Hib、肺炎球菌、HPV及びロタウイルスワクチンの各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究

文献情報

文献番号
201318057A
報告書区分
総括
研究課題名
Hib、肺炎球菌、HPV及びロタウイルスワクチンの各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究
課題番号
H25-新興-指定-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
庵原 俊昭(国立病院機構三重病院 )
研究分担者(所属機関)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所細菌第二部)
  • 中野 貴司(川崎医科大学小児科学)
  • 谷口 孝喜(藤田保健衛生大学医学部ウイルス・寄生虫学講座)
  • 大石 和徳(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 小西 宏(日本対がん協会)
  • 中山 哲夫(北里生命科学研究所)
  • 岡田 賢司(福岡歯科大学全身管理・医歯学部門 総合医学講座 小児科学分野)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学薬学部・公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
16,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ワクチンを勧奨接種するためには、有効性、安全性、医療経済性の総合的評価が大切であり、勧奨接種開始後もワクチンの有効性、安全性評価が必要である。我々は、各種ワクチンを総合的に評価するために基礎と臨床が協力して、侵襲性細菌感染症、ロタウイルス感染症のアクテイブサーベイランスを継続して行い、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの有用性、基礎及び臨床面からのワクチンの安全性評価、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)とロタウイルス(RV)ワクチンの医療経済性について検討を行った。
研究方法
(1)小児における侵襲性細菌感染症アクテイブサーベイランス:全国10道県の小児侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)、侵襲性B群連鎖球菌(GBS)感染症患者数を全数把握し、侵襲性細菌感染症患児から分離された菌株の血清型の同定と薬剤感受性を検討した。
(2)ロタウイルス胃腸炎(RVGE)アクテイブサーベイランス:津市においてRVGEの外来での疾病負担について検討し、津市、岡山市、いすみ市のRVGE患児から採取されたRVの血清型について検討した。
(3)HPVワクチンの有用性の評価:HPVワクチンの効果を早期に評価する方法について検討し、HIV感染者におけるHPV4の免疫原性についても検討した。
(4)ワクチンの安全性評価:マウスを用いてHPVワクチン接種後の接種局所におけるサイトカインの動きについて検討を行った。臨床面では、インフルエンザワクチン接種後におこるアナフィラキシーの発症メカニズムについて検討を行い、ワクチン後の副反応の診断基準について検討を行った。
(5)ワクチンの医療経済性の評価:マルコフモデルを用いてPCV13の、ワクチン接種の費用対効果推計法を用いてRVワクチンの医療経済性について検討した。
結果と考察
侵襲性インフルエンザ菌b型(Hib)感染症の罹患率は98%減少し、Hibワクチンの有効性は示された。一方、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の調査では、2013年における肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)の罹患率減少率は2012年と同じであった。IPDをおこした肺炎球菌の血清型の調査から、2013年にIPD患児から分離された肺炎球菌血清型のPCV13カバー率は52.1%であり、2013年11月に導入されたPCV13の接種開始により、IPDの減少率が56%から75%になることが期待されている。今後もアクテイブサーベイランスを行い、ワクチンに含まれない血清型の増加に対する監視が必要である。
ロタウイルス(RV)ワクチンに関しては、毎年5歳未満児の30%が医療機関を受診する疾患であり、疾病負担が大きい感染症であることが示された。三重県の感染症サーベイランスのデータからRVワクチンの有効性を示唆するデータが出始めており、年により流行するRVの血清型が異なることが示され、継続した観察が必要である。
HPVワクチンの効果を評価するためには、接種後5~10年が必要である。日本対がん協会の努力により、次年度から日本各地でHPVワクチンとリンクした頸がん検診が開始される。HPV関連がんの発がんリスクが高いヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染男性に4価HPVワクチンの接種を行い、効果的な免疫原性が認められた。
ワクチンの安全性評価では、マウスの実験系において、HPVワクチン後の急性疼痛には、アジュバントにより接種後局所で産生されるIL-1β、IL-6、G-CSFなどのサイトカインが関与しており、接種後の急性疼痛とサイトカイン産生の推移は一致していたが、慢性疼痛にはアジュバントは関与していなことが示された。インフルエンザワクチンのアナフィラキシーには、現行のスプリットワクチンで誘導される抗HAIgE抗体が関与していることが示された。ワクチン後の副反応の診断基準のグローバル化が期待されており、今年度はアナフィラキシーの診断基準について検討した。
最後に、医療経済性の評価では、PCV13、RVワクチンともに、本邦における現行の価格では医療経済性が伴わないことが示唆された。
結論
Hibワクチン、PCVともに有効であるが、ワクチンに含まれない血清型に対する注意が今後も必要である。RVワクチンに関しては、有効性を示唆するデータが出始めているが、定期接種化するに当たっては、医療経済面からワクチンコストが課題である。HPVワクチンに関しては、次年度から日本各地でHPVワクチンとリンクした頸がん検診が開始される予定である。ワクチンの安全性評価では、マウスの実験系において、HPVワクチン後の急性疼痛の発症メカニズムを解明した。また、インフルエンザワクチンのアナフィラキシーには、スプリットワクチンで誘導される抗HAIgE抗体が関与していることを示した。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
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収支報告書

文献番号
201318057Z