文献情報
文献番号
201313010A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究
課題番号
H22-3次がん-一般-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 倫弘(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 がん予防研究分野)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 貞夫 (名古屋市立大学大学院 公衆衛生学 医学研究科 )
- 田中 卓二(岐阜大学大学院 腫瘍病理学 腫瘍病理学講座)
- 今井 俊夫(独立行政法人 国立がん研究センター研究所 実験病理学 動物実験支援施設)
- 岩崎 基(独立行政法人 国立がん研究センター 疫学 がん予防・検診研究センター)
- 鰐渕 英機(大阪市立大学大学院 都市環境病理学 医学研究科分子病理学)
- 清水 雅仁(岐阜大学医学部付属病院 消化器内科学 第一内科)
- 高橋 智(名古屋市立大学 病理学 大学院医学系研究科実験病態病理学)
- 塚本 徹哉(藤田保健衛生大学実験病理学 病理診断科)
- 高山 哲治(徳島大学大学院 消化器内科学 ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 窪田 直人(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 システム疾患生命科学による先端医療技術開発)
- 石川 秀樹(京都府立医科大学 分子標的癌予防医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
40,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がんは、我が国において死亡原因の第1位を占め、今後もさらに増え続けるものと予測される。このようながんの増加を抑制することは極めて重要である。本研究においては医薬品及び食品素材を対象として新規がん予防剤を検索、開発する基礎研究を行うとともに、発がんの高危険度群と考えられる人々を対象とした臨床研究を行うことにより、安全性の高い有効ながん予防方法を確立することを目的とする。
研究方法
近年著しく増加している大腸がん、肝臓がん、前立腺がん等及び、難治がんである膵がんの予防を目標とし、申請者等が開発した各々の動物発がん実験モデルを用いて肥満、脂質異常症、糖尿病と発がんとの関連性の検討、がん化学予防剤候補の検索、及びそのメカニズム解析を行った。臨床応用を目的に、大腸がんのハイリスクグループである家族性大腸腺腫症(FAP)及び多発性大腸腺腫症患者におけるアスピリン等の臨床介入試験を行なっている。
結果と考察
炭酸脱水素酵素の阻害剤であるアセタゾラミドをマウスに投与すると、AOM誘発マウス大腸ACF数及び、Apc遺伝子変異マウスにおける腸ポリープ数の低下が認められた。がん検診受診者のデータを用いてコーヒー摂取と大腸腺腫との関連を検討すると、コーヒーの摂取量が多い群に結腸腺腫が少ないことがわかった。そこで、炎症関連大腸がんモデルマウスに対するコーヒー成分の影響を検討すると、クロロゲン酸やカフェストールが、大腸腫瘍の生成を抑制することが明らかとなった。脂肪肝の合併は肝臓発がんを促進することが指摘されているため、インスリンの受容体と結合するIRS-1を肝臓特異的に欠損させたマウスにDENを投与した。その結果、IRS-1欠損マウスでは肝腫瘍の増大低下が認められた。また、インスリン抵抗性改善薬メトホルミンは糖尿病モデルマウスに対し、PI3K/Akt/mTOR/p70S6 経路を抑制し、DEN誘導肝腫瘍形成を抑制することが明らかになった。多発性大腸腺腫症患者に対して低用量アスピリン腸溶錠(100 mg/day)の介入試験を行うと、2年間のアスピリン投与により大腸ポリープの再発率が有意に抑制された(OR=0.60)。
結論
本研究においては、医薬品及び食品素材を対象として検索を行い、新規がん化学予防剤の候補化合物を見い出している。これらの基礎的研究を行なうとともに、発がんのハイリスクグループと考えられる人々を対象とした臨床研究を行なうことにより、安全性の高い有効ながん予防方法を確立することができると考えられる。得られる成果は、がん予防対策を講ずる上に有用な研究資料になるものと確信する。
公開日・更新日
公開日
2015-06-02
更新日
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