宮城県における東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査

文献情報

文献番号
201330030A
報告書区分
総括
研究課題名
宮城県における東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査
課題番号
H25-健危-指定(復興)-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 押谷仁(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 松岡洋夫(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 八重樫伸生(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 永富良一(東北大学 大学院医工学研究科)
  • 南優子(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災から3年が経過したが、被災地域では現在でも、仮設住宅で生活をしている被災者が多い。東北大学地域保健支援センターでは被災後から半年ごとに被災者健康調査を実施し、被災者の心身への健康影響を調査している。
本研究の目的は、被災後の地域住民の生活環境(住居区分)や就労経済状態、心身の健康状態等に関する調査を長期間追跡し、被災者の心身の負担等による健康影響を検討することである。さらに、今後の重大災害時の健康支援のあり方を検討し、被災者の健康管理のために必要な対応を図ることである。また、被災後の地域住民の介護保険認定情報、医療費受療情報について追跡調査を行い、健康状態の推移を追跡・把握することにより、疾病予防及び介護予防に向けた対策を講じることを目的としている。
研究方法
本研究事業は、東日本大震災被災者の支援を目的として平成23年5月に東北大学大学院医学系研究科内に設置された地域保健支援センターの構成員により実施された。
石巻市沿岸部の住民と仙台市若林区の仮設住宅入居者を対象に、年2回の被災者健康調査(アンケート調査)を実施した。アンケート調査は、年齢に応じて以下の通りとした。18歳未満の者に、医療の状況、睡眠、保育・学校や友人に関する状況、行動の変化、保護者のストレスなどを調査した(0歳~中学生までは保護者が回答、高校生相当は本人が回答)。18歳以上の者に、健康状態、食事、睡眠、心理的苦痛、震災の記憶、職業・収入、周囲への信頼感などを調査した。65歳以上の者には基本チェックリストと生活不活発病チェックリストの調査を追加した。また、調査参加者の同意に基づき、医療受療と介護保険認定などに関する追跡調査を開始した。
本研究事業では、当該自治体との連携のもとで、調査結果を被災者の健康支援と自治体の地域保健活動に最大限に活用することを心がけた。具体的には、健診結果の説明(個別相談を含む)、ハイリスク者の抽出と地域保健への活用、心のケアとの連携、運動教室の開催などを実施した。
なお、本調査研究は「疫学研究の倫理指針」を遵守しており、東北大学大学院医学系研究科倫理審査委員会の承認のもとに行われている。調査対象者には被災者健康調査時に文書・口頭などで説明し、書面の同意を得ている。
結果と考察
震災から3年目となる本年度の被災者健康調査では、石巻市で3,994人、仙台市若林区974人の参加を得た。被災者健康調査の結果(総括集計結果や個票)は石巻市、仙台市における被災者の健康支援と保健衛生サービスの実施にあたり有効に活用されていた。
生活の場が「震災と同じ」または「新居」と回答した者は、石巻で約4割、若林でも約2割に達しており、徐々にではあるが生活再建が進んでいる様子がうかがわれた。
石巻市3地区、仙台市若林区のいずれの地区においても、睡眠障害が疑われる者、心理的苦痛が高い者、震災の記憶がある者の割合は改善傾向を示していた。一方、男性では「睡眠障害を疑う」者の割合が増加した年齢区分があり、震災後のストレスは男性でより強い影響を受けていることが示唆された。
未成年調査の結果、こころと行動の変化では、とくに小中学生で「勉強に集中できない様子である」「やる気が起こらない様子である」の割合が増えていた。
運動教室の参加者と非参加者の健康状態・生活習慣の推移を比較した結果、心理的ストレス(K6得点)の経時変化は、参加者と非参加者で有意差を認めなかったが(p=0.913)、主観的健康感(p=0.011)、外出頻度(p=0.002)は有意な改善を認めた。
対象地域では東日本大震災以降、要介護認定者数が増加していた。被災地域では、居住環境が変化したことにより、震災前と比較して対象者の身体活動量が減少している。これにより日常生活が不活発となり、その結果、高齢者において要介護認定者が増加することが示唆された。
結論
震災から3年が経過し、生活再建が進んでいるように見えるが、いまだ多くの住民が仮設住居で生活を行っている。半年ごとに実施している被災者健康調査では、心身への影響として被災生活の長期化による新たな課題も見られている。さらに、復興支援住宅への転居者が増える被災地域では、環境の変化にともなう健康への影響を調査するとともに、地域全体で健康づくりを支援する体制が必要であると思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201330030Z