収集するため、関連するISO/IEC国内審議団体の委員会に委員又はオブザーバ等の立場で参加した。啓蒙活動については、医療機器の国際標準化に関する講演を4回行った。試験法分野のケーススタディでは、我々が開発したGenapol X-080含有PVCシート(Y-2及びY-3)をISO/TC194/WG9溶血性試験国際ラウンドロビンテストの本試験用標準品の一つとして提供した。材料開発分野のケーススタディでは、bFGF捕捉型RNAアプタマーの性能を細胞培養実験により評価したと共に、SELEX法等を用いて、BMP2捕捉型RNAアプタマーの選定を行った。歯科分野のケーススタディでは、歯科用CAD/CAMにより作製した被覆物の精度評価法に係る規格の検証データを収集したと共に、平成26年度ISO/TC106/SC9/WG5総会にConvenerとして出席した。
結果と考察
再生医療等製品分野では、デジュール規格の作成が始まっており、複数のISO/TCにおいて関連技術の国際標準化が活発化していることが判明した。医療機器ソフトウェア分野においては、その標準化がQMSをも巻き込み複雑化しているが、その鍵となるISO 13485の改訂が滞っていることが明らかとなった。従来、これらの分野に関する国際規格の動向の全体像を把握するためには、各TCが所管する情報を個別に入手する必要があったが、本研究において設立した国際標準化戦略窓口に関連情報を集約し、医療機器部HP上で一般向けに公開したことにより、アカデミアや関連企業等が情報検索に要する時間を大幅に短縮することが可能となった。日本における国際標準化活動を活性化させるためには、企業戦略としての国際標準化の重要性を医療機器業界に周知するため、講演会の開催等を通じて今後も引き続き啓蒙活動を行っていく。
ISO/TC194/WG9溶血性試験国際ラウンドロビンテストの本試験用標準品の一つとして提供したY-2及びY-3は、その性能が世界的に確認されたことから、今後、ISO/TC194/WG12に国際標準品として新規提案する。この陽性対照材料は食品薬品安全センターを窓口として国内外に領布する予定であり、将来的には日本の生物学的安全性試験ガイダンスに標準材料として収載する。
bFGF捕捉型RNAアプタマー(1p01)固定化表面は細胞増殖促進機能を有することが確認されたことから、RNAアプタマーを利用することにより、医用材料に意図した機能を付与できることが明らかとなった。また、BMP2捕捉型RNAアプタマー候補の選定を行った結果、B10とB24が有力な候補となることが判明した。今後、RNAアプタマーを利用した医用材料の機能を動物実験等により評価すると共に、その安全性及び有効性評価法を確立し、関連するISO/TCに新規提案する。
歯科分野におけるケーススタディでは、歯科用CAD/CAMに関する規格をISO/TC106/SC9に日本から新規提案し、CD化に至るまでの情報を収集した。Convenerとして出席したISO/TC106/SC9/ WG5 会議では、5ヵ国によるインターラボラトリーテストの結果報告及び各国から提出されたコメントに対応した。また、本CDに新たなCMM及びソフトウェアを追加することが提案され、2nd CDへステージアップした。今後、DIS、FDISを経て、最終的にIS化を目指す。
結論
再生医療等製品及び医療機器ソフトウェア分野において、我が国が主導権を握るためには、戦略的且つ統一的に関連規格の国際標準化に取り組んでいかなければならないことが明確になった。ケーススタディにおいては、新規規格の提案を通じて国際標準化に必要な戦略等の情報を蓄積したと共に、その他の規格の新規提案に向けた検証データを収集した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201403023B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機器規格の国際標準化を支援する体制構築に関する研究
課題番号
H25-地球規模-指定-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
新見 伸吾(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
研究分担者(所属機関)
  • 配島 由二(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
  • 中岡 竜介(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
  • 大熊 一夫(日本歯科大学 補綴学 理工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、これまでに作成した「医療機器規格・基準の国際標準化戦略に係る政策的提言」を具体的に実行する体制の構築に資する施策として、幾つかのISO/TCの活動をサポートする窓口を試験的に開設し、その実用可能性を検証すると共に、企業から参画するエキスパートの作業環境を改善するため、関連業界を対象として国際標準に関する世界情勢を周知する啓蒙活動を行った。また、試験法分野、材料開発分野及び歯科分野の国際標準化に関するケーススタディを立ち上げ、検証データを収集すると共に、関連するISO/TCへの新規規格の提案及びその標準化を行った。
研究方法
国際標準化戦略窓口を設立するため、再生医療等製品に係る規格についてはISO/TC194、TC198及びTC150/SC7等、医療機器ソフトウェアについてはISO/TC210、ISO/TC215及びIEC/TC62等の協力を得て情報を収集した。啓蒙活動については、国際標準化に係る認知度と考え方等を把握するため、国内企業の経営陣を対象としたアンケート調査を実施した。また、産官学の専門家を講師として招き、医療機器開発の留意点と国際標準化をテーマとした講演会を開催したと共に、その他の関連講演を4回行った。試験法分野のケーススタディでは、ISO/TC194/WG9溶血性試験国際ラウンドロビンテストを支援した。
材料開発分野のケーススタディでは、代替可塑剤DOTHのラット亜慢性毒性試験及びRNAアプタマーを用いた革新的医用材料の創製に関する研究を実施した。歯科分野のケーススタディでは、CAD/CAMにより作製した被覆物の精度評価法に係る規格の検証データを収集し、新規規格として提案した。
結果と考察
窓口業務の一環として、再生医療等製品と医療機器ソフトウェアに係る規格動向をそれぞれ一元化する体制を構築し、関連する情報の収集と配信を行うためのHPを開設した。現在行われている国際標準化活動状況を取りまとめた結果、再生医療等製品分野においては、製品開発に先行してデジュール規格の作成取り組みが活発化していることが判明した。医療機器ソフトウェア分野においては、その標準化がQMSをも巻き込み複雑化していると共に、関連規格の改訂作業が急ピッチで進行していることが示された。
企業経営陣を対象としたアンケートを行った結果、医療機器分野の国際標準化活動を活性化するためには、国家的なサポートのみではなく、企業上層部の意識改革を目的とした啓蒙活動を行う必要があることが判明した。啓蒙活動の一環として開催した講演会では、企業を中心として168名の参加者を得た。
試験法分野のケーススタディにおいて、ISO/TC194/WG9溶血性試験国際ラウンドロビンテストに標準品の一つとして提供したGenapol X-080含有PVCシートは、その性能が世界的に確認されたことから、今後、ISO/TC194/WG12に国際標準品として新規提案する。
材料開発分野のケーススタディでは、DOTHがDEHPの有益な代替可塑剤となり得る可能性を見出した。また、FGF2捕捉型RNAアプタマーの有用性評価については、候補アプタマーの選択(1p01)、PEGブラシ表面の作製及び細胞培養実験による性能試験を行った結果、RNAアプタマーを利用することにより、医用材料に意図した機能を付与できることが明らかとなった。また、BMP2捕捉型RNAアプタマー候補の選定を行った結果、B10とB24が有力な候補となることが判明した。今後、RNAアプタマーを利用した医用材料の機能を動物実験等により評価すると共に、その安全性及び有効性評価法を確立し、関連するISO/TCに新規提案する。
 歯科分野のケーススタディでは、日本が提案した新規規格「Machining accuracy of computer-aided milling machines – Test methods」において規定された方法論をタイと連携して検証した。また、5ヵ国によるインターラボラトリテストを実施したほか、本CDに新たなCMM及びソフトウェアを追加することが提案され、2nd CDへステージアップした。今後、DIS、FDISを経て、最終的にIS化を目指す。
結論
再生医療等製品及び医療機器ソフトウェア分野において、我が国が主導権を握るためには、戦略的且つ統一的に関連規格の国際標準化に取り組んでいかなければならないことが明確になった。また、国際市場における日本企業の優位性を確保するためには、国際標準化活動に対する企業上層部の理解が不可欠であることが明らかとなった。ケーススタディにおいては、新規規格の提案を通じて国際標準化に必要な戦略等の情報を蓄積したと共に、その他の規格の新規提案に向けた検証データを収集した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201403023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、平成27年度から3年計画でスタートした日本医療研究鵜飼発機構研究費/医薬品等規制調和・評価研究事業「医療機器規格の国際標準化を加速する環境整備に関する研究」に引き継がれた。国際標準化支援戦略窓口、新規規格の提案と検証データの収集、企業向け啓発活動を継続して実施しているほか、アジア諸国との連携体制の構築に関する作業を開始した。
臨床的観点からの成果
国際標準化を推進することにより、優れた製品をいち早く患者のもとに届けることが可能となる。ジルコニアセラミッククラウンの精度評価法に係る規格は我が国の歯科治療の向上に直結する。RNAアプタマーは新規機能性医用材料として、再生医療分野等に応用できる可能性が示唆された。また、我々が開発したGenapol X-080含有PVCペレットを陽性対照材料として利用することにより、医療機器の溶血性及び刺激性試験結果の精度を向上させることが可能となった。
ガイドライン等の開発
日本がISO/TC106/SC9に提案した新規規格ISO/CD 18845-2はTRとして発行された。今後、ラウンドロビン(RR)テストを経てIS化する予定である。また、ISO 10993-4の改訂作業及びISO/TC194/WG8が実施した刺激性試験動物代替法/国際RRテストも完了した。その他、標準材料の追加等、医療機器の生物学的安全性試験法ガイダンスの改訂準備を進めている。
その他行政的観点からの成果
従来、再生医療等製品及び医療機器ソフトウェア分野に関する国際規格の動向の全体像を把握するためには、各TCが所管する情報を個別に入手する必要があったが、本研究において設立した国際標準化戦略窓口に関連情報を集約し、医療機器部HP上で一般向けに公開したことにより、アカデミアや関連企業等が情報検索に要する時間を大幅に短縮することが可能となった。また、2017年度ISO/TC150総会と平行して、アジア諸国の連携強化を目指したワークショップを開催することが決定された。
その他のインパクト
Genapol X-080含有PVCペレットを溶血性及び刺激性試験用陽性対照材料として国内外へ領布する体制を整備した。その他、日本における国際標準化活動を活性化させるためには、現在に至るまでデファクト標準に頼ってきた多くの企業経営陣に企業戦略としての国際標準化の重要性を周知する必要があるため、講演会の開催等を通じて今後も引き続き啓発活動を行っていく。

発表件数

原著論文(和文)
5件
セラミクス、バイオマテリアル 等
原著論文(英文等)
10件
JVAT、JBMR Part B 等
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
43件
日本バイオマテリアル学会大会、日本再生医療学会総会、日本薬学会、RNAミーティング、日本歯科理工学会、日本技工士学会、日本矯正歯科学会 等
学会発表(国際学会等)
29件
WBC、ToxExpo、ASIATOX、EUROTOX、Termis-AP 2013、ISO/TC194及びTC106国際会議
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
9件
講演会、研修会、特別講演、第53回日本生体医医工学会オーガナイズドセッション企画、アンケート調査

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
中岡竜介
ISO/TC 150/SC 7の現状と課題
セラミックス , 48 (10) , 819-823  (2013)
原著論文2
中岡竜介
医療用ポリマーの生体適合性評価
「体内埋め込み医療材料の開発とその理想的な性能・デザインの要件」、技術情報協会 , 254-258  (2013)
原著論文3
Kameda T., et al.
Magnetic fields from electric toothbrushes promote corrosion in orthodontic stainless steel appliances but not in titanium appliances.
Dent. Mater. J. , 959-969  (2013)
原著論文4
Kameda T., et al.
Electric current induced in teeth by electromagnetic fields from electric toothbrushes and curing lights.
Orthod Waves , 77-85  (2013)
原著論文5
Kameda T., et al.
Modification of metallic materials for a white appearance without coating and plating.
Orthod Waves , 87-98  (2013)
原著論文6
Koide M., et al.
A new method for fabricating zirconia copings using a Nd:YVO4.
Dent. Mater. J. , 422-429  (2014)
原著論文7
Kameda T., Ohkuma K.
Electromagnetic fields from dental devices and their effects on human health.
J. Electr. Electron Syst. , 118-  (2014)
原著論文8
蓜島由二
第1部:医療機器市場の拡大と新規製品の開発:開発,上市化,市場確保において留意すべきポイント
生体適合性制御と要求特性掌握から実践する高分子バイオマテリアルの設計・開発戦略(監修:田中 賢).サイエンス&テクノロジー , 3-21  (2014)
原著論文9
Haishima Y., et al.
Screening study on hemolysis suppression effect of an alternative plasticizer for the development of a novel blood container made of polyvinyl chloride.
J. BioMed. Mater. Res. Part B , 102 , 721-728  (2014)
原著論文10
Haishima Y., et al.
Development and performance evaluation of a positive reference material for hemolysis testing.
J. BioMed. Mater. Res. Part B , 102 , 1809-1816  (2014)
原著論文11
中岡竜介,蓜島由二,新見伸吾
医療機器・材料の国際標準化動向
バイオマテリアル-生体材料 , 33 (1) , 56-63  (2015)
原著論文12
中岡竜介
生体吸収性材料を用いた医療機器の安全性評価:薬事承認審査時における留意点
「進化するバイオベースマテリアル」、シーエムシー出版 , 264-272  (2015)
原著論文13
Haishima Y., et al.
Characterization of alternative plasticizers in polyvinyl chloride sheets for blood containers.
J. Vinyl Add. Technol. , 22 , 520-528  (2016)
原著論文14
Nomura Y., et al.
Conjugating two RNA aptamers improves binding affinity for AML1 Runt domain Conjugating two RNA aptamers improves binding affinity for AML1 Runt domain.
J. Biochem. , in press  (2017)
原著論文15
Morishita Y., et al.
Alternative plasticizer, 4-cyclohexene-1,2-dicarboxylic acid dinonyl ester, for blood containers with protective effects on red blood cells and improved cold resistance.
J. BioMed. Mater. Res. Part B , in press  (2017)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
2018-06-05

収支報告書

文献番号
201403023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,587,700円
人件費・謝金 87,225円
旅費 1,654,684円
その他 3,677,732円
間接経費 0円
合計 15,007,341円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-