震災に起因する食品中の放射性物質ならびに有害化学物質の実態に関する研究

文献情報

文献番号
201234052A
報告書区分
総括
研究課題名
震災に起因する食品中の放射性物質ならびに有害化学物質の実態に関する研究
課題番号
H24-食品-指定(復興)-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 松田 りえ子(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24年度より、食品中の放射性物質は食品衛生法11条が適用され、新たな基準値による規制が施行されたことから、検査結果の信頼性が一層重要となった。本研究では、食品中放射性物質検査の実施に当たり、効率的・効果的な検査手法、検査結果の信頼性の向上のための取り組み、きめ細やかな規制のあり方等について検討する。また、大震災と津波により、沿岸の多くの工場から環境中に放出された可能性のある化学物質による食品汚染についての研究は皆無であるため、それらの実態調査並びにリスクコントロールが必要となる化学物質の選定について検討する。
研究方法
現在の出荷前の検査体制による食品安全への効果を検証するため、農産物については福島第一原発周辺の17都県を産地とする流通食品を買い上げ、放射性セシウムの濃度を測定する。海産物は北海道から和歌山県までの海域における魚介類等を対象とする。また、サンプリングの原理原則を明確にし、放射性物質検査に適した適正なサンプリング計画を策定する。また、厚生労働省に報告されたモニタリング検査データを詳細に解析し、食品中の放射性セシウムの分布、変動、減衰の状況を知ることにより、効率的な検査計画の立案に資する。さらに、放射性物質測定に伴う不確かさの要因を、測定手法毎に明らかにする。
震災・津波により環境に流出した可能性が高く、健康影響へのリスク管理の観点から早急に実体を把握すべき化学物質として、PCB並びに重金属を取り上げ、魚介類を中心とした食品中の濃度実態を調査する。また、管理すべき化学物質の環境への放出や食品中への移行の可能性について、文献や被災地域の産業に関する情報を精査することにより明らかにし、今後のリスクコントロールの必要性を評価する。
結果と考察
流通食品1735試料を購入し、放射性セシウム濃度を測定した。基準値である100 Bq/kgを超過した試料は5試料(0.3%)であった。昨年度調査した1435試料に現在の基準を適用した場合には、28試料(2.0%)が超過していた。このことから、新基準に対応して自治体などの放射性物質検査体制が適切に整備・強化され、流通食品全般において放射性セシウム濃度が低下したと考えられる。今後も監視を継続すべき食品群は、原木栽培品を中心としたきのこ類、淡水魚を中心とした魚類、種実類と考えられた。
放射性物質検査の適正なサンプリング法の検討にあたって、Codex委員会が策定検討中のサンプリング法から、その原理・原則をまとめた。その他、有害化学物質の国内検査に用いられているサンプリング法の問題点等について考察した。
また、効率的検査計画の検討のため、公表されている食品中の放射性セシウム濃度データ115,569件を集計し、産地、食品カテゴリ別等により放射性セシウム検出率、濃度等を求めた。流通食品では、基準値超過食品の割合は非常に低いが、非流通食品では検出割合が高く、高濃度の試料が見られることから、高濃度の放射性セシウムを含む食品が、効果的に流通から排除されていると考えられた。
食品中放射性物質検査に対応する市販測定機器の調査を行った。その結果、事務連絡記載事項全般について、必ずしも妥当性確認がなされているとは見なせない測定機器・解析法も一部見受けら、その原因として、スクリーニング法が正しく理解されていないことが考えられた。
津波による新たな食品汚染の発生の有無を明らかにするため、本年度は、15種の金属類(鉛、水銀、バナジウム、アンチモン、スズ、カドミウム、モリブデン、セレン、ヒ素、ニッケル、コバルト、クロム、バナジウム、アルミニウム、ホウ素)を対象に、津波被災地から買い上げた食品、計510試料を分析し、実態を調査した。
また、東日本大震災による食品への影響を、ヒト健康影響という視点から評価するため、ヒト健康影響が懸念されている化学物質のリストアップ、震災後の食品に関して一般の人々に提供されている情報、震災により人々の食生活の変化、について検討した。その結果、震災による変化を監視すべき食品中化学物質として、もともとリスクが高めであったヒ素、鉛、多環芳香族炭化水素、ダイオキシン類などが優先順位の高いものとしてあげられた。さらに放射線による健康影響を避けるためとしてリスクの高い行為が薦められている場合があるため、正確な情報提供の必要性が明らかになった。
結論
平成24年度の流通食品1735試料の放射性セシウム濃度を測定した結果、基準値超過は0.3%であった。公開されている非流通食品も含めた検査結果解析からも、規格不適合食品の排除が適切になされていると考えられた。今後も監視を継続すべき食品群は、原木栽培品を中心としたきのこ類、淡水魚を中心とした魚類、種実類と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201234052Z