日常的な医療の質の評価指標の標準化と公表方法に関する開発研究

文献情報

文献番号
201325008A
報告書区分
総括
研究課題名
日常的な医療の質の評価指標の標準化と公表方法に関する開発研究
課題番号
H24-医療-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
河北 博文(公益財団法人日本医療機能評価機構 財団)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 邦彦(日本医師会 常任理事)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院 院長)
  • 稲波 弘彦(社団法人全日本病院協会 理事)
  • 亀田 俊忠(公益財団法人日本医療機能評価機構 客員研究主幹)
  • 森實 敏夫(公益財団法人日本医療機能評価機構 客員研究主幹)
  • 山口 直人(東京女子医科大学衛生学公衆衛生学II 主任教授)
  • 橋本 廸生(公益財団法人日本医療機能評価機構 理事)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部社会医学講座 教授)
  • 後 信(公益財団法人日本医療機能評価機構 理事)
  • 今中 雄一(公益財団法人日本医療機能評価機構 理事)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,454,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「医療の質」について、標準化された医療の質指標を用いて評価・公表されるようになれば、医療の質に関する情報が国民に開示されるだけでなく、医療の質向上に対する医療機関および医療従事者自身の動機付けとなることが期待され、日本全体の医療の質の向上および均てん化に貢献できる。本研究では、1. 医療の質に関する指標ライブラリの構築、2. 医療の質に関する指標の標準化 (指標の定義プールの検討・設定)、3. 医療の質の評価・向上に関する取り組みの共有、4. 医療の質評価に関する情報公開のあり方 の4つのテーマに沿って研究を進めた。
研究方法
H25年度は、前述の1.医療の質に関する指標ライブラリの構築 および2.医療の質に関する指標の標準化 として、前年度に設計した「医療の質指標ライブラリ」および指標プールのデータを更新し、「医療の質指標ポータルサイト」として公開した。
また、4.医療の質評価に関する情報公開のあり方について、患者・家族等一般市民が医療に関する情報をどのように入手し、評価しているのかをインターネットを通じたアンケート調査によって把握した。さらに、医療の質に関する情報の公開について患者団体やマスコミ等の立場から講演いただき、今後の情報公開のあり方を検討する目的でクォリティ・インディケータ・フォーラム (以下「QIフォーラム」) を開催し、意見交換を行った。
結果と考察
1. 医療の質指標ライブラリおよび指標プールの構築
初年度に設計・開発した「医療の質指標ライブラリ」のデータをアップデートし「医療の質指標ポータルサイト」として公開した (http://quality-indicatior.net/)。疾患名や指標の種類で絞り込めるようにし、同種の指標の定義を比較しやすくした。また、後述の共通指標定義プールや医療の質公表団体、公表病院等のリンク集を設け、指標を用いた医療の質評価に取り組む医療機関や、医療の質評価に関心のある患者・マスメディア等一般国民が必要な情報にアプローチしやすい環境を整備した。
2. 医療の質指標の定義プールの設定
指標の標準化については、診療ガイドラインやエビデンスに基づく指標の定義をプールして共同で維持、管理、発展できるようにすることとした。平成25年度は、平成24年度に設定した「共有の指標定義プール」を前述の「医療の質指標ポータルサイト」に掲載し、医療関係者、患者、マスコミ等、幅広いユーザに利用いただけるようにした。
3. 医療の質の評価・向上に関する取り組みの共有
本年度は、医療機関における取り組みの共有については特段の活動は実施しなかった。
4. 質の指標の公表のあり方について
H25年度は、インターネットを通じて患者・家族等一般市民の意見を収集し、医療の質の評価および指標の標準化と公表に向けた検討の基礎資料とした。さらに、H25年度QIフォーラムでは、患者団体やマスコミの立場から講演いただいた。講演の中では、医療者が想像する患者が望む情報と患者自身が望む情報にギャップがあることや、「情報過多のなかで信頼できる情報をどのように判断したらよいかわからない」という患者の悩みが課題として提示された。また、ディスカッションでは、「かかりつけ医と相談しながら、個々の患者に合った情報を収集できるしくみがあるとよい」「他の病院よりも悪い値であったとしても、データを公表していない病院より公表している病院のほうが信頼できる」等の意見があった。
今後、医療の質に関する情報を一般に公開していく際には、医療者が想像する患者像に沿って医療者が公開方法を判断するのではなく、実際の患者とコミュニケーションしながら、患者が望む情報や医療者が患者に対して有益と思う情報などを、適切なコメントを付記して公開することが重要であることが示唆された。
結論
指標ライブラリの公開およびQIフォーラムの開催により、病院等において医療の質の評価・向上に取り組んでいる職員をサポートすることができ、さらに自律的・積極的な活動を促すことができようになった。また、患者やマスメディアを交えて公表のあり方を検討することにより、医療者だけでなく、患者や一般国民にとってもわかりやすく利用しやすいかたちで取り組みの成果を公表するためのポイントを共有することができた。
本研究の成果により、わが国の医療機関において指標を用いた医療の質の評価や継続的な改善の取り組みが進展し、また、その結果を患者・国民に対してわかりやすく公表することができるようになることが期待される。
以上のことから、本研究は、わが国の医療の質の向上・均てん化、および医療に対する患者・国民の信頼の確保に大きく寄与するものであるといえる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201325008B
報告書区分
総合
研究課題名
日常的な医療の質の評価指標の標準化と公表方法に関する開発研究
課題番号
H24-医療-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
河北 博文(公益財団法人日本医療機能評価機構 財団)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 邦彦(社団法人日本医師会 常任理事)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院 院長)
  • 稲波 弘彦(社団法人全日本病院協会 理事)
  • 亀田 俊忠(公益財団法人日本医療機能評価機構 客員研究主幹)
  • 森實 敏夫(公益財団法人日本医療機能評価機構 客員研究主幹)
  • 山口 直人(東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学II講座 主任教授)
  • 橋本 廸生(公益財団法人日本医療機能評価機構 理事)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部社会医学講座 教授)
  • 後 信(公益財団法人日本医療機能評価機構 理事)
  • 今中 雄一(公益財団法人日本医療機能評価機構 理事)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
標準化された指標を用いて医療の質が評価・公表されるようになれば、医療の質に関する情報が国民に開示されるだけでなく、医療の質向上に対する医療機関および医療従事者自身の動機付けとなることが期待され、医療の質の向上および均てん化に貢献できる。本研究では、1. 医療の質に関する指標ライブラリの構築、2. 医療の質に関する指標の標準化 (指標の定義プールの検討・設定)、3. 医療の質の評価・向上に関する取り組みの共有、4. 医療の質評価に関する情報公開のあり方 に沿って研究を進めた。
研究方法
初年度は、国内で先行して実施されている診療の質評価指標を収集し、質指標を閲覧・比較できるwebサイト「医療の質指標ライブラリ」を設計した。また、DPCデータを利用した指標を中心に、今後の指標の定義の標準化の土台として質指標の定義の集合体である指標プールを構築した。さらに、指標を活用した改善事例を紹介し、より多くの病院での実践を促す目的で「クォリティ・インディケータ・フォーラム (以下QIフォーラム)」を開催した。一方、指標の公表のあり方について、患者・家族、マスメディア等、医療提供者以外の立場からも意見を収集し検討を進めた。H25年度は「医療の質指標ライブラリ」および指標プールのデータを更新し「医療の質指標ポータルサイト」として公開した。また、医療の質に関する情報公開の基礎データとして、一般市民が医療に関する情報をどのように入手し評価しているのかをwebアンケート調査によって把握した。さらに、QIフォーラムにおいて医療の質に関する情報の公開について患者団体やマスコミ等の立場から講演いただき、今後の情報公開のあり方について意見交換を行った。
結果と考察
1. 医療の質指標ライブラリおよび指標プールの構築
初年度に「医療の質指標ライブラリ」の設計・開発を行った。疾患名や指標の種類で指標を絞り込めるようにし、同種の指標の定義を比較しやすいようにした。下記「共有の指標定義プール」と併せてデータを更新し「医療の質指標ポータルサイト」として公開した (http://quality-indicatior.net/)。
2. 医療の質指標の定義プールの設定
指標の標準化について、指標の定義をプールして共同で維持、管理、発展できるようにすることとした。平成23年度厚生労働科学研究補助金 (地域医療基盤開発推進研究事業) の成果を活用してDPCデータに基づく「共有の指標定義プール」を設定した。
3. 質の改善事例の情報交換と促進
初年度のQIフォーラムでは、質指標を活用した改善の実績を4病院に講演いただいた。PDCAのCおよびAについてそれぞれ工夫している状況を共有することで、他の病院での活動に刺激を与えることができた。
4. 質の指標の公表のあり方について
班会議委員に患者・家族およびマスメディアの立場の研究協力者に参加いただき、患者や家族等一般国民のニーズの把握に努めた。二年目は特にインターネットを通じて一般市民の意見を収集したほか、QIフォーラムにおいて医療の質に関する情報の公開について患者団体やマスコミの立場から講演いただいた。講演の中では、医療者が想像する<患者が望む情報>と患者自身が望む情報にギャップがあることや、「情報過多のなかで信頼できる情報をどのように判断したらよいかわからない」という患者の悩みが提示された。また、ディスカッションでは「かかりつけ医と相談しながら個々の患者に合った情報を収集できるしくみがあるとよい」「他の病院よりも悪い値であったとしてもデータを公表していない病院より公表している病院のほうが信頼できる」等の意見があった。今後、医療の質に関する情報を一般に公開していく際には、医療者が想像する患者像に沿って医療者が公開方法を判断するのではなく、実際の患者とコミュニケーションしながら、患者が望む情報や医療者が患者に対して有益と思う情報などを、適切なコメントを付記して公開することが重要であることが示唆された。
結論
指標ライブラリの公開およびQIフォーラムの開催により、病院等において医療の質の評価・向上に取り組んでいる職員をサポートすることができ、さらに自律的・積極的な活動を促すことができる。また、患者やマスメディアを交えて公表のあり方を検討することにより、医療者だけでなく患者や一般国民にもわかりやすく利用しやすいかたちで成果を公表できるようになる。以上により、医療機関における指標を用いた医療の質の評価や継続的な改善が進展するだけでなく、その結果を患者・国民に対してわかりやすく公表できるようになると期待される。したがって、本研究はわが国の医療の質の向上および医療に対する患者・国民の信頼の確保に大きく寄与するものであるといえる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201325008C

収支報告書

文献番号
201325008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,190,000円
(2)補助金確定額
3,190,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 156,595円
人件費・謝金 233,328円
旅費 259,840円
その他 1,969,975円
間接経費 736,000円
合計 3,355,738円

備考

備考
補助金確定額との差額 165,738円については、自己資金 165,376円および預金利息 362円により支出した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-