急性高度難聴に関する調査研究

文献情報

文献番号
201324024A
報告書区分
総括
研究課題名
急性高度難聴に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小川 郁(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 喜多村 健(東京医科歯科大学 医学部)
  • 中島 務(名古屋大学 医学部)
  • 宇佐美 真一(信州大学 医学部)
  • 岡本 牧人(北里大学 医学部)
  • 暁 清文(愛媛大学 医学部)
  • 福田 諭(北海道大学 医学部)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学 医科大学)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部)
  • 原 晃(筑波大学 医学部)
  • 福島 邦博(岡山大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では対象疾患を1)急性高度感音難聴(突発性難聴、外リンパ瘻、ムンプス難聴、急性低音障害型感音難聴、急性音響性感音難聴)と2)進行性または慢性高度感音難聴(遺伝性難聴、特発性進行性感音難聴、加齢性難聴(老人性難聴)、騒音性難聴)の高度感音難聴として、高度感音難聴を呈する疾患の難聴発症メカニズムを解明して、各標準的な治療方針を定めて、治療・予防法を確立することが目標である。今回は特に10年毎に行ってきた急性感音難聴の全国疫学調査を実施することと高度感音難聴発症に関与する遺伝子または遺伝子変異を検出し、難聴発症機構を分子細胞レベルで解明することを大きな目標の一つとする。
研究方法
1. 突発性難聴の全国疫学調査は過去4回施行しているが、今回は10年に1回の全国疫学調査の時期にあたり、疫学調査を行う。
2. 外リンパ瘻調査研究班(池園哲郎班長)と協力して外リンパ瘻の発症頻度およびその臨床的特徴に関する全国調査を行い、その診断基準の見直しを行う。
3. 突発性難聴をはじめとする急性感音難聴のQOLについてSF-36、HHIAなどの調査票を用いの調査を行う。
4. 各急性高度難聴の断基準を見直し、診療ガイドライン作成を目指す。
5. 突発性難聴モデル、急性音響性難聴モデル、薬剤性難聴モデルを用いてフリーラジカルスカベンジャー、アポトーシス抑制関連薬剤、アルドース還元酵素阻害薬による治療および予防効果について検討する。
6. 副腎皮質ステロイドの鼓室内投与に関する実験的検討を行い、その適切な投与法を検討する。また、FNK-PTDタンパク薬剤の投与経路として鼓室内、蝸牛窓経由の局所投与による有効性および新しい正円窓手術モデルを用いて検証する。
7. 突発性難聴の関連遺伝子を検索し、突発性難聴の発症や治療に対する反応性に関する遺伝的背景を明確にする。ゲノムワイドの相関解析等の手法を用いて特発性両側性感音難聴の原因遺伝子の解析を進める。
結果と考察
1. 今回は岩手、愛知、愛媛県での突発性難聴の疫学調査を行なった。限定した地域の調査でもあり、診療所も含めた調査を行なった。その結果、突発性難聴の発症数は人口10万人対60.9人であった。この発症率から全国での発症率に換算すると年間発症は約8万人と推定された。今回は診療所も含めた調査であり、より実態に近いデータが得られたと考えられる。
2. 外リンパ瘻調査研究班と協力して外リンパ瘻の診断基準の見直しを行った。新しいコクリン蛋白による診断を組み込み、画期的な診断基準になったと考えられる。
3. 急性感音難聴のQOLについて調査した。先天性または幼少児期に発症した片側高度難聴症例と突発性難聴症例の2群で比較検討した結果、片側難聴群ではQOLは低下しなかったがSD群では主に精神面のQOLが低下していた。SD群のハンディキャップは中等度の障害レベルであった。
4. 各急性高度難聴の診断基準を見直した。診療ガイドライン作成のためのコンテンツを決めた。
5. 実験動物モデルによる検討によって鼓室内薬剤投与における徐放薬としてのヒアルロン酸の有効性について検討し、内耳徐放効果が期待されると考えられた。また、IGF鼓室内投与の効果について検討し、IGF-1の局所持続投与は虚血による急性内耳障害の防御に有効であると結論した。IGF-1は既に市販薬として入手が可能であり、将来的には内耳の再生、治療への臨床応用が容易にできると考えられる。
6. 突発性難聴96症例を対象に候補遺伝子相関解析を行い、SOD1、PRKCH・GSTP-1遺伝子にてアレル頻度に有意差を認めた。一方、過去に突発性難聴との関連が報告されていたMTHFR、NOS3、LTA遺伝子などでは差を認めなかった。2段階目の解析として、対象192症例について検討した結果、SOD1遺伝子のrs4998557多型について優性遺伝モデルで有意差を認めた。
7. 急性高度感音難聴の新しい治療法としてのステロイド鼓室内注入療法の多施設臨床試験を継続したまた、2005年度から行ってきた急性低音障害型感音難聴の単剤治療の臨床成績を解析、終了した。今後、解析結果を発表する予定である。
結論
 本研究では3年間に多施設横断的研究で各高度感音難聴を来す疾患の1)疫学調査、2)QOLへの影響、3)発症や予後に関連する遺伝子または遺伝子異常の検出、4)発症と予後に関わる活性酸素やバイオマーカーの検索、5)新しい治療法としての鼓室内局所療法の有効性の検証、6)各疾患の診断基準の見直しと、診療ガイドラインの作成を目的としたが、概ねロードマップに通りに研究が進行した。結果の解析が終了していない項目もあり、また、診療ガイドラインについてはまだ作成の途上であるが、今後、継続してプロジェクトを完了する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201324024B
報告書区分
総合
研究課題名
急性高度難聴に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小川 郁(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201324024C

収支報告書

文献番号
201324024Z