特発性心筋症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201324025A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性心筋症に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-022
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(独立行政法人国立循環器病研究センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 裕之(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 久保田 功(山形大学 医学部)
  • 下川 宏明(東北大学大学院  医学系研究科)
  • 小室 一成(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 永井 良三(自治医科大学)
  • 福田 恵一(慶應義塾大学 医学部)
  • 磯部 光章(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経医療研究センター 疾病研究第二部)
  • 室原 豊明(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 山岸 正和 (金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 木村 剛(京都大学大学院 医学研究科)
  • 中谷 武嗣 (国立循環器病研究センター 移植部)
  • 斎藤 能彦(奈良県立医科大学 第一内科)
  • 矢野 雅文(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 砂川 賢二(九州大学大学院  医学研究院)
  • 朝倉 正紀(国立循環器病研究センター 臨床研究企画室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
63,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、1974年に旧厚生省特定疾患調査研究班として設立され、その後三十年以上、特発性心筋症の疫学・病因・病態・診断・治療を明らかにするため、基礎的見地および臨床的見地から、継続して研究が進められてきた。本研究班の研究から、遺伝子異常、Caハンドリング、p53シグナリング、増殖因子などの役割が明らかにされてきた。またiPS細胞の登場で、拡張型心筋症に対する診断や細胞治療の可能性も注目されている。本研究班では、MRIなどの画像診断を駆使し、従来の心筋生検と比較し、MRIの有用性を明らかにしてきた。これらの研究結果を臨床に還元することを目標とした。本研究班のもう一つの重要な使命は、研究成果の社会への還元である。特発性心筋症に関する最新の情報を患者および家族を中心とした国民に積極的に発信していくことを努力する。本目標を達成するために、前年度に引き続き、研究を進めることを目的とした。
研究方法
特発性心筋症の病因・病態解明および新たな診断・治療法の確立を目指すべく、①特発性心筋症患者の診療実態の把握、②基礎的検討および臨床的検討の両側面から検討を行う。かかる成果を創出するために、本研究班を3層 (全体研究、サブグループ研究、個別研究)に分けて研究を進めることを継続して行った。
結果と考察
全体研究として、前向き登録研究を継続的に進めた。
サブグループ研究として、特発性心筋症に関する課題を解決するべく、研究分担者数名で構成し、サブグループとしてこれらの課題に対する検討を進めた。前年度で検討された下記のサブグループ研究に関して、準備および遂行を進めた。①肥大型心筋症における遺伝子異常の頻度に関する検討とその予後の全国調査:肥大型心筋症を呈し、家族歴を有する患者において、突然死、心不全死などを高率に発症する患者が存在する。これらの患者の予後は悪く、予後が不良なハイリスク患者の同定を行うことが切に求められている。我が国における家族歴を有する肥大型心筋症における遺伝子異常の頻度を同定するために、国立循環器病研究センター、大阪大学、金沢大学の3施設で検討することとした。②心不全患者の再入院を推定する数式化に関する研究:急性心不全患者で入院した後の予後が不良であり、入院後の予後改善が全世界的に大きな課題となっている。心不全患者の再入院リスクを評価できれば、心不全患者の予後改善のみならず、医療費軽減に大きく貢献できる。そこで、心不全患者の再入院を推定する数式を同定し、その有効性を評価することとした。③心臓サルコイドーシスに関する新たな診断基準策定に向けた検討:心臓サルコイドーシスは、心不全を呈する予後不良な疾患である。心臓移植に至る症例に一定頻度存在していることも知られており、心臓サルコイドーシスの診断は極めて重要と考えられている。しかしながら、心臓サルコイドーシスの確定的な診断法は全世界で存在しないのが現状である。画像診断の進歩などに伴い、心臓サルコイドーシスの診断ガイドラインの改定を目標に、日本心不全学会などとの共同で、新たなガイドライン策定に向けた調査研究を開始することとした。個別研究として、心不全の新たな標的因子の探索のため、次世代シークエンスを用いたRNA Seqとマイクロアレイ法の比較を行った。マイクロアレイ法の解析により得られた心不全により上昇した遺伝子群の上位は、すべてRNA Seq法でも同定が可能であった。一方、RNA Seq法で観察された上位20遺伝子の心不全関連候補遺伝子のうち、半数程度がマイクロアレイ法では同定が出来なかった。今後は、両者を合わせた解析を行うことで、従来と異なった候補遺伝子の絞り込みが可能であると思われた。患者に関する還元として、特発性心筋症を含めた心不全患者向けの市民公開講座を開催した。今年度は、2014年2月16日(日)14時~16時にて、金沢大学附属病院宝ホールで、「心臓突然死から身を守る:心筋症を理解しよう」を日本循環器学会北陸支部と共催で、開催した。その他、今年度は、文部科学省再生医療実現化プロジェクト「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」と共同で、心筋症患者のiPS細胞を用いた診断法、治療法の開発を進めることとなった。
結論
特発性心筋症に関する病因・病態の解明および診断・治療法の開発に向けて、班代表として、個別研究、サブグループ研究、全体研究の調整を進めてきた。また、市民公開講座を行い、患者への知識提供を試みた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201324025B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性心筋症に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-022
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(独立行政法人国立循環器病研究センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 裕之(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 久保田 功(山形大学 医学部)
  • 下川 宏明(東北大学大学院  医学系研究科)
  • 小室 一成(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 永井 良三(自治医科大学)
  • 福田 恵一(慶應義塾大学 医学部)
  • 磯部 光章(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経医療研究センター 疾病研究第二部)
  • 室原 豊明(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 山岸 正和(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 木村 剛(京都大学大学院 医学研究科)
  • 中谷 武嗣(国立循環器病研究センター 移植部)
  • 斎藤 能彦(奈良県立医科大学 第一内科)
  • 矢野 雅文(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 砂川 賢二(九州大学大学院  医学研究院)
  • 朝倉 正紀(国立循環器病研究センター 臨床研究企画室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
永井良三:所属機関変更 平成24年3月31日、東京大学大学院医学系研究科退官、平成24年4月1日、自治医科大学 小室一成:所属機関変更 平成25年1月1日、大阪大学大学院医学系研究科より東京大学大学院医学系研究科 今泉 勉:平成23、24年度研究分担者 元 久留米大学 医学部 和泉 徹:平成23年度研究分担者 元 北里大学 医学部 鄭 忠和:平成23年度研究分担者 元 鹿児島大学大学院 循環器・呼吸器・代謝内科学

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、1974年に旧厚生省特定疾患調査研究班として設立され、その後三十年以上、特発性心筋症の疫学・病因・病態・診断・治療を明らかにするため、基礎的見地および臨床的見地から、継続して研究が進められてきた。本研究班では、継続的に特発性心筋症の病態解明、診断法・治療法の開発を進め、これらの研究結果を臨床に還元するべく、展開していくことを目的とする。
研究方法
特発性心筋症の病因・病態解明および新たな診断・治療法の確立を目指すべく、①特発性心筋症患者の診療実態の把握、②基礎的検討および臨床的検討の両側面から検討を行う。かかる成果を創出するために、本研究班を3層 (全体研究、サブグループ研究、個別研究)に分けて研究を進めることとした。
結果と考察
全体研究として、「特発性心筋症の前向き登録研究」を継続して本研究班においても行い、2月末を目標に収集を続けているところである。サブグループ研究として、特発性心筋症に関する課題を解決するべく、研究分担者数名で構成し、サブグループとしてこれらの課題に対する検討を進めた。前年度で検討された下記のサブグループ研究に関して、準備および遂行を進めた。①肥大型心筋症における遺伝子異常の頻度に関する検討とその予後の全国調査:256名の肥大型心筋症を有する患者さんにおいて、遺伝子変異とその予後の関係について検討した。その結果、サルコメアーに関係する遺伝に異常を有する症例においてはそうでない症例と比べて予後不良であることが明らかになった。②心不全患者の再入院を推定する数式化に関する研究:特発性心筋症を主体とした慢性心不全251症例について、退院時の身体所見データ・社会活動データ・血液検査・心エコー検査・投薬データなどから、その患者さんの予後が推定できる数式を作成することに成功した。また、その数式の妥当性を前向き観察研究で検討中である。③心臓サルコイドーシスに関する新たな診断基準策定に向けた検討:135症例の心サルコイド―シス症例を後ろ向きに集め、その特徴から、診断基準を暫定的に作成した。そのデータを日本心不全学会と協力して解析し、日本循環器学会からガイドラインとして発刊する方向で調整中である。④肥大型心筋症から拡張相に向けたデータベース構築:北海道大学を中心に、拡張相に至る肥大型心筋症のデータベース構築に向けた研究を進めた。北海道大学の倫理委員会にて承認を得た。⑤iPS細胞を用いた特発性心筋症に関する診断・治療法の開発:文部科学省 再生医療の実現化プロジェクト「iPS 細胞を用いた遺伝性心筋疾患の病態解明および治療法開発」(主任研究者 小室一成教授)と緊密に連携して、研究を進めた。本研究班では、小室班で作成された登録票等を用いて、家族歴を有する拡張型心筋症患者からの試料収集に向けた研究計画を進めた。個別研究として、特発性心筋症とそれに引き続き生じる重症心不全における病因・病態の解明や新たな診断・治療法の模索に関する研究が各分担研究者により行われた。詳細は、各班員の項に譲るが、基礎的研究~臨床的研究までさまざまなレベルでの研究が多角的に行われた。ウイルス・免疫の関与、代謝障害の関与、テネイシンCなどの新たな分子マーカーの臨床応用、遺伝子診断、iPS細胞をはじめとした細胞療法の可能性、心不全におけるp53シグナリングの関与、重症心不全の遺伝子発現プロファイル、心腎連関などが検討され、研究成果に関して、年2回の研究班発表会で、情報交換、意見交換が行われた。患者への還元を目的として、特発性心筋症を含めた心不全患者向けの市民公開講座を毎年度下記の通り、開催した。:平成23年度 2012年3月8日(火)15時~17時30分「心筋症について知ろう」国立循環器病研究センター 講堂:平成24年度 2013年2月17日(日)14時~16時「心不全ってどんな病気?心不全を知る、防ぐ、治す!」東京医科歯科大学 講堂 日本心不全学会と共催:平成25年度 2014年2月16日(日)14時~16時「心臓突然死から身を守る:心筋症を理解しよう」金沢大学附属病院 宝ホール 日本循環器学会北陸支部と共催
結論
特発性心筋症に関する病因・病態の解明および診断・治療法の開発に向けて、個別研究、サブグループ研究、全体研究を進めてきた。また、市民公開講座を行い、患者への知識提供を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201324025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究において、心筋症の病態解明、診断法および治療法の探索を施行した。本研究班は、心筋症診療に長けた日本全体を網羅した研究班であり、臨床面および基礎面からの多角的研究を進めることで、我が国における心筋症の診療を促進してきた。特に、iPS細胞、遺伝子診断、新たな画像診断等において進歩が得られた。
臨床的観点からの成果
本研究では、心筋症の診断および分類に重点を置いた解明がなされた。幾つかのバイオマーカーが提唱されたのに加えて、MRIなどの新たな画像診断の有用性について検討され、心筋症への臨床応用が進められているところである。また、心筋症による心不全の再入院が大きな課題であるが、数式化による予測の検討も進められている。
ガイドライン等の開発
本研究では、心臓サルコイドーシスによるガイドラインの策定にむけて、サルコイドーシス学会と当研究班が共同で、登録研究が進められている。その結果をもとに、新たな心臓サルコイドーシスのガイドラインが策定される予定である。
その他行政的観点からの成果
特発性心筋症は、拡張型心筋症に加えて、重症の肥大型心筋症も難病の特定疾患として指定された。心筋症は、最終的に心臓移植に至る疾患であり、これらの疾患の診断および分類をより正確に行うことが行政的に有用となる。本心筋症では、その点に重点をおき、MRIやiPS細胞などを用いた先進的診断法の開発に積極的に取り組んできた。
その他のインパクト
特発性心筋症研究班、研究者全員による総会を年2回開催、意見交換し、全国の特発性心筋症の診療レベルの維持向上に貢献した。また毎年、研究成果の社会還元として、特発性心筋症を含めた心不全患者向けの市民公開講座を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
56件
その他論文(和文)
19件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
班全体として出願なし
その他成果(特許の取得)
0件
班全体として出願なし
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
各年度毎、市民公開講座を開催した。 平成23年度 大阪 平成24年度 東京 平成25年度 金沢

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kioka H,…, Asakura M,…, Kitakaze M, et al.
Evaluation of intra-mitochondrial ATP levels identifies G0/G1 switch gene 2 as a positive regulator of oxidative phosphorylation.
Proceeding National Academy Science (U.S.A) , 111 (1) , 273-278  (2013)
原著論文2
Yoshida A, …,, Asakura M, Kitakaze M.
Direct comparison of the diagnostic capability of cardiovascular magnetic resonance and endomyocardial biopsy in patients with heart failure.
Eur J Heart Fail. , 15 , 166-175  (2013)
原著論文3
Takahashi A, Asakura M,…, Kitakaze M.
Dipeptidyl-peptidase IV inhibition improves pathophysiology of heart failure and increases survival rate in pressure-overloaded mice.
Am. J. Physiol. , 304 (10) , H1361-H1369  (2013)
原著論文4
Yoshida A, Asakura M, …, Kitakaze M.
Derivation of a mathematical expression for predicting the time to cardiac events in patients with heart failure: A retrospective clinical study.
Hypertension Res , 36 , 450-456  (2013)
原著論文5
Takahama H, , Asakura M, , Kitakaze M, et al.
Liposomal amiodarone augments anti-arrhythmic effects and reduces hemodynamic adverse effects in an ischemia/reperfusion rat model.
Cardiovasc. Drugs Ther. , 27 (2) , 125-132  (2013)
原著論文6
Yoshida A,…, Asakura M, …, Kitakaze M.
H2 mediates cardioprotection via involvements of KATP channels and permeability transition pores of mitochondria in dogs.
Cardiovasc. Drugs Ther. , 26 (3) , 217-226  (2012)
原著論文7
Hashimoto S,…, Asakura M,…, Kitakaze M .
The utility of echocardiographic evaluation of donor hearts upon the organ procurement for heart transplantation.
Journal of Cardiology , 57 , 215-222  (2011)
原著論文8
Ohara T, …, Asakura M, …, Kitakaze M.
Dynamic Changes in Plasma Adiponectin Levels in Acute Decompensated Heart Failure.
Journal of Cardiology , 58 (2) , 181-190  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201324025Z