文献情報
文献番号
201315006A
報告書区分
総括
研究課題名
地域やライフステージを考慮した歯および口腔の健康づくりの支援体制の構築に関する研究
課題番号
H23-循環器等(歯)-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
川口 陽子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 平田 幸夫(神奈川歯科大学 社会歯科学)
- 森尾 郁子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 福泉 隆喜(九州歯科大学 社会歯科学)
- 植野 正之(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,273,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の歯科保健施策を国際的な視点から客観的に評価するとともに、歯科疾患を取り巻く社会環境の変遷、歯科保健の現状とその評価を行い、今後必要とされる地域やライフステージを考慮した歯及び口腔の健康づくりの支援体制の構築に向けた具体的な提示を行うことである。
研究方法
日本に関しては、歯科保健医療の提供体制に関する基礎データの最新情報また、介護保険制度に関する情報の概要をまとめた。さらに、日本における疫学調査のデータをもとに、出産回数と歯の状況との関連を調査し、日本における健康格差と社会的要因についてまとめた。海外に関しては、シンガポールの医療従事者に関する情報をまとめ、北欧諸国で使用されている歯科保健医療の質評価指標を用いて日本と北欧を比較した。さらに、フランスの生涯研修制度について調査した。また、アジア諸国のう蝕予防に関する調査、ヨーロッパ連合(EU)加盟国の歯科保健医療制度に関する調査を行った。また、国際歯科研究学会(IADR)が発表した口腔の健康格差解消のための国際的研究課題について調査を行った。
結果と考察
日本の歯科保健医療制度、介護保険制度に関する調査では、歯科医療費の状況、歯科疾患の有病状況、歯科保健医療サービスの提供状況、歯科保健医療の業務範囲、歯科医師の専門性及び行政の歯科医師の情報等が、国のデータとして公表されており、歯科保健医療に関する基礎データは大部分整えられていることが示された。介護保険は、急速な少子高齢化の進展、雇用や経済情勢の変動、国民意識の多様化などにより、取り巻く環境が大きく変化している。今後、給付と負担のバランスを前提とした見直しが必要であると考えられた。
日本人の出産回数と歯の状況に関する研究では、多目的コホート研究のデータを用いて、1990年と2005年の歯科調査の両方に参加した1,211名(男性562名、女性649名)を対象として分析を行った。出産回数の多い女性は少ない女性と比較して歯科疾患罹患へのリスクが高く、歯を喪失しやすいこと、また臼歯部での咬合関係を失う可能性が高いことが明らかになった。
日本における健康格差と「健康の社会的決定要因」に関する調査では、健康格差を解消していくためには、実態を調査し、現状を正確に把握すること、次にそれに基づきソーシャルキャピタルなどの対策を立案・実施していくことが重要であると考えられた。
シンガポールの歯科医療従事者に関する養成、登録、更新制度に関する調査では、歯科医師の養成はシンガポール国立大学歯学部にて4年間の教育期間で行われていた。歯科医師の登録は、3種類の登録区分があり、それぞれ治療可能な領域が決められていた。
アジア諸国のう蝕予防に関する調査では、アジア地域の多くの国では小児期や学童期にう蝕予防プログラムなどを実施している。しかし、社会経済的状況、歯科医療従事者の不足や偏在などの理由で、必ずしも国全体に普及しているとは限らない。また、成人へのう蝕予防プログラムは殆どなく、高齢者でも歯科治療提供が主であった。
ヨーロッパ連合(EU)加盟国の歯科保健医療制度に関する調査では、ヨーロッパの歯科事情白書とも言える書籍を翻訳し、検討を行った。歯学教育期間、臨床研修は国によって様々であった。
北欧諸国における歯科保健医療に関する評価指標に関する調査では、北欧4カ国と日本の口腔保健状況や歯科医療状況を、歯科保健医療の質評価指標を用いて比較した。比較の結果、データの調査年、対象、調査方法が異なっていたり、収集していないデータもあり、共通指標を用いて歯科保健医療を国際比較することは非常に難しいことが判明した。
フランスにおける歯科医師生涯研修に関する調査では、ここ数年でフランスでは、歯科医師を含むすべての医療職業人に対する生涯研修制度の基盤整備が急速に進んでいた。その現状と課題について知ることは、日本の歯科医師育成における質保証を考える上で重要と思われた。
口腔の健康格差解消のための国際的研究課題(IADR-GOHIRA)に関する調査では、国際歯科研究学会は歯科疾患の健康格差解消を重要な研究課題として位置付けていた。健康格差を軽減できるようなプログラムを検討するため、Global Oral Health Inequalities: the Research Agenda (GOHIRA)を設立し、口腔の健康に関する課題解決へ向けての提案を行った。我が国においても世界の潮流を必要に応じて取り入れながら、口腔保健を推進していく研究を実施する必要があると考えられた。
日本人の出産回数と歯の状況に関する研究では、多目的コホート研究のデータを用いて、1990年と2005年の歯科調査の両方に参加した1,211名(男性562名、女性649名)を対象として分析を行った。出産回数の多い女性は少ない女性と比較して歯科疾患罹患へのリスクが高く、歯を喪失しやすいこと、また臼歯部での咬合関係を失う可能性が高いことが明らかになった。
日本における健康格差と「健康の社会的決定要因」に関する調査では、健康格差を解消していくためには、実態を調査し、現状を正確に把握すること、次にそれに基づきソーシャルキャピタルなどの対策を立案・実施していくことが重要であると考えられた。
シンガポールの歯科医療従事者に関する養成、登録、更新制度に関する調査では、歯科医師の養成はシンガポール国立大学歯学部にて4年間の教育期間で行われていた。歯科医師の登録は、3種類の登録区分があり、それぞれ治療可能な領域が決められていた。
アジア諸国のう蝕予防に関する調査では、アジア地域の多くの国では小児期や学童期にう蝕予防プログラムなどを実施している。しかし、社会経済的状況、歯科医療従事者の不足や偏在などの理由で、必ずしも国全体に普及しているとは限らない。また、成人へのう蝕予防プログラムは殆どなく、高齢者でも歯科治療提供が主であった。
ヨーロッパ連合(EU)加盟国の歯科保健医療制度に関する調査では、ヨーロッパの歯科事情白書とも言える書籍を翻訳し、検討を行った。歯学教育期間、臨床研修は国によって様々であった。
北欧諸国における歯科保健医療に関する評価指標に関する調査では、北欧4カ国と日本の口腔保健状況や歯科医療状況を、歯科保健医療の質評価指標を用いて比較した。比較の結果、データの調査年、対象、調査方法が異なっていたり、収集していないデータもあり、共通指標を用いて歯科保健医療を国際比較することは非常に難しいことが判明した。
フランスにおける歯科医師生涯研修に関する調査では、ここ数年でフランスでは、歯科医師を含むすべての医療職業人に対する生涯研修制度の基盤整備が急速に進んでいた。その現状と課題について知ることは、日本の歯科医師育成における質保証を考える上で重要と思われた。
口腔の健康格差解消のための国際的研究課題(IADR-GOHIRA)に関する調査では、国際歯科研究学会は歯科疾患の健康格差解消を重要な研究課題として位置付けていた。健康格差を軽減できるようなプログラムを検討するため、Global Oral Health Inequalities: the Research Agenda (GOHIRA)を設立し、口腔の健康に関する課題解決へ向けての提案を行った。我が国においても世界の潮流を必要に応じて取り入れながら、口腔保健を推進していく研究を実施する必要があると考えられた。
結論
海外諸国との比較から、日本の歯科保健制度、公的医療保険制度、歯科保健状況の調査手法などは優れた点が多いことがわかった。また、海外に向けて積極的に情報発信・情報公開していくことが必要と思われた。
公開日・更新日
公開日
2015-09-07
更新日
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