国内侵入のおそれがある生物学的ハザードのリスクに関する研究

文献情報

文献番号
201234039A
報告書区分
総括
研究課題名
国内侵入のおそれがある生物学的ハザードのリスクに関する研究
課題番号
H24-食品-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 長島裕二(東京海洋大学 水産化学)
  • 荒川修(長崎大学 水産食品衛生学)
  • 紺野勝弘(富山大学 和漢医薬学総合研究所)
  • 泉谷秀昌(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 岡田由美子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 豊福肇(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 登田美桜(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、細菌から自然毒まで広く情報収集・解析および国内より実験データを収集して、(細菌食中毒では)海外情報と比較照合し、国内検査体制に反映させる、(自然毒では)毒性文献調査や未整備の自然毒検査法開発を行うことにより、リスク低減を行い食中毒被害事例低減により食品の安全性確保に資することである。細菌において,海外における食品汚染実態,食中毒発生状況とともに原因菌の迅速な情報収集及び解析がリスク軽減に極めて重要であり,国内での検査体制に迅速に反映すること。フグの毒性を見直し、フグ以外のフグ毒保有生物における食中毒もリスク管理対策を行う。植物について系統的な安全性・毒性調査も検討する必要がある。毒キノコについては,中毒事例の多いキノコに焦点を当てて遺伝子配列を解析し,簡易検査法開発し、中毒被害低減に役立てる。
研究方法
細菌に関して、
海外の規制状況及び発生動向等に関する情報を海外ネットワーク(WHO, CDC, RASFFなど)と連携して早期に情報の収集解析を図る。海外で発生するサルモネラ、等の大規模・多国間アウトブレイクの起因菌や解析手法などに関する情報収集を行い、国内侵入のリスクの程度と検査法など施策の検討を行う。リステリア研究について,国内流通食品の汚染実態及び分子疫学解析の実態等についての情報を収集する。
フグ毒・貝毒に関して、
フグ毒保有生物による中毒およびハフ病など横紋筋融解症を主徴とする食中毒を対象として文献調査を行う。巻貝類の毒性調査に関して,重篤なフグ毒中毒を起こしたキンシバイを中心に肉食・腐肉食性巻貝類を採集し、毒性を調査する。「日本産フグの最高毒力表」を見直すため、日本沿岸で漁獲されるフグ類を収集して毒性スクリーニングを行う。LC-MS/MSで毒成分分析を行う。交雑種のDNAによる親魚(母系・父系)の種同定を行う。フグ毒蓄積能評価のために,肝組織切片、巻貝類は中腸腺を用いてフグ毒蓄積能を調べる。アオブダイやハコフグを採集して毒性スクリーニングを行う。
植物・キノコ毒に関して、
WHO、FDA、CDC、ECDC, EFSAなどの海外の規制・リスク評価機関より自然毒関連のアラート情報、規制及び食中毒発生動向等に関する情報など網羅的に情報を収集する。植物毒に関して現地調査を行う。キノコ毒では、形態的に異なるが同一と考えられている中毒事例の多い一部のキノコについて遺伝子解析を行い,それぞれ比較検討する。分析・同定方法がほとんど確立されていないキノコ毒について PCRを用いた同定法の検討を行う。
結果と考察
細菌について、2012年食中毒事例で注目すべきは、米国で発生したサルモネラ食中毒事例である。インドから輸入されたマグロの「中落ち」が原因食であり、Salmonella BareillyおよびSalmonella Nchangaという血清型の菌に汚染されていた。Nchangaという血清型はわが国では極めてまれである。マグロの中落ちは日本でも一般的であり、本事例の情報収集を行った結果(文献3)から調査解析は今後の中毒発生時に非常に参考となると考えられた。2012年8月から9月にかけて、トルコツアーに参加したツアー客が細菌性赤痢を発症する事例が発生した。本事例関連株12株をMLVAによって解析し、すべての株が一致した。本事例の株はデータベース上で、2004年トルコ輸入例と2遺伝子座違いであり、データベースの有用性が示唆された。リステリア症では、米国CDC PulseNetのリステリア解析手法で国内産食品由来株43株、輸入食品由来株11株及び患者由来株2株のPFGE解析を実施した。
自然毒について、クサウラベニタケきのこ中毒防止のために、クサウラベニタケ特異的で食毒判別可能なPCR-RFLP法を開発した(特許出願)。本方法により、全国各地から取集した塩基配列にバリ―ションがあるクサウラベニタケにおいても、誤食の原因となる食用ウラベニホテイシメジとを確実に判別できることが確認できた。従来シークエンス解析しなければ同定できなかったが、この方法では、3時間程度で結果が得られ有用である。さらに、調理加工食品でも適用可能なPCR法も別途開発し、これまでできなかった食品残渣からの原因きのこ特定に役立てることができる。
結論
本研究において、国内で発生する可能性がある生物学的ハザードである、細菌、魚・巻貝類の毒、植物毒、きのこ毒について、それぞれの分担研究者により既に述べたような調査研究を行い成果を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201234039Z