HIV感染予防対策の個別施策層を対象にしたインターネットによるモニタリング調査・認知行動理論による予防介入と多職種対人援助職による支援体制構築に関する研究

文献情報

文献番号
201319005A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染予防対策の個別施策層を対象にしたインターネットによるモニタリング調査・認知行動理論による予防介入と多職種対人援助職による支援体制構築に関する研究
課題番号
H23-エイズ-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
日高 庸晴(宝塚大学  看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 嶋根 卓也(国立精神・神経医療研究センター)
  • 和木 明日香(千里金蘭大学看護学部)
  • 松高 由佳(広島文教女子大学)
  • 古谷野 淳子(新潟大学医歯学総合病院感染管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,633,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MSMのHIV予防に資するために、感染リスク行動の現状をインターネット調査を通じてモニタリングすると共に予防介入の実施、MSMを取り巻く対人援助職の意識変容と援助スキルを開発することである。
研究方法
学校教育におけるセクシュアリティ理解と援助スキル開発に関する研究(研究1)、インターネットによるMSMのHIV感染予防に関する行動疫学研究(研究2)、保健師におけるセクシュアリティ理解と援助スキル開発に関する研究(研究3)、臨床心理士におけるセクシュアリティ理解と援助スキル開発に関する研究(研究4)、認知行動理論(CBT)によるHIV予防介入研究(研究5)を実施した。
結果と考察
研究1:研究1~2年目に実施した6自治体の教員を対象に性的指向と性同一性障害・HIV/AIDS教育に関する意識調査(5979名)のデータを詳細に分析した。同性愛について学校で教えることの必要性は62.8%と比較的高率であったが、実際に教えている割合は13.7%と開きがあった。研究結果を還元するための啓発リーフレットを開発・制作(15000部)、協力自治体を中心に配布した。また、このリーフレットは教員研修の教材として活用されている。当事者NPOと共同開発した啓発ポスター950部は神奈川県下の公的施設に配布した。
研究2:MSM対象のインターネット予防介入ではスマートフォンを活用し、MSMの出会い系アプリ利用者を対象に実施した(11,559名)。啓発コンテンツは「HIV検査編」「セイファーセックス編」「脱法ドラッグ編」の三種類を設定し、自由に閲覧出来るように設定した。コンテンツ閲覧前後の効果評価により、一定層に介入効果が認められた。
研究3:保健師を対象に性的指向などセクシュアリティ理解を促進すると共にHIV検査場面でのMSM援助スキルを向上させることを目的に、研修プログラムを開発・実施した(研修総数8回、134名の参加)。同性愛に対する抵抗感の減少、同性愛に関する知識の増加、陽性告知知識の向上、MSM対応自信の向上、陽性者対応自信の向上が研修あり群において確認された(比較群付前後比較試験)。
研究4:臨床心理士を対象にHIVの適切な相談などMSMへの支援をより効果的に行えるようになるために、研修を実施した(中四国および近畿地方の2ヶ所で実施、49名の参加)。セクシュアリティ知識、HIV知識、支援態度、意識、自己効力感が研修あり群において変化していることが確認された(比較群付前後比較試験)。
研究5:HIV抗体検査陰性あるいは感染状況が不明で過去6ヶ月間にコンドーム不使用アナルセックスの経験がある18歳以上のMSMを対象に、認知行動理論(CBT)による個別面接型の予防介入プログラムを提供した(横浜と大阪で開催、34名)。自己効力感、認知が介入群において介入前後で有意に変化し、その傾向は2ヶ月後まで維持されていた。また、コンドーム不使用のアナルセックス実践者の割合は介入群において減少した(wait-list control法)。この手法は20代、30代の性行動が活発なMSMにおいてセイファーセックスへの準備性を高め、コンドーム不使用のアナルセックスを低減させる効果があることが確認された。
結論
研究計画を予定通り進め、MSMのHIV感染リスク行動の低減と検査行動の促進を目指すインターネット介入コンテンツの提供を実施、成功させた。また、個別面接型の予防介入を行い、その効果を検証した。さらに、教員・保健師・臨床心理士を対象に、実態調査とその結果に基づく研修を実施し、MSM支援のために教育委員会等関連機関や自治体との連携体制の構築を図った。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

文献情報

文献番号
201319005B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染予防対策の個別施策層を対象にしたインターネットによるモニタリング調査・認知行動理論による予防介入と多職種対人援助職による支援体制構築に関する研究
課題番号
H23-エイズ-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
日高 庸晴(宝塚大学  看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 嶋根 卓也(国立精神・神経医療研究センター)
  • 和木 明日香(千里金蘭大学 看護学部)
  • 松高 由佳(広島文教女子大学 人間科学部)
  • 古谷野 淳子(新潟大学医歯学総合病院 感染管理部)
  • 西村 由実子(橋本 由実子)(関西看護医療大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MSMのHIV予防に資するために、感染リスク行動の現状をインターネット調査を通じてモニタリングすると共に予防介入の実施、MSMを取り囲む社会環境を変容させ、適切な健康支援を提供するために、対人援助職の意識変容と援助スキルを開発することである。
研究方法
学校教育におけるセクシュアリティ理解と援助スキル開発に関する研究(研究1)、インターネットによるMSMのHIV感染予防に関する行動疫学研究(研究2)、保健師におけるセクシュアリティ理解と援助スキル開発に関する研究(研究3)、臨床心理士におけるセクシュアリティ理解と援助スキル開発に関する研究(研究4)、認知行動理論(CBT)によるHIV予防介入研究(研究5)を実施した。
結果と考察
研究1:1年目に4自治体の教員を対象にセクシュアルマイノリティ理解とHIV予防教育の推進に資するために、性的指向や性同一性障害に関する意識・認識・対応経験について明らかにすることを目的にした無記名自記式質問紙調査を実施、4,293部(有効回収率61.7%)の回答を得た。2年目は2自治体の教員を対象に同様の内容に加えてHIV/AIDSに関する授業時の教示内容や教示苦手内容について明らかにすることを目的に質問紙調査を実施、1,686部の回答を得た(58.9%)。また、2~3年目を通じて教員研修を実施した。研究班独自で研修を開催した場合もあるが多くは自治体の研修の一環として機会を確保した。3年目には調査結果のフィードバックを主たる目的に啓発リーフレット(15,000部)とポスター(950部)を制作、協力自治体を中心に配布した。
研究2:1年目と2年目にインターネットによる行動モニタリング調査を実施、1年目はPC版3,685名、モバイル版(従来型携帯電話とスマートフォン)6,757名(計10,442名)の回答があった。2008年調査と比較してMSM関連施設利用割合が低下する一方でスマートフォン利用ゲイ向けに開発された出会い系アプリを通じたセックス機会が多いことがわかった。2年目はモバイル版9,857名の回答がありHIV抗体検査未受検者のその理由や脱法ドラッグ使用実態が明らかになった。3年目はゲイ向け出会い系アプリ利用者を対象(11,559名)に介入研究を実施した。啓発介入コンテンツは「HIV検査編」「セイファーセックス編」「脱法ドラッグ編」の三種類を設定し、自由に閲覧出来るように設定した。コンテンツ閲覧前後の効果評価により、一定層に介入効果が認められた。
研究3:1年目は近畿圏2府4県と12の保健所設置市の自治体を通じて、保健師を対象にセクシュアリティに対する意識、HIV検査業務経験や教育ニーズについて無記名自記式質問紙調査を実施した(1,535名)。2~3年目は近畿圏の自治体と共同による研修機会を設けた。同性愛に関する知識の向上や抵抗感の減少、MSM対応自信などの変化が確認された。
研究4:1年目は予備調査として学生相談に従事する臨床心理士に半構造化面接を行い、臨床心理士養成コース(第1種指定校)の大学院生を対象に集合調査法で無記名自記式質問紙調査を実施した。2年目は中四国・近畿地方の大学で学生相談に従事する臨床心理士(または大学カウンセラー)を対象に無記名自記式質問紙調査を実施、321部の回答を得た(有効回収率66.3%)。MSMにおけるHIV流行認識が低率であることや同性愛者に対する臨床的関わりに関する項目の正答率が低いことなどが明らかになった。3年目は中四国と近畿地方の2ヶ所で臨床心理士を対象に研修を実施、HIVの知識やゲイ男性からの性の相談に対する自己効力感などに有意な変化があり、研修の効果が認められた。
研究5:1年目はMSM対象の予防啓発に取り組んできた当事者を中心とするコミュニティ団体関係者にその取り組みやCBT面接手法について半構造化面接を実施した。2~3年目は横浜と大阪で20歳以上のMSM、HIV感染状況が不明あるいは陰性、過去6ヶ月以内にコンドーム不使用のアナルセックス経験がある者を対象に、心理士による個別認知行動面接による介入を行い効果評価を実施した。その結果この介入手法が性的に活発なMSMにおいてリスク軽減に寄与することが示された。
結論
研究計画を予定通りに進め、MSMのHIV感染リスク行動のモニタリングを行い、スマートフォンユーザーを対象にインターネットによる介入も行った。また、認知行動理論による対面型の個別介入とその効果を検証した。教員・保健師・臨床心理士を対象に、実態調査と研修を実施することを通じて、MSMのHIV予防や健康支援を推進する社会的基盤の構築に寄与したと言えよう。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201319005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1999年以降研究代表者が継続して実施しているMSMを対象にしたインターネット調査や介入研究は、全国的に当該集団の動向を把握出来る唯一の方法であり、継続した研究の実施はアジア最大規模である。さらに、MSMの健康支援の推進のために教員・保健師・臨床心理士といった対人援助職を対象にした実態調査や研修事業は、MSM支援の社会的基盤の構築に寄与すると考えられる。
臨床的観点からの成果
MSMにおける継続した行動モニタリングの実施は、HIV予防のみならず陽性者のセクシュアルヘルス向上のための支援においても重要な情報となる。
ガイドライン等の開発
自殺対策推進会議(第16回)平成24年6月12日において調査結果が参考にされた。
その他行政的観点からの成果
自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~(平成24年8月28日閣議決定)に性的マイノリティに関する項目が盛り込まれる際に、MSM対象のネット調査のデータが審議会で参考にされた。また、研究代表者はエイズ動向委員会委員として随時、調査データの紹介を行っている。
その他のインパクト
NHKテレビでの放映6回、民放テレビでの放映1回、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞等の新聞記事において調査結果の一部が16回掲載された。また、自治体の研修や学術講演など研究実施の3年間に51回実施した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
55件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hidaka Y,Don Operario,Tsuji H,et al.
Prevalence of sexual victimization and correlates of forced sex in Japanese men who have sex with men
Plos One , 9 (5) , e95675-  (2013)
doi:10.1371/journal.pone.0095675s
原著論文2
Matsutaka Y,Uchino T,Kihana N,et al.
Knowledge about sexual orientation among student counselors: a survey in Japan
International Journal of Psychology and Counseling , 6 (6) , 74-83  (2014)
原著論文3
古谷野淳子,松高由佳,桑野真澄,他
「その瞬間」に届く予防介入の試み ―MSM対象のPCBC(個別認知行動面接)の検討
日本エイズ学会誌 , 16 (2) , 92-100  (2014)
原著論文4
西村由実子,岩井美詠子,尾崎晶代,和木明日香,日高庸晴
近畿圏の保健師におけるHIV検査相談の現状に関する研究
日本エイズ学会誌 , 18 (1) , 20-28  (2016)
原著論文5
Nishimura YH., Iwai M., Ozaki A., et al.
Perceived Difficulties Regarding HIV/AIDS Services among Public Health Nurses in the Kinki Region of Western Japan: Implications for Public Health Nursing Education in Japan
Open Journal of Nursing , 7 (3)  (2017)
DOI: 10.4236/ojn.2017.73033,2017.

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
2018-06-06

収支報告書

文献番号
201319005Z