ワクチンにより予防可能な疾患に対する予防接種の科学的根拠の確立及び対策の向上に関する研究 

文献情報

文献番号
201318025A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンにより予防可能な疾患に対する予防接種の科学的根拠の確立及び対策の向上に関する研究 
課題番号
H24-新興-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 明田 幸宏(大阪大学微生物病研究所)
  • 石和田 稔彦(千葉大学 医学部附属病院)
  • 井上 直樹(岐阜薬科大学 感染制御学教室)
  • 庵原 俊昭(国立病院機構 三重病院)
  • 生方 公子(慶応義塾大学 医学部)
  • 大日 康史(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 岡田 賢司(福岡歯科大学 全身管理・医歯学部門)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 吉川 肇子(慶応義塾大学 商学部)
  • 木所 稔(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 齋藤 昭彦(新潟大学 大学院)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 富樫 武弘(札幌市立大学 看護学部)
  • 中山 哲夫(北里大学 北里生命科学研究所)
  • 平原 史樹(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 細矢 光亮(公立大学法人福島県立医科大学)
  • 宮崎 千明(福岡市立西部療育センター)
  • 森 康子(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学 小児科)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
44,999,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 (1) 2015年の麻しん排除認定の取得、先天性風疹症候群の有効な発生予防策の考案、妊婦の風疹罹患時の相談体制の整備とその検証を可能にする。(2)水痘ワクチンの2回目接種時期を明らかにし、またムンプスワクチンの有効性を評価する。 (3) ムンプスウイルスの国内流行状況、流行の変遷を明らかにする。(4)ロタウイルスワクチン導入後の腸重積の罹患率の変化を明らかにする。(5) 環境中のポリオウイルスの侵入を早期探知する。(6) 乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの市販後の安全性に関する調査と、接種勧奨再開後の接種動向を明らかにする。(7)Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの公費助成開始後の侵襲性感染症原因菌の動向を明らかにする。(8)百日咳の血清診断法を確立する事により成人百日咳の実態を明らかにし、国内臨床分離株の遺伝子型ならびに病原因子発現の解析をする。(9) ワクチンの意義と価値、およびデメリットを含めてその情報を適切に伝えることができるよう、適切なリスクコミュニケーションを推進する。
研究方法
本研究班は研究代表者1名と臨床から9名、基礎から9名の研究者および疫学研究者4名、合計23名の分担研究者が協力して実施している。
結果と考察
1.2012~2013年の風疹の流行は海外から持ち込まれた風疹ウイルスが国内で蓄積していた成人男性の感受性者間で広がり、そこから、職場内での流行や、家族内での感染拡大がみられたと考えられる。妊婦への感染も多く認められ、2012~2013年度の流行により44例のCRS児が報告された。風疹の感受性者の蓄積は、女性のみを対象に実施した過去のわが国の風疹の定期予防接種の制度で説明が可能である。その後男女ともが定期接種の対象になったが、学校での集団接種から医療機関を受診しての個別接種になったことから、特に中学生の接種率が激減し、多くの感受性者が男性の20~40代、女性の20代に蓄積していたと考えられる。また、2014年は海外からの麻疹輸入例が急増していることも考え併せると、受けるワクチンはMRワクチンが強く勧められる。
2.水痘抗体各種測定方法の陽性閾値の互換性が示された。今後血清疫学調査をするにあたっては、各種測定方法の長所、短所からEIA法が優れていると結論された。また、水痘ワクチンを3~4カ月あるいは5~7カ月間隔で2回接種し、IAHA、gp-ELISA法で抗体価の推移を解析した結果、全例で抗体陽転を確認した。また追加接種後抗体価は、初回接種時比べ高い抗体価(ブースター効果)を示し、十分な免疫誘導に有効であると考えられた。また、自然感染とワクチン接種の分別は、プライマー3’端にワクチン特異的配列を利用したnested PCR法を用いることで簡便に実施できる。
3. 2013年のムンプスウイルスの国内流行株はほぼ全てが遺伝子型Gであり、Gw系統が主流であった。Ge系統とGw系統の流行域の地理的な区分は必ずしも明確ではなく、流動的であった。
4. 乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンは、平成22年度の施策に続き、平成23年度、平成24年度と接種勧奨を拡大した。第2期接種や特例対象者の接種はなお低迷している。さらなる勧奨が必要である。
5. DTaP-sIPV接種後の百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオに対する抗体価の推移を解析し、ポリオウイルスに対しては、接種後十分な中和抗体価が持続できていることが確認された。
6. H26年2月3日現在、ポリオウイルスは環境水より検出されていない.
7.国内のロタウイルス導入前の後ろ向き調査では(n=1,851)、5歳未満の腸重積症発症率は39.5/100,000、1歳未満に限定すると68.3/100,000であった。平成26年1月23日現在の8県の前向き調査の結果では、後ろ向き調査と比較し低くなっている(男児に多く、1歳未満の罹患率が最も高い35.6/100,000)。
8.小児、成人における肺炎球菌ワクチンの免疫原性の評価として、特異抗体による補体依存性貪食殺菌能、小児のHibワクチンの免疫原性の評価として、特異抗体による補体殺菌能が有用であることを示した。
9.Fim2, Fim3抗体の測定は百日咳の診断に有用な血清診断法と考えられた。
10.ワクチン接種の意思決定に関するリスクコミュニケーションについて、心理学的な実験手法を用いた研究計画を進めた。
結論
成人の風疹対策、麻疹輸入例の国内対応、水痘の自然感染とワクチン株の分別、ムンプスウイルスの国内流行株サーベイランス、DTaP-sIPV接種後の血清抗体サーベイランス、環境中のポリオウイルスサーベイランス、国内のロタウイルス導入前の5歳未満小児の腸重積症発症率調査、肺炎球菌ワクチン、Hibワクチンの免疫原性の評価、百日咳の血清診断法について検討した。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318025Z