高悪性度骨軟部腫瘍に対する標準治療確立のための研究 

文献情報

文献番号
201314009A
報告書区分
総括
研究課題名
高悪性度骨軟部腫瘍に対する標準治療確立のための研究 
課題番号
H23-がん臨床-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 幸英 (九州大学 大学院医学研究院院整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 平賀 博明(北海道がんセンター 整形外科 )
  • 松延 知哉(九州大学病院 整形外科 )
  • 比留間 徹(神奈川県立がんセンター 骨軟部腫瘍外科 )
  • 中馬 広一(国立がん研究センター 中央病院 骨・軟部腫瘍科 )
  • 戸口田 淳也(京都大学再生医科学研究所組織再生応用分野 整形外科 )
  • 尾崎 敏文(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 整形外科)
  • 米本 司(千葉県がんセンター 整形外科 )
  • 松峯 昭彦(三重大学医学部 整形外科 )
  • 大野 貴敏(岐阜大学医学部 整形外科 )
  • 森岡 秀夫(慶応義塾大学医学部 整形外科 )
  • 松本 誠一(癌研究会有明病院 整形外科 )
  • 平岡 弘二(久留米大学医学部 整形外科 )
  • 下瀬 省二(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 整形外科 )
  • 荒木 信人(大阪府立成人病センター 整形外科 )
  • 森井 健司(杏林大学医学部 整形外科 )
  • 吉川 秀樹(大阪大学大学院医学系研究科 整形外科 )
  • 保坂 正美(東北大学大学院医学系研究科 整形外科 )
  • 和田 卓郎(札幌医科大学 整形外科 )
  • 杉浦 英志(愛知県がんセンター中央病院 整形外科 )
  • 西田 佳弘(名古屋大学大学院医学系研究科 整形外科 )
  • 阿部 哲士(帝京大学医学部 整形外科 )
  • 横山 庫一郎(国立病院機構 九州がんセンター 整形外科 )
  • 畠野 宏史(新潟県立がんセンター新潟病院 整形外科 )
  • 吉田 行弘(日本大学医学部 整形外科 )
  • 高橋 満(静岡県立静岡がんセンター 整形外科 )
  • 野島 孝之(金沢医科大学 臨床病理学 )
  • 小田 義直(九州大学大学院医学研究院 形態機能病理学 )
  • 蛭田 啓之(東邦大学医療センター佐倉病院 病院病理部)
  • 山口 岳彦(自治医科大学人体病理学部門 病理診断部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨肉腫に対し、MTX、ADM、CDDPによる術前化学療法を行い、効果不充分例に対し、術後化学療法としてIFOを追加する上乗せ延命効果があるかどうかを、ランダム化比較により検証する(JCOG0905)。高悪性度軟部肉腫に対するIFO, ADMによる補助化学療法の第II相臨床試験(JCOG0304)に関しても、症例の解析を引き続き行う。
研究方法
JCOG0905
研究形式:多施設共同第III相ランダム化比較試験。Primary endpointはA、B群の無病生存期間。
対象:転移の無い四肢原発高悪性度骨肉腫。患者登録とランダム割付:術前化学療法を行い、切除標本の腫瘍壊死割合を判定し、効果不充分例にはランダム割付を行う(A群・B群)。著効例は術前と同じレジメンで治療を行う(G群)。
術前化学療法:AP (ADM 60mg/m2+CDDP 120mg/m2) x 2、MTX (12g/m2) x 4
術後化学療法:効果不充分例は、以下の治療を実施。(A群:AP x 2、MTX x 6、ADM (90mg/m2) x 2、B群:AP x 2、MTX x 4、IFO (16g/m2) x 6)
予定症例数:登録期間6年、追跡10年、予定症例数200例。

JCOG0304
研究形式:多施設共同第II相臨床試験。Primary endpointは2年無増悪生存割合
対象:転移のない四肢原発高悪性度非円形細胞軟部肉腫
化学療法、手術スケジュール:ADM 30 mg/m2/day (day 1-2)、IFO 2 g/m2/day (day 1-5)
3週1コースとして術前3コース、広範切除術、術後2コースの計5コース実施。
予定症例数:登録期間4年、登録終了2年後に最終解析を行う。登録予定症例数75例。
結果と考察
JCOG0905;平成22年2月より登録を開始し、平成26年2月現在、105例の一次登録、59例の二次登録が既に得られている。平成26年度以降も症例集積と、安全性に配慮しながら定期モニタリングを実施していく予定である。術前化学療法の効果不充分例に対しIFOを加えた術後化学療法による予後改善効果を検証する本研究は、世界的にも極めて重要な研究と考えられる。
JCOG0304;登録症例数は平成20年9月で72例となり、登録終了とした。平成26年の1月の集計では、2年無増悪生存割合76.4%、9年無増悪生存割合65.3%と良好な成績が得られており、JCOG骨軟部腫瘍グループでは、ADM+IFO併用化学療法が標準的補助化学療法と判断したが、より長期の追跡をするために、追跡期間が10年となるようにプロトコールを改訂した。世界的にみても、補助化学療法の有効性を示す画期的な研究となり、世界標準となりうる可能性を秘めた極めて意義深いものである。
結論
転移の無い四肢原発骨肉腫に対し、MTX、ADM、CDDPによる術前化学療法を行い、効果不充分例に対し、術後化学療法としてIFOを追加する上乗せ延命効果を検証する多施設共同試験を開始した。高悪性度非円形細胞軟部肉腫に対する補助化学療法の臨床試験は症例登録を終了し、今後は結果解析を行っていく予定である。一方、ADM+IFO療法は強い血液毒性や長期入院の必要性などが明らかとなり、有効でより毒性が軽い標準治療確立を目的として、平成26年2月よりADM+IFOとGEM+DOCのランダム化比較第III相試験を開始した(JCOG1306)。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201314009B
報告書区分
総合
研究課題名
高悪性度骨軟部腫瘍に対する標準治療確立のための研究 
課題番号
H23-がん臨床-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 幸英 (九州大学 大学院医学研究院院整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 井須 和男(北海道がんセンター 外科系診療)
  • 平賀 博明(北海道がんセンター 腫瘍整形外科 )
  • 松田 秀一(九州大学大学院医学研究院 整形外科)
  • 松延 知哉(九州大学病院 整形外科)
  • 比留間 徹  (神奈川県立がんセンター 骨軟部腫瘍外科)
  • 中馬 広一(国立がんセンター中央病院 骨軟部腫瘍科)
  • 戸口田 淳也(京都大学再生医科学研究所 組織再生応用分野)
  • 尾崎 敏文(岡山大学大学院 整形外科学 )
  • 米本 司(千葉県がんセンター 整形外科)
  • 松峯 昭彦(三重大学大学院医学系研究科 整形外科学)
  • 大野 貴敏(岐阜大学大学院医学系研究科 整形外科学)
  • 森岡 秀夫(慶応義塾大学医学部 整形外科)
  • 松本 誠一(がん研有明病院 整形外科)
  • 平岡 弘二(久留米大学医学部 整形外科)
  • 下瀬 省二(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 整形外科)
  • 荒木 信人  (大阪府立成人病センター 整形外科 )
  • 望月 一男(杏林大学医学部 整形外科)
  • 森井 健司(杏林大学医学部 整形外科 )
  • 吉川 秀樹  (大阪大学大学院医学系研究科 整形外科)
  • 保坂 正美( 東北大学大学院医学系研究科 整形外科)
  • 和田 卓郎(札幌医科大学道民医療推進学 整形外科 )
  • 杉浦 英志(愛知県がんセンター中央病院 整形外科)
  • 西田 佳弘(名古屋大学医学部 整形外科)
  • 阿部 哲士(帝京大学医学部 整形外科 )
  • 横山 良平(国立病院機構九州がんセンター 整形外科)
  • 横山 庫一郎(国立病院機構九州がんセンター 整形外科 )
  • 守田 哲郎(新潟県立がんセンター新潟病院 整形外科)
  • 畠野 宏史(新潟県立がんセンター新潟病院 整形外科 )
  • 吉田 行弘  (日本大学医学部 整形外科 )
  • 高橋 満   (静岡県立静岡がんセンター 副院長)
  • 野島 孝之(金沢医科大学 臨床病理学)
  • 小田 義直(九州大学大学院医学研究院 形態機能病理学)
  • 蛭田 啓之(東邦大学医療センター佐倉病院 病院病理部 )
  • 山口 岳彦(自治医科大学 人体病理学部門病理診断部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高悪性度非円形細胞軟部肉腫に対するIfosfamide, Adriamycinによる補助化学療法の第II相臨床試験(JCOG0304)に関しても、症例の解析を引き続き行う。骨肉腫に対し、MTX、ADM、CDDPによる術前化学療法を行い、効果不充分例に対し、術後化学療法としてIFOを追加する上乗せ延命効果があるかどうかを、ランダム化比較により検証する(JCOG0905)。
研究方法
JCOG0304
研究形式:多施設共同第II相臨床試験。Primary endpointは2年無増悪生存割合
対象:転移のない四肢原発高悪性度非円形細胞軟部肉腫
化学療法、手術スケジュール:ADM 30 mg/m2/day (day 1-2)、IFO 2 g/m2/day (day 1-5)
3週1コースとして術前3コース、広範切除術、術後2コースの計5コース実施。
予定症例数:登録期間4年、登録終了2年後に最終解析を行う。登録予定症例数75例。

JCOG0905
研究形式:多施設共同第III相ランダム化比較試験。Primary endpointはA、B群の無病生存期間。
対象:転移の無い四肢原発骨肉腫。患者登録とランダム割付:術前化学療法を行い、切除標本の腫瘍壊死割合を判定し、効果不充分例にはランダム割付を行う(A群・B群)。著効例は術前と同じレジメンで治療を行う(G群)。
術前化学療法:AP (ADM 60mg/m2+CDDP 120mg/m2) x 2、MTX (12g/m2) x 4
術後化学療法:効果不充分例は、以下の治療を実施。(A群:AP x 2、MTX x 6、ADM (90mg/m2) x 2、B群:AP x 2、MTX x 4、IFO (15g/m2) x 6)
予定症例数:登録期間6年、追跡10年、予定症例数200例。
結果と考察
JCOG0304;登録症例数は平成20年9月で72例となり、登録終了とした。平成26年の1月の集計では、9年無増悪生存割合65.3%と良好な成績が得られており、JCOG骨軟部腫瘍グループでは、ADM+IFO併用化学療法が標準的補助化学療法と判断した。一方、ADM+IFO療法は強い血液毒性や長期入院の必要性などが明らかとなり、有効でより毒性が軽い標準治療確立を目的として、平成26年2月よりADM+IFOとGEM+DOCのランダム化比較第III相試験を開始した(JCOG1306)。
JCOG0905;平成22年2月より登録を開始し、平成26年2月現在、105例の一次登録、59例の二次登録が得られている。平成16年度よりがん臨床研究事業により助成された臨床研究の遂行を通じて、地域がん診療連携拠点病院への情報提供や人的ネットワークの構築等などにより、診療科ならびに病院横断的な連携体制の構築や、家族へのサポート体制の質的向上、診療の均てん化がなされてきた。
結論
高悪性度非円形細胞軟部肉腫に対する補助化学療法の臨床試験は良好な成績を維持しており、JCOG骨軟部腫瘍グループでは、ADM+IFO療法は標準補助化学療法と結論した。しかし、ADM+IFO療法は強い血液毒性や長期入院必要性などがあり、有効でより毒性が軽い標準治療確立を目的として、平成26年2月よりADM+IFOとGEM+DOCのランダム化比較第III相試験を開始した(JCOG1306)。
転移の無い四肢原発骨肉腫に対し、MTX、ADM、CDDPによる術前化学療法を行い、効果不充分例に対し、術後化学療法としてIFOを追加する上乗せ延命効果を検証する多施設共同試験は、平成26年度以降も症例集積と、安全性に配慮しながら定期モニタリングを実施していく予定である。術前化学療法の効果不充分例に対しIFOを加えた術後化学療法による予後改善効果を検証する本研究は、世界的にも極めて重要な研究と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201314009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
骨肉腫に対するMTX, ADM, CDDP, IFOによる術前術後補助化学療法の第III相比較試験を継続した。また、高悪性度非円形細胞軟部肉腫に対するADM,IFO(AI)による術前術後補助化学療法の第II相臨床試験(JCOG0304)を行った結果、AI療法が標準的補助化学療法と判断したが、長期の入院を要し強い血液毒性が必発であり、安全性も高く進行例に有効と報告されているGEM, DOCによる補助化学療法とAI併用補助化学療法とのランダム化第Ⅱ/Ⅲ相試験を平成26年2月より開始した。
臨床的観点からの成果
JCOG0304を行った結果、術前に設定した術後2 年無再発生存割合55%を大きく上回る75.7%が達成された。JCOG骨軟部腫瘍グループでは、ADM+IFO併用化学療法が標準的補助化学療法と判断した。現在長期フォロー施行中であるが、良好な生存期間を維持している。本結果は、英文誌に掲載され(J Jpn Clin Oncol, 2015, 45(6) 555–561)、2016年のJJCO Paper of the Yearを受賞した。
ガイドライン等の開発
厚生労働省がん対策推進基本計画に基づく希少がん対策として発足された希少がん医療・支援のあり方に関する検討会の立ち上げから助言を行い、構成員として参画している。希少がんの定義、診療提供体制、情報の集約・発信、相談支援、研究開発のあり方について、希少がんが数多く存在する小児がん対策の進捗等も参考にしながら検討している。
その他行政的観点からの成果
平成16年度よりがん臨床研究事業により助成された臨床研究の遂行を通じて、地域がん診療連携拠点病院への情報提供や人的ネットワークの構築等などにより、診療科ならびに病院横断的な連携体制の構築や、家族へのサポート体制の質的向上、診療の均てん化がなされてきた。また、JCOG0905の登録患者の多くは小児であるため、小児患者向けにJCOG初のアセント文書を作成するなど小児がん研究の体制整備にも努め、JCOG骨軟部腫瘍グループの参加施設では小児科医との緊密な連携体制を採って患児の治療にあたっている。
その他のインパクト
2011年6月12日放映日本医師会企画テレビ番組「話題の医学/四肢に生じる腫瘍の病態・診断・治療」に出演した。

発表件数

原著論文(和文)
46件
原著論文(英文等)
215件
その他論文(和文)
190件
その他論文(英文等)
24件
学会発表(国内学会)
770件
学会発表(国際学会等)
139件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujiwara-Okada Y, Iwamoto Y, et al.
Y-box binding protein-1 regulates cell proliferation and is associated with clinical outcomes of osteosarcoma
Br J Cancer , 108 (4) , 836-847  (2013)
10.1038/bjc.2012.579
原著論文2
Yamada K, Ohno T, Toguchida T, et al.
EWS/ATF1 expression induces sarcomas from neural crest-derived cells in mice
J Clin Invest , 123 (2) , 600-610  (2013)
10.1172/JCI63572
原著論文3
Iwamoto Y, Tanaka K
The Activity of the Bone and Soft Tissue Tumor Study Group of the Japan Clinical Oncology Group
Jpn J Clin Oncol , 42 (6) , 467-470  (2012)
10.1093/jjco/hys059
原著論文4
Nishiyama Y, Chuman H, et al.
Prediction of Treatment Outcomes in Patients with Chest Wall Sarcoma: Evaluation with PET/CT
Jpn J Clin Oncol , 42 (10) , 912-918  (2012)
10.1093/jjco/hys116
原著論文5
Fujiwara T, Iwamoto Y, et al.
Macrophage infiltration predicts a poor prognosis for the human Ewing sarcoma
Am J Pathol , 179 (3) , 1157-1170  (2011)
10.1016/j.ajpath.2011.05.034
原著論文6
Uejima D, Toguchida J, et al.
Involvement of a cancer biomarker C7orf24 in the growth of human osteosarcoma
Anticancer Res , 31 , 1297-1305  (2011)
原著論文7
Matsumine A, et al.
A novel hyperthermia treatment for bone metastases using magnetic materials
Int J Clin Oncol , 16 , 101-108  (2011)
10.1007/s10147-011-0217-3

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
2018-06-08

収支報告書

文献番号
201314009Z