B型肝炎ウイルス感染の病態別における宿主因子等について、網羅的な遺伝子解析を用い、新規診断法及び治療法の開発を行う研究

文献情報

文献番号
201320005A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ウイルス感染の病態別における宿主因子等について、網羅的な遺伝子解析を用い、新規診断法及び治療法の開発を行う研究
課題番号
H23-肝炎-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
徳永 勝士(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科人類遺伝学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 溝上 雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 五條堀 孝(国立遺伝学研究所生命情報 生命情報研究センター)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 八橋  弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 松本 晶博(信州大学医学部附属病院 肝疾患診療相談センター)
  • 横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院)
  • 持田 智(埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科)
  • 小池 和彦(東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学医学部 病理学)
  • 武冨 紹信(北海道大学大学院医学研究科 消化器外科学分野Ⅰ)
  • 松田 浩一(東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター)
  • 西田 奈央(国立国際医療センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 宮寺 浩子(東京大学大学院医学系研究科 人類遺伝学分野)
  • 本多 政夫(金沢大学医薬保健研究域保健学系 先端医療技術学講座)
  • 間野 修平(統計数理研究所 数理・推論研究系)
  • 鈴木 哲朗(浜松医科大学医学部医学科 感染症学講座ウイルス学・寄生虫学分野)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学大学院医学研究科 病態医科学(ウイルス学)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科学)
  • 夏井坂 光輝(北海道大学大学院医学研究科 消化器内科)
  • 楠本 茂(名古屋市立大学院医学研究科 腫瘍・免疫内科学)
  • 調  憲(九州大学大学院 消化器・総合外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
51,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HBV持続感染、HBV関連肝癌、HBV再活性化、HBV重症化・劇症化、薬剤への応答性に関連する宿主遺伝因子を網羅的に探索する。
研究方法
1. 検体・臨床情報収集:全国の研究協力施設がサンプル(DNAおよび血清)を収集し、詳細な臨床情報と共に集中管理するシステムを構築した。また、アジア各国との共同研究体制を整えた。
2. ゲノム解析・機能解析:(1)AXIOM Genome-Wide ASI Arrayを用い、収集された検体についてゲノムワイドSNPタイピングを行い、病態別にゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施した。(2) 慢性肝炎・肝癌組織における網羅的遺伝子発現解析を行い、病態関連ネットワーク解析を実施し検証した。 (3)B型肝炎慢性化に感受性・抵抗性および中立性アリルの組換えHLA-DPタンパク質の発現系を構築し、さらにウイルス抗原ペプチドとの結合測定を開始した。
3. 統計解析・情報:臨床情報とSNPの交互作用解析のための統計学的方法を検討した。
4. ウイルス因子:HBs抗原陽性の肝がん患者検体、および年齢一致非肝がん患者検体について、ウイルス遺伝子配列を決定し、肝がん特異的変異を検索した。
結果と考察
1. 各病態の臨床情報・検体収集体制を確立し、日本人については全国より約3,000検体を収集し、そのほとんどに簡易臨床情報の付加を完了した。海外についても約2,700検体(韓国、香港、タイ、台湾)を収集した。
2. (1)1,356検体を対象としてゲノムワイドSNPタイピングを実施した。このデータを基に、肝炎慢性化、線維化進展、および肝癌進展の3つの病態についてGWASを実施し、それぞれ58個、59個、110個の病態関連候補SNPを検出した。(2)HLA-DPについて、日本人、韓国人、香港人、タイ人約3,200検体の遺伝子タイピングを実施し、新たな慢性肝炎関連アリルおよび癌化抵抗性アリルを同定した。(3)B型肝炎、肝癌、C型肝炎、および肝癌の肝組織における遺伝子発現プロファイリングの結果、それぞれ11、10、7、12クラスターを用いたネットワークが構築され、各病態に特徴的な遺伝子群を検出した。(4) HLA-DPアリル産物6種類の組換えHLA-DPタンパク質を得た。さらにHBs抗原の数カ所の領域について10-15merの合成ペプチドを作製し、HLA-ペプチド結合解析を行った。
3. 臨床情報とSNPの交互作用解析によって、女性におけるC型肝炎の治療奏功の予測因子として新たなSNPを見出した。
4. 肝癌症例では男性およびウイルスgenotype Cの割合が有意に高かった。ウイルス遺伝子データが得られた肝癌156例と、非肝癌138例について解析を行った結果、肝癌と有意に関連する変異が確認された。
<考察> 本研究で収集された検体は日本、韓国、香港、タイから約5,700検体にのぼり、共同研究グループが約1,300検体を保有することから、今後より大規模なGWASや検証により新規の遺伝要因の同定が期待される。また、HLA-DPアリルを詳細に検討する事で、病態の解明およびリスク予測遺伝子検査法の開発に役立つであろう。HLA-DP組換えタンパクの調製も確立し、網羅的なウイルス由来ペプチドとの結合測定が可能となった。また病態毎に取得した遺伝子発現ネットワーク解析の結果や、ウイルスゲノム解析結果を、宿主ゲノム多型解析結果と組み合わせた分析も期待される。
結論
本研究班を4つのチームから構成して研究を実施した。(1) 各病態の臨床情報・検体収集体制を確立し、日本人、韓国人、タイ人、香港人、約5,700検体を収集した。(2) ゲノム解析では、慢性化・繊維化進展・癌化に関連する宿主遺伝要因を網羅的に探索し、各病態関連候補SNPを検出した。また、日本人を含む東アジア集団約3,200検体について大規模HLAタイピングを実施し、慢性化及び病態進展に関与するHLA-DPB1アリルを同定した。(3)機能解析では、HLA-DPアリルの組み換えタンパク発現系を確立し、結合実験を開始した。更に、B型慢性肝炎から肝癌発症に関わる階層クラスター解析および遺伝子ネットワーク解析を行い、癌進展と関連する遺伝子群を同定した。(4) 統計解析では、臨床データとゲノムワイドSNPデータについて交互作用を解析した。(5) ウイルス因子については、肝癌患者および非肝癌患者のゲノム配列を決定し、癌関連変異を同定した。今後も各チームの活動、研究から多くの相乗的成果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

文献情報

文献番号
201320005B
報告書区分
総合
研究課題名
B型肝炎ウイルス感染の病態別における宿主因子等について、網羅的な遺伝子解析を用い、新規診断法及び治療法の開発を行う研究
課題番号
H23-肝炎-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
徳永 勝士(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科人類遺伝学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 溝上 雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 五條堀 孝(国立遺伝学研究所生命情報 生命情報研究センター)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 八橋  弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 松本 晶博(信州大学医学部附属病院 肝疾患診療相談センター)
  • 横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院)
  • 持田 智(埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科)
  • 小池 和彦(東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学医学部 病理学)
  • 武冨 紹信(北海道大学大学院医学研究科 消化器外科学分野Ⅰ)
  • 松田 浩一(東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター)
  • 西田 奈央(国立国際医療センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 宮寺 浩子(東京大学大学院医学系研究科 人類遺伝学分野)
  • 本多 政夫(金沢大学医薬保健研究域保健学系 先端医療技術学講座)
  • 間野 修平(統計数理研究所 数理・推論研究系)
  • 鈴木 哲朗(浜松医科大学医学部医学科 感染症学講座ウイルス学・寄生虫学分野)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学大学院医学研究科 病態医科学(ウイルス学)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科学)
  • 夏井坂 光輝(北海道大学大学院医学研究科 消化器内科)
  • 楠本 茂(名古屋市立大学大学院医学研究科・腫瘍・免疫内科学)
  • 調  憲(九州大学大学院医学研究科 消化器・総合外科)
  • 坂本 直哉(北海道大学大学院医学研究科・消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HBV持続感染、HBV関連肝癌、HBV再活性化、HBV重症化・劇症化、薬剤への応答性に関連する宿主遺伝因子を網羅的に探索する。
研究方法
1. 検体・臨床情報収集:全国の研究協力施設がサンプル(DNAおよび血清)を収集し、詳細な臨床情報と共に集中管理するシステムを構築した。また、アジア各国との共同研究体制を整えた。
2. ゲノム解析・機能解析:(1)各施設により収集された検体についてゲノムワイドSNPタイピングを行い、病態別にゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施した。3種のSNP解析法によるデータを取得した。HLA-DP遺伝子群の大規模多型解析を実施した。(2)慢性肝炎・肝癌組織における網羅的遺伝子発現解析を行い、病態関連ネットワーク解析を実施した。(3)肝炎慢性化に感受性・抵抗性および中立性アリルの組換えHLA-DPタンパクの発現系を構築し、ウイルス抗原ペプチドとの結合測定系を確立した。
3. 統計解析・情報:臨床情報とSNPの交互作用の網羅的解析法を比較検討し、GWASデータに適用、評価した。
4. ウイルス因子:収集された検体についてウイルス遺伝子配列を決定し、臨床情報との関連解析を行うと共に、細胞・実験系の確立を目指した。
結果と考察
1. 各病態の臨床情報・検体収集体制が確立し、日本人については全国より約3,000検体が収集され、簡易臨床情報の付加が完了した。海外についても約2,700検体(韓国、香港、タイ、台湾)が収集された。
2. (1)3つのSNP解析法からのデータに基づく高精度のimputationシステムを構築した。1,356検体についてゲノムワイドSNPタイピングを実施した。肝炎慢性化、線維化進展、および肝癌進展についてGWASを実施し、癌化とMICAの関連の発見などに加え、それぞれ58個、59個、110個の病態関連候補SNPを検出した。(2)HLA-DPについて、日本人を含む東アジア約3,200検体の遺伝子タイピングを実施し、新たな慢性肝炎関連アリルおよび癌化抵抗性アリルを同定した。(3)肝炎、肝癌の肝組織における遺伝子発現プロファイリングの結果、それぞれの病態群に特徴的な遺伝子ネットワークが複数示された。(4)病態関連HLA-DPアリルの組換えタンパクを得た。またHBs抗原の数カ所の領域について10-15merの合成ペプチドを作製し、HLA-ペプチド結合解析を行った。
3. 臨床情報、ゲノム解析結果を格納するデータベースを構築した。統計学的交互作用解析によって、女性におけるC型肝炎の治療奏功の予測因子として新たなSNPを見出した。
4. 肝癌症例では男性およびウイルスgenotype Cの割合が有意に高かった。肝癌156例と非肝癌138例についてウイルス遺伝子配列を解析し、肝がんと関連する変異が確認された。
<考察> 収集された検体は日本、韓国、香港、タイから約5,700検体にのぼり、また共同研究グループも多数検体を保有することから、今後より大規模なGWASや検証により新規の遺伝要因の同定が予想される。また、HLA-DPアリルを詳細に検討する事で、病態の解明およびリスク予測遺伝子検査法の開発に貢献するであろう。HLA-DP組換えタンパクの調製、ウイルス由来ペプチドとの結合測定法が確立したことから、発症機序の解明への進展が期待できる。また病態毎に取得した遺伝子発現ネットワーク解析の結果や、ウイルスゲノム解析結果を、宿主ゲノム多型解析結果と組み合わせた分析から画期的な成果も期待される。
結論
4つのチームによって研究を実施した。(1) 各病態の臨床情報・検体収集体制とデータベースを確立し、日本人、韓国人、タイ人、香港人、約5,700検体を収集した。(2) ゲノム解析では、慢性化・繊維化進展・癌化に関連する宿主遺伝要因を網羅的に探索し、複数の新規感受性遺伝子および各病態関連候補SNPを検出した。また、大規模HLAタイピングによって慢性化及び病態進展に関与するHLA-DPB1アリルを新たに同定した。機能解析では、HLA-DPアリルの組み換えタンパク発現系を確立し、結合実験を開始した。更に、網羅的遺伝子プロファイリングにより癌進展と関連する遺伝子群を同定した。(3) 統計解析では、臨床情報と交互作用を示す新たなSNPを検出した。(4) ウイルス因子についても、肝癌例と非肝癌例のゲノム配列を決定し、癌関連変異を同定した。今後も各チームの活動、研究から多くの相乗的成果が予想される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201320005C

収支報告書

文献番号
201320005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
66,690,000円
(2)補助金確定額
66,690,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 35,329,606円
人件費・謝金 4,270,463円
旅費 2,247,030円
その他 9,453,795円
間接経費 15,390,000円
合計 66,690,894円

備考

備考
自己資金894円

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-