B型肝炎ウイルスの完全排除等、完治を目指した新規治療法の開発に関する包括的研究

文献情報

文献番号
201321011A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ウイルスの完全排除等、完治を目指した新規治療法の開発に関する包括的研究
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
森屋 恭爾(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 泉(東京大学 医科学研究所)
  • 小池 和彦(東京大学 医学部附属病院 )
  • 國土 典宏(東京大学 医学部附属病院 )
  • 鈴木 哲朗(浜松医科大学 医学部)
  • 北川 雅敏(浜松医科大学 医学部)
  • 朝比奈 靖浩(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 森石 恆司(山梨大学 大学院医学工学研究部)
  • 田川 陽一(東京工業大学 大学院生命理工学研究科)
  • 福原 崇介(大阪大学 微生物病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究経費
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
67,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HBV薬スクリーニング、マウスモデルでの評価を通じて新規治療薬の候補化合物を取得する。具体的にはHBV遺伝子複製機構、ミニクロモゾームのエピジェネティクス制御分子機構、転写制御機構、non-coding RNAによるHBV複製制御、HBV複製における肝細胞分化レベルの関与を明らかにし新規創薬標的、戦略を見出す。再活性化、発癌機構解明を目指しHBVにより変動するnon-coding RNAの同定機能解析を行う。高機能肝組織培養系を駆使し新たなHBV増殖モデルを作出する。HBV複製細胞選択的な遺伝子治療用ベクターを開発、またHBs抗原陰性HBc抗体陽性患者への肝切除・肝移植術後補助化学療法を確立する。
研究方法
細胞培養系、マウスを使用しstatinによるHBV増殖抑制機構、抗炎症作用の分子機構解明をはかる。
HBVプロモーター活性および粒子産生を指標に阻害剤探索を継続し高阻害活性化合物を同定する。
HBV-RNAによる宿主microRNA機能の撹乱惹起の分子機構の解析する。
HBV感染によって変動する宿主分子の中でHBV生活環と関連する分子を同定する。
見出した機能未知のlncRNAおよびコーディングRNAに関してHBV複製における役割を解明する。
iPS細胞より分化した肝幹・前駆細胞へのHBV感染実験系の確立を目指す。
in vitro肝組織システムでHBVの感染増殖系を確立する。
HBV複製細胞を標的とする遺伝子治療用ベクターの開発。
肝移植を行った肝細胞癌症例における肝炎ウイルスの存在様式、抗ウイルス療法の意義の検証。
結果と考察
1)阻害剤探索:HBV感染ヒト肝臓キメラマウスへのstatin投与によって抗HBV活性を有する可能性が示唆された。statinによる抗炎症因子、抗酸化因子誘導を実証した。阻害剤スクリーニングから、海綿画分由来PRDE等の抗HBV物質を同定し、更に未同定画分を得た。
2)HBV複製機構解析:statinが作用するHBV増殖関連因子の同定。HBVプレゲノム/コアプロモーターの活性を正に制御する宿主因子ACIN1と負に制御するLUC7L3を同定した。HBV感染に伴い核内で発現変動する42蛋白質を同定した。そのうち、LRPPRCはHBV感染性を正に制御すること、HBV-RNAの核から細胞質への輸送を抑制することを見出した。cccDNA高産生発現系の作製をおこなった。
3)肝病態発現機構解析:HBVのpreS2領域配列が、宿主のmicroRNAの一種で癌抑制機能を持つlet-7を吸着し その機能を撹乱する可能性を示した。HBV複製に伴って、発現が亢進および抑制される長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)またコーディングRNAをそれぞれ数種同定した。HBVによる肝脂肪滴肥大化を見出した。
4)新規実験技術、治療技術の開発:内皮細胞とヒト肝がん細胞株またはヒトiPS細胞由来肝細胞系譜細胞との共培養による肝組織様培養系を確立しHBV発現への有用性を示した。ヒトiPS細胞から成熟肝細胞まで各段階への分化誘導法を確立し、肝前駆細胞において肝細胞分化マーカーとNTCPの発現を認めた。CMVプロモーターからHBS欠失HBVプレゲノムを発現するアデノウイルスベクターを作製した。肝細胞癌に対して肝切除を施行した682例について肝炎ウイルス別の術後生存期間を比較解析した。非B非C患者の生存割合をHBcAbの陽性・陰性別に解析した。
既存の薬剤ならびに海洋産物中に新規抗ウイルス活性が期待できる物質を獲得しつつある。
結論
HBV複製機構、肝がん発症機構、新規培養系開発といった基盤的研究から阻害剤探索、治療法開発を行い上記のような成果を得つつある。特に治療の標的となる可能性が高い遺伝子、具体的な薬剤候補を獲得しつつある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201321011Z