東アジア低出生力国における人口高齢化の展望と対策に関する国際比較研究

文献情報

文献番号
201303004A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジア低出生力国における人口高齢化の展望と対策に関する国際比較研究
課題番号
H24-地球規模-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 正一(関西学院大学 国際学部)
  • 小島 宏(早稲田大学 社会科学総合学術院)
  • 相馬 直子(横浜国立大学 大学院国際社会科学研究科)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,910,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2000年代に起きた韓国・台湾をはじめとする東アジアの急激な出生率低下は、日本を上回る急激な人口高齢化をもたらす可能性がある。一方で早くも1980年代に出生促進策に転じたシンガポールから、いまだに出生抑制策を続ける中国まで、東アジア諸国の少子化への対応は大きく異なる。経済発展の段階に加え政治体制も異なるため、雇用や社会保障に関する多様性も、東アジアでは特に大きい。このような状況の多様性のため、高齢化への対応として社会保障・福祉政策にとどまらず、家族・経済・雇用・移民といった関連する政策を統合的に把握する必要がある。
研究方法
これまで申請者らが行って来た研究では、韓国・台湾・シンガポールの出生率低下を含む家族人口学的変動と、出生促進策を中心とする家族政策を比較分析してきた。そうした土台に立って、本研究では人口高齢化とその社会保障・経済成長・社会変動に対する影響、および高齢者対策を中心とする人口政策について比較分析を行う。具体的には文献・理論研究(1年目)、比較分析(2年目)、政策評価・提言(3年目)の段階を踏んで、東アジア低出生力国における高齢化への対応が日本の政策展開に対して持つ示唆点と、日本が提示し得るモデルを明らかにする。
結果と考察
国連人口部によると、韓国・台湾では日本を下回る出生力・死亡力水準により、日本以上の高齢化水準に至る。中国の人口高齢化はそれら三国ほどではないが、問題は経済発展が十分でない段階で高齢化が進行する「未富先老」現象である。中国の一人当たり所得はまだ韓国・台湾の水準には及ばないが、人口ボーナスは韓国・台湾とほぼ同時期に終了してしまう。中国はセーフティ・ネット整備の遅れに対処するため、子による老親の扶養義務を法的に強制しているが、家族価値の変容を止めることはできそうにない。
結論
一般には公的移転の役割が増す「福祉国家化」が世界史的な流れだが、国ごとに歴史的経緯も現在の状況も異なる。中国以外の四ヵ国では外国人労働者や移民受入に向けた真剣な議論がなされており、東アジアで高級人材の獲得競争が展開される可能性もある。女性と高齢者の活用を目指す雇用対策は、高齢者の生活に直接的な影響を及ぼす。東アジアの急激な高齢化への政策的対応としては、社会保障政策を中心に広汎な政策とその成否について判断する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-03-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-03-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201303004Z