ポストミレニアム開発目標のための新保健人材戦略

文献情報

文献番号
201403004A
報告書区分
総括
研究課題名
ポストミレニアム開発目標のための新保健人材戦略
課題番号
H24-地球規模-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
神馬 征峰(東京大学大学院 医学系研究科国際地域保健学)
研究分担者(所属機関)
  • 安岡潤子(東京大学大学院 医学系研究科国際地域保健学 )
  • 大塚恵子(東京大学大学院 医学系研究科国際地域保健学 )
  • 柴沼 晃(東京大学大学院 医学系研究科国際地域保健学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,005,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は国際機関との連携による保健政策研究と途上国におけるフィールド研究とを組み合わせてなされた。第1の目的は、これまで連携してきたWHOやアジア太平洋保健人材連盟 (AAAH)との協力のもとに保健人材政策研究を推進するとともにその成果を世界に発信することである。第2の目的は、フィールド研究として、アジア、アフリカにおける中間レベル保健従事者・コミュニティヘルスワーカー(CHW)強化のための研究を行うことである。
研究方法
第1は世界の保健人材政策研究である。世界規模での保健人材戦略を知り、かつ影響力を及ぼすため、WHO本部や AAAHと協力し、保健人材に関する研究を進めた。とりわけ、途上国における多職間教育(IPE)推進のための研究を行った。またAAAHを介して「アジアにおける保健従事者偏在分析・民間保健医療教育機関の教育の質分析」研究の行政面での成果を特定した。第2の保健人材とユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の研究に関しては、日本がUHCを実現した1961年前後において、地域保健活動がUHC推進にいかに寄与したかを改めて振り返ることによって、今後UHCを推進しようとしている途上国への教訓を得るべく、事例研究を行った。最後にCHWと中間レベル医療従事者の役割に関しては、カンボジア、ネパール、ミヤンマー、タンザニアを舞台にフィールド調査や文献調査を行った。
結果と考察
まず世界の保健人材研究においては、革新的教育手法として注目を浴びているIPE推進のための研究を実施した。そしてエビデンスの質は低く、その量も限られている中、いかにIPEを推進していけるかを示した。次に、AAAHとの共同研究を実施し、研究データがベトナムとバングラデシュにおける保健人材政策の改善と実施に役立ったことを示した。UHC研究においては、日本の事例から地域保健の活性化によるヘルスプロモーションや疾病予防の努力がUHCの実現に必要であることを示した。特に地域保健の現場での健康手帳の活用や演劇などによる保健意識の向上が、医療機関への過剰の受診を減らし、UHC推進に重要であることを示した。フィールド研究においては、マラリアや小児の疾患対策の担い手として活躍するCHWの果たし得る役割と限界に関する研究を実施した。カンボジアでは、新たに始まったマラリア治療のDOTS(直接服薬確認療法)についての実態調査を実施し、村落マラリアワーカーとコミュニティ住民との関係を強める効果があることを確認した。またネパールでは、女性のCHW(FCHV)の役割についての研究を実施した。その結果、調査地においてコミュニティ住民によるFCHV利用率が低いことを示した。これはFCHVのサービスの質や認知度の低さ、また薬剤のストックアウトが原因であることも特定した。ミヤンマーでは、マラリア蔓延地域において、マラリア罹患が疑われる高熱の際の受診率は35%と低く、その要因として、保護者の知識不足、保健サービスへの距離などがあることが特定された。最後にタンザニアでは、HIV陽性者をケアする中間レベルの保健従事者が栄養に関するトレーニングを受けることで、対象者の知識を向上させることができることを示した。
結論
保健人材研究においては、特にUHC実現に向けた地域保健の重要性を示し、フィールド研究においてはアジア・アフリカの対象国において、中間レベルやコミュニティレベルの保健従事者が地域住民の健康レベル向上において果たしうる役割の重要性を示した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201403004B
報告書区分
総合
研究課題名
ポストミレニアム開発目標のための新保健人材戦略
課題番号
H24-地球規模-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
神馬 征峰(東京大学大学院 医学系研究科国際地域保健学)
研究分担者(所属機関)
  • 安岡潤子(東京大学大学院 医学系研究科国際地域保健学)
  • 大塚恵子(東京大学大学院 医学系研究科国際地域保健学)
  • 柴沼 晃(東京大学大学院 医学系研究科国際地域保健学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国際機関との連携による保健政策研究とフィールド研究とを組み合わせてなされた。保健政策研究としては4種類の研究を行った。第1にこれまで連携してきたWHOやアジア太平洋保健人材連盟 (AAAH)との協力のもとに行った保健人材政策研究である。第2はアジア太平洋地域におけるMDGsの進捗分析である。第3はユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)のための保健人材研究である。そして最後は中間レベル保健従事者とコミュニティヘルスワーカー(CHW)の活動に関する政策研究である。フィールド研究としては、カンボジア、ネパール、ミヤンマー、タンザニアにおける中間レベル保健従事者・CHW強化のための疫学調査を行った。
研究方法
第1は世界の保健人材政策研究である。WHO本部や AAAHと協力し、保健人材に関する研究を進めた。とりわけ、途上国における多職間教育(IPE)推進のための研究を行った。またAAAHを介して「アジアにおける保健従事者偏在分析・民間保健医療教育機関の教育の質分析」研究の行政面での成果を特定した。第2にラオスのケース・スタディを行った。また、アジア太平洋諸国における低所得国13か国のMDG達成度と成功要因・失敗要因に関する文献レビューを行った。第3の保健人材とUHCの研究に関しては、まずUHCを志向しているカンボジア、ネパール、ペルーを対象とし、比較分析を行った。次にペルーにおいて、より詳細な疫学研究を行った。最後に日本がUHCを実現した1961年前後において、地域保健活動がUHC推進にいかに寄与したかを検討するための事例研究を実施した。今後UHCを推進しようとしている途上国への教訓を得るためである。第4にCHWと中間レベル医療従事者の役割に関して文献調査による政策研究を行った。そして最後に、フィールド研究として、カンボジア、ネパール、ミヤンマー、タンザニアを舞台に疫学調査を行った。
結果と考察
まず世界の保健人材研究においては、IPE推進のための研究を実施し、エビデンスの質は低く、その量も限られている中、途上国においてもIPEを推進していくべきことを示した。次に、アジア太平洋地域のMDG進捗分析において、「Off track」とされているラオスのような途上国の開発の速度は、必ずしも遅くはなく、指標に振り回されるべきではないことを示した。第3にAAAHとの共同研究を実施し、ベトナムとバングラデシュにおける保健人材政策の改善と実施に研究データが役立ったことを示した。最後の政策研究として、UHC研究においては、日本の事例から地域保健の活性化によるヘルスプロモーションや疾病予防の努力がUHCの実践に必要であることを示した。フィールド研究においては、まずカンボジアで、マラリアや小児の疾患対策の担い手として活躍するCHW の果たし得る役割と限界に関する研究を実施した。マラリア治療のDOTS(直接服薬確認療法)についての調査も実施し、村落マラリアワーカーとコミュニティ住民との関係を強める効果があることを確認した。またネパールでは、女性CHW(FCHV)の役割についての研究を実施した。その結果、調査地においてコミュニティ住民によるFCHV利用率が低いことが分かった。その原因としてFCHVのサービスの質や認知度の低さ、また薬剤のストックアウトが示唆された。ミヤンマーでは、マラリア蔓延地域において、マラリア罹患が疑われる高熱の際の受診率は35%と低く、その要因として、保護者の知識不足、保健サービスへの距離などがあることが特定された。最後にタンザニアでは、HIV陽性者をケアする中間レベルの保健従事者が栄養に関するトレーニングを受けることで、対象者の知識を向上させることができることを示した。
結論
保健人材研究においては、エビデンスが少なく弱い中で、途上国においても保健分野での高等教育を推進させていくべきことを示し、かつUHC実現に向けた地域保健の重要性も示した。フィールド研究においてはアジア・アフリカの対象国において、中間レベルやコミュニティレベルの保健従事者が地域住民の健康レベル向上のために果たしうる役割を示した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201403004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
政策研究の一環として、多職間教育並びに栄養トレーニングの効果に関する系統レビューを行い、論文を国際誌に掲載した。アジアにおけるMDGsの進捗とその問題点を述べた論文もまた国際誌に掲載した。南アジア、東南アジアにおけるマラリアや母子保健対策においては、コミュニティヘルスワーカーの果たす役割についてフィールド研究を行い、国際誌並びに英文書籍への分担執筆として論文を掲載した。これらの成果はまた主としてアジア太平洋地域における国際学会においても発表した。
臨床的観点からの成果
途上国では医師や看護師等の専門性の高い医療従事者の数が少なく、質の確保も十分ではない。そのような地域において、中間レベルやコミュニティレベルのヘルスワーカーの役割を強化することによって、疾病予防や治療が可能となることを示した。またその働きは、途上国におけるユニバーサルヘルスカバレッジ推進にも寄与しうることを示唆した。
ガイドライン等の開発
以下の儀ドライ作成に貢献した(分担執筆した)。
Transforming and scaling up health professionals’ education and training
World Health Organization, 2013
その他行政的観点からの成果
アジア太平洋保健人材連盟(AAAH)との共同研究の成果として、ベトナムでは政府のプライマリヘルスケア強化の政策枠組みづくりに保健医療従事者偏在に関する研究分析結果が使われた。またバングラデシュでは民間の保健医療教育機関のカリキュラム改善のための資料として本研究の成果が用いられた。
その他のインパクト
平成25年11月23日(土)日本医師会大講堂にて、ハーバード大学公衆衛生大学院・武見国際保健プログラム設立30周年記念シンポジウムが開催され、神馬がメインスピーカーの一人として国民皆保険制度の実現に果たした地域保健の役割に関する講演を行った。その内容は産経新聞誌にとりあげられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
AAAHでの成果発表

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sunguya BF, Poudel KC, Yasuoka J, et al.
Effectiveness of nutrition training of health workers toward improving caregivers’ feeding practices for children aged six months to two years: a systematic review.
Nutrition J. , 12  (2013)
doi: 10.1186/1475-2891-12-66. Review.
原著論文2
Hasegawa A, Yasuoka J, Jimba M, et al.
Integrating child health services into malaria control services of village malaria workers in remote Camobodia: service utilization and knowledge of malaria management of caregivers.
Malaria J , 12  (2013)
doi: 10.1186/1475-2875-12-292.
原著論文3
Sunguya BF, Hinthong W,Jimba M, et al.
Interprofessional education for whom? - challenges and lessons learned from its implementation in developed countries and their application to developing countries:a systematic review.
Plos One , 5  (2014)
doi: 10.1371/journal.pone.0096724. eCollection 2014. Review.
原著論文4
Sunguya BF, Poudel KC, Jimba M, et al.
Nutrition Training Improves Health Workers’Nutrition Knowledge and Competence to Manage Child Undernutrition: A Systematic Review.
Frontiers in Public Health , 1  (2013)
doi: 10.3389/fpubh.2013.00037. Review.
原著論文5
Sunguya BF, Poudel KC, Jimba M, et al.
Efficacy of in-service nutrition training for mid-level providers toimprove feeding practices among HIV-positive children in Tanga, Tanzania: study protocolfor a cluster randomized controlled trial.
Trials , 14  (2013)
doi: 10.1186/1745-6215-14-352.
原著論文6
Miyaguchi M, Yasuoka J,Jimba M, et al.
Female community health volunteers service utilization for childhood illness- improving quality of health services only is not enough: a cross-sectional study in mid-western region, Nepal.
BMC Health Service Res , 14  (2014)
doi: 10.1186/1472-6963-14-383.

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2019-05-23

収支報告書

文献番号
201403004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,500,000円
(2)補助金確定額
6,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,247,570円
人件費・謝金 1,485,165円
旅費 1,394,132円
その他 878,133円
間接経費 1,495,000円
合計 6,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-