網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201324038A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-116
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小椋 祐一郎(公立学校法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究科)
  • 稲谷 大(福井大学 大学院医学研究科)
  • 大鹿 哲郎(筑波大学 大学院医学研究科)
  • 大野 京子(東京医科歯科大学 大学院医学研究科)
  • 坂本 泰二(鹿児島大学 大学院医学研究科)
  • 白神 史雄(岡山大学 大学院医学研究科)
  • 高橋 寛二(関西医科大学 大学院医学研究科)
  • 高橋 政代(理化学研究所)
  • 辻川 明孝(香川大学 大学院医学研究科)
  • 寺崎 浩子(名古屋大学 大学院医学研究科)
  • 西田 幸二(大阪大学 大学院医学研究科)
  • 村上 晶(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 安川 力(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 山本 修一(千葉大学 大学院医学研究科)
  • 湯沢 美都子(日本大学駿河台病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
52,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は難治性である加齢黄斑変性、網膜色素変性、病的近視などの網膜脈絡膜萎縮をきたす疾患群と視神経萎縮をきたす疾患を対象としてその実態調査、病態解明、治療法および予防法開発を目的とする。
 加齢黄斑変性は先進国での高齢者失明の主要原因であり、本邦においても近年増加している。現在、抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法と光線力学的療法が一定の治療効果を発揮しているが、再発、反復治療の必要性、合併症、高額な治療費が問題である。日本人においては疾患のサブタイプの頻度や遺伝子変異の特徴が欧米人と異なっており、本研究班では我が国独自の診断基準や治療指針の作成を行ってきた。今後、これらに基づいた臨床研究と病態研究の結果から、各サブタイプ、病状、遺伝背景に基づいたテーラーメード医療や予防法の確立を目指す。
 網膜色素変性に関しても、遺伝子スクリーニングによる早期診断のための日本人特有の遺伝子異常のデータベース化と、早期治療、進行防止のための遺伝子治療や神経保護治療の可能性について検討する。また神経保護効果を有する薬剤やサプリメントなどの投与による視野欠損の予防効果などを検討する。
 病的近視は高度近視眼において後部ぶどう腫などの眼球形状の変化と共に、最終的に脈絡膜新生血管や黄斑部萎縮による視力障害の原因となる。MRIや眼科画像機器により眼球形状と病態の関係の解明と予防法の開発を目指す。
 視神経萎縮は様々な原因で発症し、不可逆性の障害を残す。本研究では神経保護治療による視神経萎縮の進行阻止、並びにiPS細胞等の幹細胞による網膜再生治療と人工視覚による失われた視機能の回復を目的とする。
研究方法
(1) 加齢黄斑変性は高齢者の主要な失明原因であり、近年増加傾向にある重大疾患である。光線力学的療法(PDT)と抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が主要な治療法であるが、病型別に最適な治療法を検討した。iPS細胞を利用した再生医療の臨床応用を進めた。(2) 網膜色素変性症は遺伝性の網膜変性疾患であるが、日本人特有の遺伝子異常が報告されており、遺伝子治療や神経保護治療のための遺伝子データベース確立を目指す。また、遺伝子治療の臨床試験を進めた。(3) 高度近視眼における眼球形状をMRIおよび高深達OCTで観察、病態との関連を解析する。(4) 視神経萎縮は緑内障、球後視神経炎など、様々な疾患で視力低下の原因となる病態である。視神経萎縮の予防のための神経保護治療の開発と、一度、視機能が低下した眼に対する幹細胞を用いた網膜再生治療と人工視覚の開発の研究を推進している。視覚障害者の原因疾患の調査を行った。
結果と考察
加齢黄斑変性に対しては、PDT、抗VEGF療法を中心に一定の治療効果が得られるようになり、病型別の治療効果を総合して作成した治療指針が国内における今後の治療水準を向上させ、加齢黄斑変性による社会的失明の可能性が減少することが期待される。さらに有効な治療法や予防法開発のための臨床研究、病態解明が進むものと思われる。網膜色素変性や視神経萎縮においては、原因遺伝子の解析やデータベースの構築が進められ、また、遺伝子導入療法も臨床応用に向けて開発中である。iPS研究を代表とする萎縮した網膜や視神経の再生医療や人工視覚の臨床応用は、失明患者が熱望するものであり、今後も進展を目指す必要がある。
結論
新たな治療法の導入により、加齢黄斑変性の視力予後は改善傾向にある。今後、新規治療法の開発にも期待したい。病的近視の病態について理解が進んだため、今後の進行予防の開発を模索する。網膜色素変性や視神経萎縮に対しては、原因遺伝子の解析やデータベースの構築が進められている。遺伝子治療の臨床試験が進行中である。萎縮した網膜や視神経に対して、再生医療や人工視覚の開発を引き続き目指して行く。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201324038B
報告書区分
総合
研究課題名
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-116
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小椋 祐一郎(公立学校法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は難治性である加齢黄斑変性、網膜色素変性、病的近視などの網膜脈絡膜萎縮をきたす疾患群と視神経萎縮をきたす疾患を対象としてその実態調査、病態解明、治療法および予防法開発を目的とする。
(1) 加齢黄斑変性は先進国での高齢者失明の主要原因であり、本邦においても近年増加している。現在、抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法と光線力学的療法が一定の治療効果を発揮しているが、再発、反復治療の必要性、合併症、高額な治療費が問題である。日本人においては疾患のサブタイプの頻度や遺伝子変異の特徴が欧米人と異なっており、本研究班では我が国独自の診断基準や治療指針の作成を行ってきた。今後、これらに基づいた臨床研究と病態研究の結果から、各サブタイプ、病状、遺伝背景に基づいたテーラーメード医療や予防法の確立を目指す。
(2) 網膜色素変性に関しても、遺伝子スクリーニングによる早期診断のための日本人特有の遺伝子異常のデータベース化と、早期治療、進行防止のための遺伝子治療や神経保護治療の可能性について検討する。また神経保護効果を有する薬剤やサプリメントなどの投与による視野欠損の予防効果などを検討する。
(3) 病的近視は高度近視眼において後部ぶどう腫などの眼球形状の変化と共に、最終的に脈絡膜新生血管や黄斑部萎縮による視力障害の原因となる。MRIや眼科画像機器により眼球形状と病態の関係の解明と予防法の開発を目指す。
(4) 視神経萎縮は様々な原因で発症し、不可逆性の障害を残す。本研究では神経保護治療による視神経萎縮の進行阻止、並びにiPS細胞等の幹細胞による網膜再生治療と人工視覚による失われた視機能の回復を目的とする。
研究方法
(1) 加齢黄斑変性は高齢者の主要な失明原因であり、近年増加傾向にある重大疾患である。光線力学的療法(PDT)と抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が主要な治療法であるが、病型別に最適な治療法を検討した。iPS細胞を利用した再生医療の臨床応用を進めた。(2) 網膜色素変性症は遺伝性の網膜変性疾患であるが、日本人特有の遺伝子異常が報告されており、遺伝子治療や神経保護治療のための遺伝子データベース確立を目指す。また、遺伝子治療の臨床試験を進めた。(3) 高度近視眼における眼球形状をMRIおよび高深達OCTで観察、病態との関連を解析する。(4) 視神経萎縮は緑内障、球後視神経炎など、様々な疾患で視力低下の原因となる病態である。視神経萎縮の予防のための神経保護治療の開発と、一度、視機能が低下した眼に対する幹細胞を用いた網膜再生治療と人工視覚の開発の研究を推進している。視覚障害者の原因疾患の調査を行った。
結果と考察
加齢黄斑変性に対しては、PDT、抗VEGF療法を中心に一定の治療効果が得られるようになり、病型別の治療効果を総合して作成した治療指針が国内における今後の治療水準を向上させ、加齢黄斑変性による社会的失明の可能性が減少することが期待される。さらに有効な治療法や予防法開発のための臨床研究、病態解明が進むものと思われる。網膜色素変性や視神経萎縮においては、原因遺伝子の解析やデータベースの構築が進められ、また、遺伝子導入療法も臨床応用に向けて開発中である。iPS研究を代表とする萎縮した網膜や視神経の再生医療や人工視覚の臨床応用は、失明患者が熱望するものであり、今後も進展を目指す必要がある。
結論
新たな治療法の導入により、加齢黄斑変性の視力予後は改善傾向にある。今後、新規治療法の開発にも期待したい。病的近視の病態について理解が進んだため、今後の進行予防の開発を模索する。網膜色素変性や視神経萎縮に対しては、原因遺伝子の解析やデータベースの構築が進められている。遺伝子治療の臨床試験が進行中である。萎縮した網膜や視神経に対して、再生医療や人工視覚の開発を引き続き目指して行く。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201324038C

成果

専門的・学術的観点からの成果
加齢黄斑変性、病的近視、視神経萎縮、網膜色素変性症の病態解明のための新知見が得られた。
臨床的観点からの成果
加齢黄斑変性の最善の治療方法の確立に貢献した。網膜色素変性症に対する遺伝子治療の臨床試験が開始した。
ガイドライン等の開発
加齢黄斑変性治療指針を作成
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
滲出型加齢黄斑変性に対するiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞シートの移植の臨床試験がマスコミに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
87件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
71件
学会発表(国際学会等)
26件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201324038Z