コンタクトレンズ販売の実態調査に基づく販売規制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201235065A
報告書区分
総括
研究課題名
コンタクトレンズ販売の実態調査に基づく販売規制のあり方に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-032
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田倉 智之(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 和子(国立大学法人 金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 上塚 芳郎(学校法人 東京女子医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コンタクトレンズ(CL)は高度管理医療機器に分類され、適正な使用が行われないと重篤な眼障害が発生するリスクがある。最近、CLとケア用品の不適正な使用による重症角膜感染症の実態が報告され、その安全確保対策が急がれる中、従来は雑品であったおしゃれ用度なしカラーCLについてもその健康被害が社会問題となり、非視力補正用コンタクトレンズとして高度管理医療機器に指定された。またCL製品や社会生活の変遷を背景に、近年、ドラッグストアや雑貨店、インターネット・通信販売などからの購入者が増加し、販売チャネルの多様化が一層進行している。そこで、CLの適正販売を進め眼障害の低減を促すことを目的に、CLの販売規制のあり方について研究を行った。
研究方法
本研究では、「世界のCL規制調査」、「CL販売店の実態調査」、「コンプライアンスとCL眼障害調査」の3つから構成した。CL規制調査は、制度関連の文献レビューなどを実施した。CL販売店調査は、アンケート調査、実地調査、インターネット販売調査で推進した。CL眼障害調査は、先行研究データを活用した簡易的なメタ分析などで対応した。
1. 世界のCL販売規制調査
(1)調査対象地域・国
調査対象は、下記に記す3地域10か国とした。
(2)調査方法
各国法令・解説、その他関連文献の収集、および日本コンタクトレンズ協会(以下CL協会)会員及び協力会社の現地法務担当者への質問紙調査により実施した。
2.CL販売店の実態調査
 本調査は、アンケート調査、実地調査、インターネット販売調査の3種別から構成した。
(1)アンケート調査
全国のCL販売店(CL販売店、眼科隣接販売店、眼鏡店、ドラッグストア、雑貨店、その他、インターネット・通信販売)を対象に、無記名WEBアンケート方式を採った。
(2)実地調査
アンケート調査対象のCL販売店のうち、眼科隣接販売店、インターネット・通信販売とその他を除く、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に所在するCL販売店を対象として、調査員訪問方式により実際にCLを購入し、処方せんの必要性などの9項目について調査を行った。
(3)インターネット販売調査
①インターネット画面調査
WEB上でCL販売店サイトを検索し、個人輸入業者・宅配サービス専用サイトを除く190サイトを対象とし、薬事法遵守事項、処方せん、情報提供などについて情報収集を行った。
②インターネット実地調査
画面調査したサイトから無作為に61サイトを選定し、実際にCLを購入し、処方せん、情報提供などの状況について調査を行った。
3.コンプライアンスとCL眼障害調査
最初に、コンプライアンスの低下は眼障害の発症(リスク)を増加させるのかどうか精査を行った。さらに、定期検査と指示遵守のコンプライアンス指標が相互にどのような位置づけにあるかの整理も進めた。
続いて、販売チャネルと眼障害の実態の間に関係は認められるかの精査を行った。さらに、購入方法(処方など)は眼障害のオッズ比とどのような関係にあるのか、定期検査と指示遵守のコンプライアンスと併せて統計学的な分析を行った。
結果と考察
CL規制調査の結果、我が国のCL規制は、諸外国と比べ簡素な販売業許可制のみから構成されており、今後、CL販売や眼障害の実態などに則して、適切な販売規制の検討が必要とされた。またCL販売店調査からは、国内販売業者が高い薬事法遵守の姿勢を維持していることが伺えた。一方、眼科医の処方に基づく販売や購入者への情報提供において、検討の余地があることも判明した。さらにCL眼障害調査の結果、眼障害のリスク要因として装用者のコンプライアンス(指示遵守、定期検査など)が大きいことや、重症化群において販売チャネルと眼障害に一定の関係があるのが示唆された。
結論
CLの適正販売を進め眼障害の低減をさらに促すためには、必要に応じて、次のような検討も意義があると推察される。まず、眼科医の処方(診断)に基づいた販売の推進が挙げられる。また、適正使用に必要な販売業者の情報提供力を強化することも重要である。さらに、購入者への眼障害リスク開示の促進と安全性情報の蓄積を積極的に推進すべきと考えられる。CL販売の適正化を促し眼障害の予防に努めるには、良好な医販連携システムを構築することが求められており、CLに関わる全ての利害関係者が協力してその責務を果たすことが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201235065C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我が国のCL規制は、諸外国と比べ簡素な販売業許可制のみから構成されており、今後、CL販売や眼障害の実態などに則して、適切な販売規制の検討が必要とされた。またCL販売店調査からは、国内販売業者が高い薬事法遵守の姿勢を維持していることが伺えた。
臨床的観点からの成果
眼科医の処方に基づく販売や購入者への情報提供において、さらなる検討の余地があることも判明した。さらに、CL眼障害調査の結果、眼障害のリスク要因として装用者のコンプライアンス(指示遵守、定期検査など)が大きいことや、重症化群において販売チャネルと眼障害に一定の関係にあることも示唆された。
ガイドライン等の開発
CL協会などは販売自主基準を改定し、「受診勧奨」を明記のうえ販売店へ周知することも検討に値する。さらに、インターネット販売や通信販売などの非対面販売の適正化に関する指針の作成も望まれる。
その他行政的観点からの成果
「コンプライアンスとCL眼障害調査」などで得られた示唆から、眼科医の処方(診断)に基づいた販売の推進が挙げられる。また、「CL販売店の実態調査」などの結果より、適正使用に必要な販売業者の情報提供力を強化することも重要と思われる。さらに、装用者側の行動変容を促すためにも、またそれらに資する情報の精度向上のためにも、購入者への眼障害リスク開示の促進と安全性情報の蓄積を積極的に推進すべきと考えられる。
その他のインパクト
得られた成果をもとに、日本コンタクトレンズ学会などにてシンポジウムを開催予定である。

発表件数

原著論文(和文)
1件
コンタクトレンズ販売と眼障害リスクについて
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
日本コンタクトレンズ学会総会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
薬食発0 6 2 8 第1 7 号:厚生労働省医薬食品局長, コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について(再周知)
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
田倉智之, 村上晶, 宇津見義一, 植田喜一
コンタクトレンズ販売と眼障害リスクについて
日本コンタクトレンズ学会誌 , 56 (3) , 193-198  (2014)
J-GLOBAL ID: 201502251350149513 Refernce number:15A0219616

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201235065Z