乳癌患者における妊孕性保持支援のための治療選択および患者支援プログラム・関係ガイドライン策定の開発 

文献情報

文献番号
201313051A
報告書区分
総括
研究課題名
乳癌患者における妊孕性保持支援のための治療選択および患者支援プログラム・関係ガイドライン策定の開発 
課題番号
H24-3次がん-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
清水 千佳子(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 乳腺・腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 真司(国立病院機構 九州がんセンター)
  • 坂東 裕子(筑波大学大学院)
  • 加藤 友康(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 婦人腫瘍科)
  • 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学)
  • 浅田 義正(医療法人 浅田レディースクリニック)
  • 津川 浩一郎(聖マリアンナ医科大学病院)
  • 渡邊 知映(昭和大学)
  • 田村 宜子(国家公務員共済組合連合会 虎ノ門病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳癌初期治療における薬物療法は生命予後を改善するが、化学療法による卵巣機能障害や長期内分泌療法は妊孕性の保持を困難にするため、挙児希望のある患者はライフプランの変更が余議なくされる。このため、乳癌薬物療法の選択において、患者との対話を重視し、サバイバーシップとのバランスをとるべきとの考え方が普及してきたため、乳癌専門医および生殖医療専門医との連携およびガイドライン作成の必要性を検討する。
研究方法
①ガイドライン案のまとめ
乳癌患者の妊娠と出産に関する30のクリニカルクエスチョンについて、エビデンスを分析し、乳腺・生殖双方の専門家のピアレビューを経て、推奨レベルを提示する。
乳癌患者の生殖医療に関連する倫理的・法的な問題について考察を行い、ガイドライン案に付記する。
②乳癌患者の生殖医療のDB構築に向けてのパイロット研究
DB作成に必要な項目の抽出し、オンラインによる患者登録システムを作成し、協力施設での試験的な運用を開始する。本研究は観察研究として実施する。
③妊孕性保持に関するガイドラインに関する教育と普及
日本がん・生殖医療研究会、日本乳癌学会もしくは生殖医療関連学会等の協力を得て、ガイドライン案と患者用冊子についての周知・啓発を図る。患者への情報提供にあたり、患者用冊子「を用いた情報提供を開始し、乳がん患者の治療・妊娠・出産に対する意識の調査や冊子内容についての評価を行う。
結果と考察
乳癌治療医と生殖医療医による協議のもと、乳癌患者の妊孕性に関するガイドライン案の作成をすすめた。ガイドライン案は本年度内に序文、用語集も含めた最終版を完成し、外部評価を経たうえで平成26年8月公開予定である。さらに患者用冊子を完成させ、インターネット上に公開し、妊孕性保持を希望する若年乳癌患者の乳癌の予後・生殖に関するアウトカムを評価するためのデータベースの構築を最終的な目標とするイロット研究の研究計画書を作成した。
結論
本研究班で作成した「乳癌患者の妊孕性に関するガイドライン」が公開されれば、乳癌治療・生殖医療それぞれの領域の現場担当者による現状の理解がすすむものと思われ、患者への情報提供が充実するものと思われる。さらに、インターネットから直接ダウンロードできる患者用パンフレットは、患者と医療者とのコミュニケーションの円滑化、患者の意思決定、診療時間の短縮に役立つと思われる。本研究班が立案したデータベースの構築に向けての研究が実行されれば、乳癌患者の妊娠や生殖医療の安全性について、より多くの知見が得られ、エビデンスの構築に役立つと思われる

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201313051B
報告書区分
総合
研究課題名
乳癌患者における妊孕性保持支援のための治療選択および患者支援プログラム・関係ガイドライン策定の開発 
課題番号
H24-3次がん-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
清水 千佳子(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 乳腺・腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 真司(国立病院機構 九州がんセンター)
  • 坂東 裕子(筑波大学大学院)
  • 加藤 友康(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 婦人腫瘍科)
  • 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学)
  • 浅田 義正(医療法人 浅田レディースクリニック)
  • 津川 浩一郎(聖マリアンナ医科大学病院)
  • 渡邊 知映(昭和大学)
  • 田村 宜子(国家公務員共済組合連合会 虎ノ門病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
挙児希望を有する乳癌患者の意思決定と乳癌治療医と生殖医療医の円滑な協働の支援を実現するため、①乳癌患者の妊孕性保持に関する指針案の策定、②リアルタイムでのコンサルテーション・システムの確立、③若年乳癌患者のがん・生殖に関するアウトカムに関するデータベースの構築を目的とした研究を行い、指針案および患者用冊子の作成、データベース構築に関するパイロット研究の研究計画書を作成するとともに、若年乳癌患者における抗ミューラー管ホルモンの意義に関する臨床研究を行った。
研究方法
① 乳癌患者の妊孕性保持に関するガイドラインの作成
MINDs診療ガイドライン作成の手引き(2007)に準拠して、指針案の作成をすすめた。ガイドライン作成の目的は挙児希望を有する乳癌患者の意思決定支援のための医療者間の情報共有であり、対象は、乳癌治療医、生殖医療医および関連するコメディカル。クリニカルクエスチョンは5領域計31個。
② 乳癌患者の生殖医療に関するリアルタイム・コンサルテーション・システムのモデル作成
リアルタイム・コンサルテーション・システムには、a. 情報提供・紹介ツール、b. 治療前の患者の卵巣機能評価、c. 乳癌治療医と生殖医療医のネットワーク形成などが含まれる。ネットワーク形成は、特定非営利活動法人 日本がん・生殖医療研究会が取り組みを始めている。当研究班、a. 情報提供・紹介ツールの作成および治療前の患者の抗ミューラー管ホルモン(AMH)による卵巣機能評価に関する臨床研究を進めた。
③ 妊孕性保持を希望する若年乳癌患者の乳癌の予後・生殖に関するアウトカムを評価するためのデータベースの構築
データベース作成に必要な項目の抽出し、研究プロトコールを立案した。
結果と考察
乳癌治療医と生殖医療医による協議のもと、乳癌患者の妊孕性に関するガイドライン案の作成をすすめた。ガイドライン案は本年度内に最終版を完成し、平成26年8月公開予定である。本指針が公開されれば、乳癌治療・生殖医療それぞれの領域の現場担当者による現状の理解がすすむものと思われ、さらにインターネットから直接ダウンロードできる患者用冊子が活用されることにより、患者と医療者とのコミュニケーションの円滑化、患者の意思決定、診療時間の短縮に役立つと思われる。ガイドラインおよび冊子は今後定期的な改訂を予定している。
なお、指針で示される多くの生殖医療の推奨レベルはC1-C2であり、乳癌のアウトカムを中心に考えると、安全性に関するエビデンスが決定的に不足している。本領域においては臨床試験やデータベースを用いたエビデンスの創出が求められており、今後データベース構築をすすめるとともに、臨床研究を推進する必要がある。未婚女性の卵子保存などに関する規範の整備や、登録制度の確立を含む研究的基盤を確立する必要があると考えられた。また、乳癌患者の妊孕性に関する実地臨床においては、がん医療と生殖医療の倫理面での利害が衝突するケースが少なくないと予想され、今後は、医療者の生命倫理に関する意識の啓発と教育が必要と考えられた。
AMHの臨床的有用性については、治療前のAMH値が独立予測因子となる可能性が示唆された。しかし、観察期間中央値が2年と、未だ不十分であり、また月経の再開が即ち妊娠可能を示すわけではなく、治療終了後の妊娠出産との関係も含め、更に検討を深めてゆく必要がある。
結論
、乳癌患者の妊孕性保持に関するガイドライン案および患者用冊子を作成した。患者用冊子は公開し、ガイドライン案に関しては書籍化を予定している。乳癌患者の生殖医療に関しては、その安全性や適切な管理に関する医学的な知見は乏しく、がん・生殖医療におけるデータベース構築と臨床研究の推進が必須であると考える。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201313051C

成果

専門的・学術的観点からの成果
乳癌患者の妊娠・出産および生殖医療に関するエビデンスに対する系統的評価を行った。乳癌患者の卵巣機能評価におけるAMHの臨床的意義を探索した。「乳がん患者の妊娠出産と生殖医療に関する診療の手引き」によりアンメットニーズが明確になり、若年乳がん患者の妊娠・出産に関する臨床研究が進んだ。
臨床的観点からの成果
乳癌治療医と生殖医療医の協働によるガイドライン作成を実現するとともに、乳癌患者の生殖医療に関する倫理的課題を共有することができた。
「乳がん患者の妊娠出産と生殖医療に関する診療の手引き」の刊行に伴い、乳癌治療医および生殖医療医のこの問題に対する認識が高まり、乳癌患者の妊孕性をテーマにした研究会が各地で開催され、実地臨床上の問題が議論されるようになった。

乳癌以外のがん領域でも若年がん患者の妊孕性対策の充実の必要性が認識されるようになった。
ガイドライン等の開発
乳癌治療医と生殖医療医の協働により、乳癌患者の妊娠・出産および生殖医療に関するガイドライン案および患者用冊子を完成させた。成果物は「乳がん患者の妊娠出産と生殖医療に関する診療の手引き」(2014年9月1日金原出版、東京)として刊行し、2017年7月には日本がん・生殖医療学会の改訂委員会の編集により、改訂版を刊行した。
本「診療の手引き」編集メンバーは、2017年日本癌治療学会が刊行した「小児思春期,若年がん患者の妊孕性温存に関するガイドライン」の乳癌部分の執筆に協力した。
その他行政的観点からの成果
第3期がん対策基本計画のAYA世代のがん患者に対する対策として、治療に伴う生殖機能等への影響等、世代に応じた問題について、治療前に正確な情報提供を行い、必要に応じて、適切な専門施設に紹介するための体制を構築することが記載された。
その他のインパクト
NHK総合 ナビゲーション(2012年11月2日放送)「がんになっても子どもが欲しい」
NHK クローズアップ現代(2013年2月25日放送)「がんになっても子どもが欲しい」

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
第3期がん対策推進基本計画
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「乳がん患者の妊娠出産と生殖医療に関する診療の手引き」(2014年9月1日金原出版、東京)の刊行

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimizu C,Kato T,Tamura N et al.
Perception and needs of reproductive specialists with regard to fertility preseravation of young breast cancer patients
Int J Clin Oncol  (2014)
原著論文2
Shimizu C, Bando H, Kato T, et al.
Physicians' knowledge, attitude and behavior regarding fertility issues for young breast cancer patients: a survey for breast cancer specialists
Breast Cancer , 20 (3) , 230-240  (2013)
原著論文3
Nagatsuma AK, Shimizu C, Takahashi F, et al.
Impact of recent parity on histopathological tumor features and breast cancer outcome in premenopausal Japanese women
Breast Cancer Res treat , 138 (3) , 941-950  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2018-05-23

収支報告書

文献番号
201313051Z