文献情報
文献番号
201317027A
報告書区分
総括
研究課題名
新規薬剤の生体内スクリーニングシステムの確立と網膜保護用デバイスの開発
課題番号
H23-感覚-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 俊明(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 中澤 徹(東北大学 大学院医学系研究科)
- 西澤 松彦(東北大学 大学院工学研究科)
- 永井 展裕(東北大学 大学院医学系研究科)
- 植田 弘師(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,288,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
安全性が担保された既存薬薬剤ライブラリー等を用いた網羅的薬剤スクリーニングを行い、同時に低分子から蛋白質まで幅広い用途にあわせた薬剤を持続的に徐放できるデバイスを開発し網膜保護をめざすことを目的とした。
研究方法
1)候補薬剤のスクリーニング
薬剤スクリーニングはすでに臨床薬として承認されている既存薬ライブラリー(1274種)、および米国でヒト安全性は確立されたが最終的に製薬にならなかった薬剤ライブラリー(1040種)、東北大学に特許を有するプロリル水酸化酵素阻害薬(TM6008,TM6089)等、また我々がこれまでの研究成果として動物実験レベルで網膜神経保護効果を認めたバソヒビン、HSP誘導剤、抗活性酸素薬、カルシウムチャンネル阻害薬、カルパイン阻害剤、海洋微生物ライブラリー由来産物、また眼疾患で点眼に利用されている抗緑内障薬、ステロイド、新生血管抑制因子を用いて、網膜細胞の培養負荷(低栄養・虚血負荷)を利用して保護効果スクリーニングを行った(新規薬剤)。 担当:中澤、植田
2)デバイスの作製
Triethyleneglycol dimethacrylate(TEGDM、Mw283)でデバイス外側を作成した。薬剤はPolyethyleneglycol dimethacrylate(PEGDM、Mn 750)/TEGDM比を調整してペレット化し徐放膜で蓋をした。TEGDM 100%の膜は全く薬物を透過せず、逆にPEGDM 100%の膜は透過性が高いためPEGDMとTEGDMの組成比により透過性を制御する膜を作成した。担当:西澤、阿部、永井
3)薬効検討システム
①ラット網膜変性モデルの利用。網膜変性モデルは光障害モデル、遺伝性網膜変性モデルを利用した。候補になる薬剤は、デバイスに包埋後すべて強膜上に固定して検討した。眼内組織への薬物移行性の評価は、ラベルできる分子は蛍光色素で標識し組織学的に、直接蛍光色素を測定して評価した。複数の薬剤も別々に徐放させ、網膜変性抑制の相乗効果を確認した。前段階の試験として3種類の蛍光色素をそれぞれ別々に徐放し検討した。
②ウサギ遺伝子改変網膜変性モデルの利用。ラットより大型でデバイスサイズ変更も検討した(今回はデバイスのサイズの確認と網膜まで薬剤が徐放されることの確認に使用した)。
③網膜保護効果の測定。経時的に網膜電図、眼底検査、蛍光眼底撮影、必要に応じてより詳細な組織学的検査、アポトーシス検査、各種遺伝子発現検査を行った。
④保護作用の機序解明。網膜保護効果が見られたものは、薬剤の本来の機序を基本にウエスタンやreal-time PCRで細胞内シグナルの変化を確認した。
(倫理面への配慮)
動物実験に関しては研究機関内の承認手続きを経てから動物の愛護及び管理に関する法律を遵守して厳格に動物実験を行った。
薬剤スクリーニングはすでに臨床薬として承認されている既存薬ライブラリー(1274種)、および米国でヒト安全性は確立されたが最終的に製薬にならなかった薬剤ライブラリー(1040種)、東北大学に特許を有するプロリル水酸化酵素阻害薬(TM6008,TM6089)等、また我々がこれまでの研究成果として動物実験レベルで網膜神経保護効果を認めたバソヒビン、HSP誘導剤、抗活性酸素薬、カルシウムチャンネル阻害薬、カルパイン阻害剤、海洋微生物ライブラリー由来産物、また眼疾患で点眼に利用されている抗緑内障薬、ステロイド、新生血管抑制因子を用いて、網膜細胞の培養負荷(低栄養・虚血負荷)を利用して保護効果スクリーニングを行った(新規薬剤)。 担当:中澤、植田
2)デバイスの作製
Triethyleneglycol dimethacrylate(TEGDM、Mw283)でデバイス外側を作成した。薬剤はPolyethyleneglycol dimethacrylate(PEGDM、Mn 750)/TEGDM比を調整してペレット化し徐放膜で蓋をした。TEGDM 100%の膜は全く薬物を透過せず、逆にPEGDM 100%の膜は透過性が高いためPEGDMとTEGDMの組成比により透過性を制御する膜を作成した。担当:西澤、阿部、永井
3)薬効検討システム
①ラット網膜変性モデルの利用。網膜変性モデルは光障害モデル、遺伝性網膜変性モデルを利用した。候補になる薬剤は、デバイスに包埋後すべて強膜上に固定して検討した。眼内組織への薬物移行性の評価は、ラベルできる分子は蛍光色素で標識し組織学的に、直接蛍光色素を測定して評価した。複数の薬剤も別々に徐放させ、網膜変性抑制の相乗効果を確認した。前段階の試験として3種類の蛍光色素をそれぞれ別々に徐放し検討した。
②ウサギ遺伝子改変網膜変性モデルの利用。ラットより大型でデバイスサイズ変更も検討した(今回はデバイスのサイズの確認と網膜まで薬剤が徐放されることの確認に使用した)。
③網膜保護効果の測定。経時的に網膜電図、眼底検査、蛍光眼底撮影、必要に応じてより詳細な組織学的検査、アポトーシス検査、各種遺伝子発現検査を行った。
④保護作用の機序解明。網膜保護効果が見られたものは、薬剤の本来の機序を基本にウエスタンやreal-time PCRで細胞内シグナルの変化を確認した。
(倫理面への配慮)
動物実験に関しては研究機関内の承認手続きを経てから動物の愛護及び管理に関する法律を遵守して厳格に動物実験を行った。
結果と考察
ライブラリーからのスクリーニングの結果、非負荷培養と同等の細胞活性を示すと考えられる抗真菌薬トリクロマゾールが確認された。また、薬剤徐放デバイスの作製も同時に行ったが、デバイスはサイズのみでなく眼球曲率などに合わせた工夫が必要であった。ラット移植用のデバイスでは光障害モデルでも遺伝性網膜変性モデルでも網膜保護効果を確認した。複数の蛍光色素がデバイスから別々の量にコントロールされて徐放されて網膜に達するのを確認した。また、高分子の代表としてバソヒビンを利用したが、ラット脈絡膜新生血管を抑制した。本結果から我々の目指すものが、特に網膜疾患治療において創薬プロセス革新の一旦を担うことが可能であると考えられた。
本研究で当初の目的の8割以上を達成できた。本研究では、安全性が担保されている薬剤ライブラリーから網膜細胞に保護効果のある薬剤をスクリーニングして、強膜上から徐放することで網膜保護効果を確認した。本方法は近年特に注目を集めているdrug repositioning strategy(DR)の1つになると考えられるが、今回はまずスクリーニングで抗真菌剤のトリクロマゾールが網膜保護に有効である可能性が初めて明らかになった(特許申請)。この薬剤は我々のデバイスで経強膜から徐放させることで光障害から網膜を保護する効果があることが判明した(投稿中)。
また、我々が開発した強膜上薬剤徐放デバイスはこれまで検討した薬剤を十分に網膜に徐放制御できると考えられる。本研究は創薬プロセスの革新に眼科領域から取り組むことに成功していると言え、これからの行政施策にも貢献できると考える。
本研究で当初の目的の8割以上を達成できた。本研究では、安全性が担保されている薬剤ライブラリーから網膜細胞に保護効果のある薬剤をスクリーニングして、強膜上から徐放することで網膜保護効果を確認した。本方法は近年特に注目を集めているdrug repositioning strategy(DR)の1つになると考えられるが、今回はまずスクリーニングで抗真菌剤のトリクロマゾールが網膜保護に有効である可能性が初めて明らかになった(特許申請)。この薬剤は我々のデバイスで経強膜から徐放させることで光障害から網膜を保護する効果があることが判明した(投稿中)。
また、我々が開発した強膜上薬剤徐放デバイスはこれまで検討した薬剤を十分に網膜に徐放制御できると考えられる。本研究は創薬プロセスの革新に眼科領域から取り組むことに成功していると言え、これからの行政施策にも貢献できると考える。
結論
網膜細胞保護に役立つ薬剤がスクリーニングされた。我々のデバイスから徐放された薬剤は網膜まで徐放されているのが確認され、徐放薬剤の網膜保護効果も確認された。眼内注射に代わる眼内への安全な薬物投与方法として期待できる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-