介護保険制度における最適マネジメントの方策に関する研究

文献情報

文献番号
199800170A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険制度における最適マネジメントの方策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
小山 秀夫(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成12年度の公的介護保険制度の本格的実施に向けて、介護保険施設のマネジメントがどのように変化すると予想できるか、そしてマネジメントの最適化のためにどの様な方法があるのかを研究することは重要な課題である。 本研究の目的は、今後大きな変革を求められる介護保険施設における最適なマネジメントを模索し、介護保険施行時に有用となる施設マネジメントにおける最適化指標等を作成することである。本研究では、介護保険制度の施行までに、施設マネジメントの最適化について、以下のように研究を遂行する計画である。① 公的介護保険による長期療養施設への影響、② 経営環境の変革としての介護保険導入に伴う介護保険施設に必要な対応、③ 施設運営の外部環境としての制度変更の施設マネジメントと利用者に対するケアへの影響、④ ドイツ、オーストラリア、カナダ等における施設ケアマネジメントの実態把握並びに最適マネジメントの概念の明確化、⑤ 施設マネジメント研修会の開催による問題点の把握、解決方策の模索、研修会の効果測定等の実施。
研究方法
平成10年度の研究については、班会議を招集し、班会議等において検討を重ね、以下のように実施した。 第1に、アメリカ合衆国におけるマネジド・ケアの実態の詳細分析を実施した。第2に、施設マネジメントに関する聞き取り調査を実施した。第3に、ケアマネジメントに関わるインボランタリーケースに関する調査を本格的に実施するためのプリテストを実施した。第4に、諸外国との比較検討については、文献調査と諸外国の専門家に聞き取り調査を実施し、ドイツにおけるケアマネジメント並びに介護保険施行時の問題点を整理した。第5に、現在、北米において提唱されている理論の一つであるプリシードプロシードモデルについての検討を行った。
結果と考察
本年度の研究結果は、以下のとおりである。① 合衆国のマネジド・ケアについては、今後もその動向を注目する必要性が大きいことが確認された。DRG/PPSのように米国の医療政策は、何年間かのタイムラグを経て、わが国においても注目を集め、導入が検討される場合が多い。特に、DRG/PPSは、わが国においても導入が検討され、多くの調査研究が実施されているところである。本研究では、マネジド・ケアを理解するためのインデックスを作成するとともに、米国における動向とマネジド・ケアの日本への応用、病院等における経済性の検討、合衆国において、マネジド・ケアが病院組織並びに病院管理にどのような影響を与えているかの検討をおこなった。マネジド・ケアについての研究は、今後わが国の保健・医療・福祉分野において大きな影響を与えるものであり、その活用が期待されるものである。また、マネジド・ケアだけではなく、保健・医療・福祉の政策に密接に関係する New Public Managementについても研究を行った。New Public Management理論は制度・政策的にも重要な問題であり、介護保険制度等に関する今後のわが国の保健・医療・福祉分野の動向に大きく関係するものである。ゆえに、NPMの研究を実施することによって、広義のマネジメントからみた施設マネジメントの関連性が明らかになった。② 施設マネジメントにおける聞き取り調査については、施設マネジメント概念が病院、特別養護老人ホーム、老人保健施設の介護保険施設となる3種別では、それぞれ共通部分と共通していない部分のあることが明かとなった。今後、施設種別間のマネジメント概念の整理と調査によるマネジメント実態把握を行うことが必要であると考える。現場の管理者等の意識を把握できたことは本研究の成果の一部であり、来年度により詳細な研究が必要である。③ 施設管
理概念からは非採算・非効率として経営されがちなインボランタリーケースについての実態調査を実施した。本調査は、今年度はプリテストの段階ではあるが、インボランタリーケースに対してどのように対応してよいかがわからない現場の状況が明らかとなった。本研究を進展させることにより、施設内でインボランタリーなケースにどのように対応することが施設マネジメントにとっても、利用者のケアマネジメントにとっても有用であるかが明確になることによって、その実践的応用が期待でき、ひいては最適マネジメントの一端を担うものと考える。④ 諸外国の専門家への聞き取りは、今年度はドイツの介護保険制度の実態を把握した。ドイツにおける介護保険制度はわが国の介護保険制度の先駆的制度として、様々な影響を与えてきた。ドイツの介護保険制度の施行後の問題点等を把握し明らかになったことにより、今後わが国の介護保険施設等における動向予測がある程度可能となるものと考える。⑤ プリシードプロシードモデルは、ヘルスプロモーションに関する理論から始まっているが、それ以外の分野にも応用できる理論である。利用者の問題を最終的には行政・政策等に結びつけていく考え方は、わが国の保健・医療・福祉分野の最適マネジメントにも応用できるものであると考える。
結論
今年度の研究成果の今後の活用としては、次年度以降に現場において実態把握や要望等を把握するための調査を実施することにより、現場において有用な最適マネジメントが模索可能であると考える。今年度は班会議において、マネジド・ケア、New Public Managem-ent、ドイツの介護保険制度に関する分析・検討を行った。調査については、聞き取り調査は、大分県と北海道根室市、札幌市で行った。インボランタリーケースについての調査は、関西圏の在宅介護支援センター500件を無作為抽出し、調査を実施した。今年度は研究協力者が有しているマネジド・ケア等についての資料とインターネットからの資料などから分析を行った。プリシード・プロシードモデルについては、その提唱者であるローレンス W.グリーン博士から直接聞き取り調査を行った。本年度においては、第2年度に向けてのプリテストや情報収集等を行った。結論として、本年度の研究成果から、いくつかの最適マネジメントに関する方策についての基礎資料が得られたと考える。これらの基礎資料からより詳細な研究が可能となるものと考える。

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