大学等教育研究機関における就業前及び若手技術者向けの安全工学教育プログラムの提案

文献情報

文献番号
201326008A
報告書区分
総括
研究課題名
大学等教育研究機関における就業前及び若手技術者向けの安全工学教育プログラムの提案
課題番号
H24-労働-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡崎 慎司(国立大学法人 横浜国立大学 安心・安全の科学研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤江 幸一(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 大谷 英雄(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 三宅 淳巳(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 上野 誠也(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 岡 泰資(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 亀屋 隆志(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 小林 剛(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 澁谷 忠弘(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 熊崎 美枝子(国立大学法人 横浜国立大学 大学院環境情報研究院)
  • 笠井 尚哉(国立大学法人 横浜国立大学 安全・安心の科学研究教育センター)
  • 伊藤 大輔(国立大学法人 横浜国立大学 大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、社会構造・産業構造の急激な変化により科学技術がかつてない速度で複雑化・高度化している。このような情勢において、現段階では産業技術や社会システム等を人類が十分にコントロールしきれておらず、事故や産業災害が頻発するという深刻な状況に我々は直面している。科学技術が社会に及ぼす負の効果をできる限り低減化するためには、企業や自治体等の組織によるリスクマネジメントや安全文化の醸成が極めて重要とされているが、団塊世代の大量退職による技術伝承の困難さや若手技術者の資質の低下等でこのような取組が十分効果を発揮できていない現状がある。このような問題を解決するためにも、次世代の産業界の担い手となる若年層の技術者・研究者に対して、時代のニーズに則した効果的な安全教育を施すことは、安心・安全な社会の創生に寄与するだけでなく、彼らを様々な労働災害から守ることにもつながるため極めて重要と考えられる。本研究事業では、大学等高等教育機関において就業前教育の一環として実施できる効果的な安全工学教育カリキュラム例を示すとともに、産業界の若手技術者の安全意識を深化させるための教育プログラムを産業界と連携したニーズ調査に基づいて提案することを目的とした。
研究方法
前年度に開発した教育プログラムに関する評価を産業界へのアンケート等により行い、学生のエンプロイアビリティの向上に資するための情報抽出と教育プログラムの強化を図る。具体的には、現在産業界、学協会、公的研究機関等で産業安全及び労働安全管理分野の指導的な立場にある専門家を招聘し、教育プログラム等の問題点を明確化する。同時に主に京浜京葉工業地帯に所在するモノづくり企業に対するアンケート及びヒアリング調査を行い、就業前教育として企業ニーズに合致しているかを評価する。さらに、企業において新卒社員や中堅技術者の安全意識を向上させる教育プログラムがどのような形で実践されているかを詳細に調査するとともに企業ニーズが高いにもかかわらず効果的に実施されていないような潜在ニーズの高い教育内容に関する情報を抽出する。米国において、化学安全等にかかわる教育を行っている学会等の調査を行い、本教育プログラムを補完するための視聴覚教材等の調査を行う。これらの知見に基づき、化学安全工学、環境安全工学、材料安全工学の各ユニット部分を更に強化し、改訂を行う。
結果と考察
これまでに開発した総合的な安全工学教育プログラムを強化するために、主に京浜京葉工業地帯に所在するモノづくり企業に対するアンケート及びヒアリング調査を行ったところ、就業前教育として概ね企業ニーズに合致しているとの評価を得た。さらに、企業において新卒社員や中堅技術者の安全意識を向上させるために体感教育が相当充実していることが分かった。その根底にあるのは産業現場における世代の移り変わりにより、KYT等で若者が危険を想像できなくなっている状況があり、体感教育に加えてグループ討論も重要視されていた。石油化学系企業の安全活動においては、ワーストケースシナリオの構築としての影響度スクリーニング評価手法、安全性評価手法や事故事例データベースを用いたリスク低減対策に関連した各種教育活動へのニーズが高いことが分かった。それ以外にも近年の化学物質製造施設の爆発火災事故調査によれば、直接原因に対する要因として、技術伝承の不足、安全管理力の低下、ルールの軽視、リスクアセスメント不足などが指摘されており、社内教育の充実により安全を担う人材育成の強化が急務であるという指摘があった。国外調査としては、米国化学プロセス安全センター、米国化学事故調査委員会、米国ウェストバージニア州教育省等の調査を行い、教育プログラムに盛り込むことができる教材や教育システムに関する情報を収集した。
結論
本事業において開発した安全工学教育基盤モジュールは、化学安全・環境安全・材料安全とそれを包括するリスクに関する教育カリキュラムから構成されるが、アンケート調査などから就業前学生や民間企業の若手技術者に対して実施することの有用性や一定のニーズが存在することが明らかとなった。視聴覚教材や演習等を充実させる等、カリキュラムのさらなる改善が必要であるが、この教育プログラムは安全に関する高い意識をもった技術者の育成とその結果としての労働災害の減少に十分資するものと考えられる。特に、各企業においてOJTを実施する体力が減少している近年の経済情勢の中、卒業後に産業界にて主体となって活動する将来の技術者に対して、適切な安全についての教育を事前に実施することができるため、労働災害自主管理に関する能力の早期向上に役立つものと期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201326008Z