ソーシャル・キャピタルを活用した保健医療福祉ネットワークの構築-震災復興の効果的推進に向けて

文献情報

文献番号
201403009A
報告書区分
総括
研究課題名
ソーシャル・キャピタルを活用した保健医療福祉ネットワークの構築-震災復興の効果的推進に向けて
課題番号
H24-地球規模-一般-015
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
濱野 強(国立大学法人島根大学 研究機構戦略的研究推進センター)
研究分担者(所属機関)
  • 塩飽 邦憲(国立大学法人島根大学)
  • 並河 徹(国立大学法人島根大学 医学部)
  • 伊藤 勝久(国立大学法人島根大学 生物資源科学部)
  • 片岡 佳美(国立大学法人島根大学 法文学部)
  • 福間 美紀(国立大学法人島根大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,242,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は,ソーシャル・キャピタルの評価ツールの検討,ソーシャル・キャピタルの社会的な効用に関する国際共同研究,及び今後の保健医療福祉ネットワーク構築のあり方について検討を行うことを目的とした。
研究方法
本研究では,既存の公開資料・統計情報,及び英国の国家情報局(Office for National Statistics)でのヒアリング調査に基づき実施した。
結果と考察
1.ソーシャル・キャピタルの評価方法の提案と社会的効用の整理
昨年度に実施した経済協力開発機構(OECD)でのヒアリング調査結果を踏まえて,本年度は実際にOECDが2013年に提案したソーシャル・キャピタル測定フレームに基づき政策展開の議論を行っている英国の国家統計局にヒアリング調査を実施した。その結果,ソーシャル・キャピタルの把握において有用と考えられる4領域25指標が明らかとなった。以上の指標は,被災地においても有益と考えられ,また,将来的には国際比較も可能であることから,これらの指標を用いることが妥当と結論づけられた。さらには,昨年度から継続してルンド大学(スウェーデン)との共同研究を実施し,ソーシャル・キャピタルの社会的効用について検討を行った。その結果,うつ病の家族歴を有する人において将来のうつ病発症のバッファー機能をソーシャル・キャピタルが果たす可能性をフォローアップデータに基づき明らかにした。3年間の研究より,ソーシャル・キャピタルの社会的な効用としては,ストレスバッファー機能が明らかとなり,また個別のアウトカムとして高血圧症,精神疾患,さらには死亡リスクと関連することが定量解析により明らかとなった。

2.被災地における保健医療福祉ネットワーク構築の方法論を確立
ソーシャル・キャピタルの醸成(地域介入のあり方)について島根県雲南市の事例を踏まえ具体的な方法論を提起した。また,保健医療福祉ネットワークの構築には,地域における医療ニーズの定量的な把握が不可欠であることから,傷病別の患者数推計に係る方法論を提起した。以上の成果より,地域の医療ニーズを把握し,ソーシャル・キャピタルを定量的に把握・見える化して,その特徴を活かしたソーシャル・キャピタルの醸成に関する取り組みの実践,という一連の方法論を確立することができた。
結論
本年度は,英国でのソーシャル・キャピタルを活用した政策的議論を検討することを通して,昨年度の研究で提案したソーシャル・キャピタルの評価軸の妥当性について考察を深めた。その結果,わが国の背景を踏まえる必要があるものの「人間関係:personal relationship」「ソーシャルネットワークサポート:social network support」「市民参画:civic engagement」「信頼・規範:trust and cooperaticve norms」の4側面よりソーシャル・キャピタルを把握することは,被災地における保健医療福祉ネットワークの構築において基盤的知見になるとともに,将来的な国際比較においても有用と考えられた。合わせて,今後,被災地でソーシャル・キャピタルをいかに形成・再形成していくかという観点から,中山間地域において進められている地域オリジナル体操の試みに焦点を当て,地域全体への波及効果の観点からその意義を提起した。さらには,ソーシャル・キャピタルの社会的な効用を整理する観点から国際共同研究を実施し,遺伝素因(うつ病の家族歴)と社会環境(ソーシャル・キャピタル)の両者を踏まえたメンタルヘルス対策の必要性を提起した。以上より,ソーシャル・キャピタルの評価項目と社会的効用が整理されるとともに,3年間の検討を踏まえた中で被災地での保健・医療・福祉を支えるソーシャル・キャピタルの特徴としては,“緩いつながり”がキーワードとして浮き彫りになった。

公開日・更新日

公開日
2015-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201403009B
報告書区分
総合
研究課題名
ソーシャル・キャピタルを活用した保健医療福祉ネットワークの構築-震災復興の効果的推進に向けて
課題番号
H24-地球規模-一般-015
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
濱野 強(国立大学法人島根大学 研究機構戦略的研究推進センター)
研究分担者(所属機関)
  • 塩飽 邦憲(国立大学法人島根大学)
  • 並河 徹(国立大学法人島根大学 医学部)
  • 伊藤 勝久(国立大学法人島根大学 生物資源科学部)
  • 片岡 佳美(国立大学法人島根大学 法文学部)
  • 福間 美紀(国立大学法人島根大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「東日本大震災からの復興の基本方針」に示されている通り,現在厚生労働行政が直面している課題としては,(1)被災者が安心して保健・医療,介護・福祉・生活支援サービスを受けられるよう医療・介護間の連携推進や診療情報の共有化,(2)地域で「絆やつながり」を持ち続けることができるよう仮設住宅等における生活環境も含めた住民ニーズの把握,必要に応じたパーソナルサポート的支援,見守り等の支援体制の構築が挙げられる。言い換えれば,いかにして地域の絆を基盤として各種主体が連携し,住民の健康・医療・福祉を支えるネットワークを構築していくかという論点に集約される。
そこで,本研究では,絆という漠然とした視点をソーシャル・キャピタルの概念よりその測定方法や社会的な効用を整理するとともに,被災地でのヒアリング調査や地理情報システムを活用した解析に基づきソーシャル・キャピタルを活用した保健・医療・福祉ネットワーク構築の方法論について検討を行った。
研究方法
(1)平成24年度
先行研究で示された我が国のソーシャル・キャピタルの特徴と政策的インプリケーションを整理し,諸外国の知見と国際比較を行うとともに被災地の現状把握を行った。具体的には,国内外のソーシャル・キャピタルを活用した政策展開については,既存の公表資料,ホームページ,及び研究論文等を参考とした。ヒアリング調査は,経済協力開発機構(OECD: Organization for Economic Co-operation and Development),岩手県A地区,福島県作業療法士会いわき支部を対象として実施した。

(2)平成25年度
ソーシャル・キャピタルの評価ツールの検討,ソーシャル・キャピタルの社会的な効用に関する国際共同研究,被災地へのヒアリング調査の実施と健康医療福祉ネットワーク構築準備を行った。ソーシャル・キャピタル評価ツールの検討は,既存の公表資料,研究論文,及び経済協力開発機構(OECD)でのヒアリング調査を参考とした。また,被災地でのヒアリング調査は,岩手県A地区,福島県いわき市を対象として実施した。

(3)平成26年度
ソーシャル・キャピタル評価ツールの検討では,既存の公表資料,研究論文,及び英国のOffice for National Statisticsでのヒアリング調査での情報を参考にした。
結果と考察
3年間の研究を通して、方法論として以下の流れを整理した。ソーシャル・キャピタルを活用した保健・医療・福祉ネットワークの構築においては、まず始めに平成24年度~26年度に検討を進めてきた経済協力開発機構(OECD),及び英国で示されたソーシャル・キャピタルの測定項目(人間関係:personal relationship,ソーシャルネットワークサポート:social network support,市民参画:civic engagement,信頼・規範:trust and cooperaticve norms」の25指標)を活用し地域の強み・弱みを明らかにした上で,平成25年度の研究で提案した地域内の人的ネットワークの「見える化」手法を活用しキーパーソンや要支援者の抽出を実施する。合わせて,平成26年度において開発した医療需要予測の方法論を用い,医療ニーズの定量的な把握を試みる。以上の基盤情報を鑑み,地域における医療機関等の社会資源の立地を地理情報システムで可視化することを通して,ソーシャル・キャピタルが果たすべき役割の考察と平成26年度の研究で提案したソーシャル・キャピタルの醸成の取り組み(地域のオリジナル体操の作成)を進めることが求められる。
結論
3年間の研究成果より,被災地の保健医療福祉ネットワーク構築において有益と考えられるソーシャル・キャピタル測定ツールが明確となり,その結果に基づく一連の活動の流れが方法論として明確になった。合わせて,ソーシャル・キャピタルの社会的効用が明確となり,「なぜ,ソーシャル・キャピタルは重要であるのか」「ソーシャル・キャピタルを定量的に把握し,活動を進めていくためにはどのような方法を用いたら良いのか」という点が整理できた。一連の方法論は,研究当初に掲げた「ソーシャル・キャピタルを保健・医療・福祉ネットワークの構築にいかに実践的に活用するか」という現状課題の具体的なモデルとして活用が可能である。

公開日・更新日

公開日
2015-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201403009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我が国のみならず、海外の先行知見を踏まえてソーシャル・キャピタル評価ツールの提案を行った点、及びソーシャル・キャピタルの社会的効用を定量的に示した点に学術的意義を指摘できる。合わせて、復興段階に応じて、ソーシャル・キャピタルを基盤とした保健医療福祉ネットワークの構築の方法論を具体的に提起した点に専門的な意義を指摘できる。
臨床的観点からの成果
本研究は、臨床研究でないため、該当なし。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
該当なし。
その他のインパクト
公開シンポジウムを開催した(日時:平成26年10月25日、会場:島根大学)

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
濱野強,武田美輪子,川上直美,木村義成,他
地理情報システム(geographic information systems)を用いた受療行動解析についての文献的考察
日農医誌 , 62 (4) , 598-609  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-04-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201403009Z