創薬と新規治療法開発に資するヒト肝細胞キメラマウスを用いた肝炎ウイルス制御に関する研究      

文献情報

文献番号
201320001A
報告書区分
総括
研究課題名
創薬と新規治療法開発に資するヒト肝細胞キメラマウスを用いた肝炎ウイルス制御に関する研究      
課題番号
H23-肝炎-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
茶山 一彰(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 吉里勝利((株)フェニックスバイオ)
  • 金子周一(金沢大学)
  • 土方誠(京都大学 ウイルス研究所)
  • 高倉喜信(京都大学 大学院薬学研究科)
  • 前川伸哉(山梨大学 大学院)
  • 松浦善治(大阪大学 微生物病研究所)
  • 大段秀樹(広島大学 大学院)
  • 脇田隆字(国立感染症研究所)
  • 今村道雄(広島大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
51,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,このヒト肝細胞キメラマウスを用いて,ウイルス性肝炎の根治と病状緩和に有用な治療法を開発することを目的とし,(1) 創薬のシーズの探索,(2) 開発された薬剤の応用,(3) 肝炎モデルの創生,の3点を中心に行う.
研究方法
(1) 創薬のシーズの探索に関する研究では,これまでに行ってきた研究である新規候補となる薬剤の抗ウイルス効果の検証あるいは肝炎ウイルスの感染によるtranscriptomeの変化を網羅的に解析し,創薬のターゲットとなり得る分子の同定を行う.これらの発現解析には最近可能となった次世代シーケンサーによる網羅的発現解析を応用する. (2) 開発された薬剤の応用に関する研究では,HCV培養系およびキメラマウスを使用して,野生型あるいは薬剤耐性型HCVクローンを感染させ,各種DAA製剤に対する耐性ウイルスを作製し,それぞれに対してどのような薬剤が有効か,また,多剤併用でウイルスの完全な排除が可能かどうかについて検討し,IFNを使用しない治療法の確立を目指す.また有効なdrug delivery技術の開発も試みる.さらに生体肝移植後のHCV再感染のメカニズムの解明および治療法開発を試みる.(3) 肝炎モデルの創生に関する研究では,キメラマウスにヒトリンパ球が生着できる条件について検討を加える.さらにuPA/SCIDマウス以外の肝炎モデル動物の構築も試みる.
結果と考察
(1) 創薬のシーズの探索
プロスタグランジンI受容体アゴニストのHCV感染阻害効果が見いだされた. HCV感染におけるmiR-122の役割を解析し,miR-122によるHCV RNAの安定化にはRISC複合体が必須であり,特にRISC複合体の中のAgo2蛋白が,HCV RNAの安定化に必須であることを明らかとした.遺伝子型2bのHCV株のレプリコンを樹立し,さらにレプリコンゲノムに検出した適合変異を利用することにより,感染性ウイルスを作成することが可能となった.
(2) 開発された薬剤の応用
次世代シークエンサーを用いて,direct-acting antiviral agent(DAA)未治療のHCV患者のNS5A領域を解析し,IL28Bの遺伝子型とNS5A Y93変異が関連していることを見出した.TelaprevirあるいはNS5A阻害剤耐性型HCV感染マウスを作製し,薬剤治療効果を検討した.DAAをsequentialに使用すると多剤耐性変異が出現することを見出した.長期持続型IFN-発現ベクターをHCV感染マウスにhydrodynamic injection法を用いて投与することにより,持続的にIFN-を遺伝子発現することが可能となり,高い抗HCV効果を得られることに成功した.肝移植後のHCV再感染におけるNK細胞のフェノタイプおよびquasispeciesの意義を明らかにした.
(3) 肝炎モデルの創生
HCV感染ヒト肝細胞キメラマウスにNK細胞を投与することにより肝炎モデルマウスの作製を試みている.また超免疫不全であるNOGマウスにHerpes simplex virus type 1 thymidine kinase(HSVtk)遺伝子を過剰発現させたTK-NOGマウスを用いたHCV感染モデルを確立した.またマウスよりいくつかの利点を持つラットの肝臓をヒト化する技術の開発を行い,ラット肝芽細胞に特異的に障害を与えることが可能なトランスジェニックラットのファンダーを作製した.
結論
ヒト肝細胞キメラマウスによる肝炎ウイルス感染モデルを用いて,創薬のシーズの探索,開発された薬剤の応用,肝炎モデルの創生,の検討が可能であった.

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201320001B
報告書区分
総合
研究課題名
創薬と新規治療法開発に資するヒト肝細胞キメラマウスを用いた肝炎ウイルス制御に関する研究      
課題番号
H23-肝炎-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
茶山 一彰(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 吉里勝利((株)フェニックスバイオ)
  • 金子周一(金沢大学)
  • 土方誠(京都大学 ウイルス研究所)
  • 高倉喜信(京都大学 大学院)
  • 前川伸哉(山梨大学 大学院)
  • 松浦善治(大阪大学 微生物病研究所)
  • 大段秀樹(広島大学 大学院)
  • 脇田隆字(国立感染症研究所)
  • 今村道雄(広島大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,このヒト肝細胞キメラマウスを用いて,ウイルス性肝炎の根治と病状緩和に有用な治療法を開発することを目的とし,(1) 創薬のシーズの探索,(2) 開発された薬剤の応用,(3) 肝炎モデルの創生,の3点を中心に行う.
研究方法
(1) 創薬のシーズの探索に関する研究では,これまでに行ってきた研究である新規候補となる薬剤の抗ウイルス効果の検証あるいは肝炎ウイルスの感染によるtranscriptomeの変化を網羅的に解析し,創薬のターゲットとなり得る分子の同定を行う.これらの発現解析には最近可能となった次世代シーケンサーによる網羅的発現解析を応用する. (2) 開発された薬剤の応用に関する研究では,HCV培養系およびキメラマウスを使用して,野生型あるいは薬剤耐性型HCVクローンを感染させ,各種DAA製剤に対する耐性ウイルスを作製し,それぞれに対してどのような薬剤が有効か,また,多剤併用でウイルスの完全な排除が可能かどうかについて検討し,IFNを使用しない治療法の確立を目指す.また有効なdrug delivery技術の開発も試みる.さらに生体肝移植後のHCV再感染のメカニズムの解明および治療法開発を試みる.(3) 肝炎モデルの創生に関する研究では,キメラマウスにヒトリンパ球が生着できる条件について検討を加える.さらにuPA/SCIDマウス以外の肝炎モデル動物の構築も試みる.
結果と考察
(1) 創薬のシーズの探索:ヒト肝細胞キメラマウスを用いてNiemann-Pick C1-like 1(NPC1L1)の阻害剤であるエゼチミブやプロスタグランジンI受容体アゴニストのHCV感染阻害効果が見いだされた.またIL28B遺伝子とIFN治療効果およびIFN誘導遺伝子発現量の関連あるいはZinc-finger nucleaseを用いて肝癌細胞株におけるIL28B遺伝子のアレル特異的なノックアウト方法を確立した.HCV感染マウスに対するIFN投与による肝臓内遺伝子発現をマイクロアレイにて網羅的に検討し,IFNシグナルの反応性低下と共に,抗原呈示反応に関与する遺伝子のIFN反応性の低下を認めた.HCV感染におけるmiR-122の役割を解析し,miR-122によるHCV RNAの安定化にはRISC複合体が必須であり,特にRISC複合体の中のAgo2蛋白が,HCV RNAの安定化に必須であることを明らかとした.細胞培養・チンパンジー感染クローンである遺伝子型Ia H77株のp7とNS2の間に分泌型ルチフェラーゼを挿入し,簡便なRNA複製モニタリング,および抗ウイルス剤スクリーニングシステムを構築した.genotype 1b型のCon1株のNS3プロテアーゼ領域およびNS5b領域をそれぞれ遺伝子型2aのJFH-1株に組換えたキメラレプリコンおよびウイルス構築を作成し,さらに遺伝子型2bのHCV株のレプリコンを樹立し,さらにレプリコンゲノムに検出した適合変異を利用することにより,感染性ウイルスを作成した.(2) 開発された薬剤の応用:新規抗HCV療法として,プロテアーゼ阻害剤,NS5A阻害剤およびNS5B阻害剤を併用しIFN製剤を使用しない経口剤のみによるウイルス排除法,あるいはヒト末梢血単核球分画から培養・増殖させたNK/NKT細胞を用いたHCV感染阻害法の開発を行った.次世代シーケンサーを用いて, DAA未治療のHCV患者のNS5A領域を解析し,IL28Bの遺伝子型とNS5A Y93変異が関連していることを見出した.またHCVクローンを用いたreverse-geneticsの手法を用いてtelaprevirあるいはNS5A阻害剤耐性型HCV感染マウスを作製し,薬剤治療効果を検討した.長期持続型IFN-発現ベクターをHCV感染マウスにhydrodynamic injection法を用いて投与することにより,持続的にIFN-を遺伝子発現することが可能となり,高い抗HCV効果を得られることに成功した.(3) 肝炎モデルの創生:HCV感染ヒト肝細胞キメラマウスにヒトリンパ球を投与することにより肝炎モデルマウスの作製を試みた.また超免疫不全であるNOGマウスにHerpes simplex virus type 1 thymidine kinase(HSVtk)遺伝子を過剰発現させたTK-NOGマウスを用いたHCV感染モデルを確立した.またマウスよりいくつかの利点を持つラットの肝臓をヒト化する技術の開発を行い,ラット肝芽細胞に特異的に障害を与えることが可能なトランスジェニックラットのファンダーを作製した.
結論
ヒト肝細胞キメラマウスによる肝炎ウイルス感染モデルを用いて,創薬のシーズの探索,開発された薬剤の応用,肝炎モデルの創生,の検討が可能であった.

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201320001C

収支報告書

文献番号
201320001Z